再エネ事業の周辺住民への周知とは?範囲や方法を解説

再エネ事業のFIT/FIP認定に必須。周辺住民への周知とは?

再生可能エネルギー事業、特に太陽光発電などを計画されている事業者の方にとって、周辺にお住まいの方々への事前説明が、事業を進める上で非常に重要な手続きとなりました。

2024年4月1日から新しいルール(改正再エネ特措法)が始まり、これまで以上に地域との調和が求められるようになったのです。このルールにより、事業を始める前に、周辺住民の方々へ事業計画をきちんと説明することが、国の認定(FIT/FIP認定)を受けるための必須条件に加えられました。

「うちの事業は小さいから関係ないだろう」と思われるかもしれませんが、一定の条件に当てはまる事業はすべて対象となります。もし、この説明手続きを怠ってしまうと、認定が受けられないだけでなく、後から認定が取り消されてしまう可能性もあるのです。

なぜ、このようなルールが設けられたのでしょうか。背景には、一部の事業で地域の方々への説明が不十分だったために、工事が始まってから「聞いていなかった」といったトラブルが発生してしまったことがあります。

この手続きは、単に義務を果たすためだけのものではありません。事業内容を事前に丁寧にお伝えし、理解を得ることで、地域の方々との良好な関係を築き、事業をスムーズかつ長期的に安定させるための大切な第一歩と考えることができます。特に、農地を活用した事業などを検討されている場合、地域との連携は不可欠です。

参照:説明会及び事前周知措置実施ガイドライン(経済産業省 資源エネルギー庁)

あなたの事業はどっち?説明会か戸別訪問等かの判断基準

それでは、あなたの事業では具体的にどのような方法で周知を行えばよいのでしょうか。方法は大きく分けて「説明会」と「各戸への資料配布など(事前周知措置)」の2つがあり、事業の規模や場所によってどちらを行うべきかが決まっています。ご自身の計画がどちらに当てはまるのか、順番に確認していきましょう。

再エネ事業の住民周知方法を判断するためのフローチャート。屋根設置か、出力50kW以上か、特定エリアかといった質問に答えることで、説明会が必須か、各戸への資料配布などで良いかが分かるようになっている。

まずは対象外のケースを確認しよう

最初に、この手続きがそもそも必要ないケースから見ていきましょう。以下の2つの場合は、ここで解説している説明手続きの対象外となります。

  • 出力10kW未満の住宅用太陽光発電
  • 出力に関わらず、すべての屋根の上に設置する太陽光発電

これらの事業は、周辺環境への影響が比較的小さいと考えられているため、対象から外されています。ご自身の事業がこれらに当てはまる場合は、この先の複雑な手続きは不要です。

「説明会」が必須になる4つの条件

次に、地域の方々を集めて「説明会」を開くことが求められるケースです。以下の4つの条件のうち、どれか1つでも当てはまる場合は、説明会の開催が必須となります。

  1. 出力50kW以上の野立ての太陽光発電など
    比較的大規模な事業(高圧・特別高圧連系)で、地面に直接設置するタイプの場合です。
  2. 特定のエリア内に設置する場合
    土砂災害のリスクが高い「土砂災害警戒区域等」の中に発電設備を設置する場合が該当します。
  3. 自治体の条例で定められたエリア内に設置する場合
    市町村によっては、独自のルールで景観や自然環境を守るためのエリアを定めていることがあります。そのエリア内に設置する場合も説明会が必要です。
  4. 複数の小規模な発電設備が近くにある場合(合計50kW以上)
    一つひとつは50kW未満の小規模(低圧)な事業でも、複数の事業が隣接しており、それらを合計すると50kW以上になるようなケースです。これは「低圧分割案件」と見なされる可能性があり、説明会が必要になることがあります。

これらの条件に当てはまる場合は、より丁寧な説明が求められるため、説明会の開催が義務付けられています。手続きを完了させた後も、例えば農地転用許可後の完了報告のように、事業の各段階で適切な報告が求められます。

各戸への資料配布などでの周知が認められるケース

ここまで見てきた「対象外のケース」と「説明会が必須のケース」のどちらにも当てはまらなかった事業は、各戸への資料配布などの方法で周知を行うことができます。

具体的には、「特定のエリア外に設置する、出力50kW未満の野立て太陽光発電事業で、分割案件にもあたらないもの」がこれに該当します。多くの小規模事業者がこちらのケースに当てはまるのではないでしょうか。この場合、説明会を開く必要はなく、より簡易な方法で手続きを進めることが可能です。農地に太陽光パネルを設置する場合、太陽光パネルの設置面積と合わせて、この周知方法の確認が重要になります。

各戸への資料配布などによる周知の進め方【3ステップで解説】

ご自身の事業が「各戸への資料配布など」で対応可能だと分かった方のために、ここからは具体的な手続きの流れを3つのステップに分けて解説します。この手順に沿って進めれば、迷うことなく手続きを完了させることができます。

ステップ1:「周知する範囲」を地図で確定する

最初に行うべき最も重要な作業が、どの範囲の方々まで説明する必要があるのかを地図上で明確にすることです。国のガイドラインでは、(各戸への資料配布などの)事前周知措置は、原則として、以下の範囲の方に行うとされています。

  • 事業場所の敷地境界から100m以内にお住まいの方

まずは住宅地図などを用意し、ご自身の事業用地を中心に、この範囲に含まれる建物をすべてリストアップします。この範囲設定が、後の手続きすべての土台となりますので、漏れがないように慎重に確認しましょう。この作業は、開発行為許可申請の区域図を作成する際と同様に、正確さが求められます。

再エネ事業で周知が必要な住民の範囲を示した図解。事業地の境界から100m以内と、隣接する土地・建物の所有者が対象であることが示されている。

ステップ2:自治体への事前相談を行う

ステップ1で作成した範囲案の地図を持って、事業を行う市町村に事前相談を行う必要があります。これはルールで定められた必須の手続きです。

役場の担当窓口(多くは環境課や農林課など)に連絡を取り、アポイントメントをとりましょう。相談の際には、以下の資料を持参すると話がスムーズに進みます。

  • 自治体が定める相談様式
  • 事業の概要がわかる資料
  • ステップ1で作成した周知範囲の地図
  • 配布予定の資料の案

相談の結果、自治体から「この範囲も追加してください」といった指導が入ることがあります。地域の事情をよく知る自治体の意見は尊重し、真摯に対応することが重要です。このプロセスは、土地改良区の意見書を取得する際と同様に、関係機関との円滑な連携が求められます。相談から回答までには数週間かかることもあるため、余裕を持ったスケジュールで進めるようにしましょう。

参考:再エネ特措法及びガイドラインに基づく「周辺地域の住民」の範囲に関する事前相談について(福知山市の例)

ステップ3:資料を配布し、記録を残す

自治体との相談が完了し、周知範囲が正式に確定したら、いよいよ資料の配布です。配布する方法は、各戸の郵便受けに入れる、直接訪問して手渡す、回覧板を利用するなど、地域の実情に合わせて選びます。

配布する資料には、以下の内容を分かりやすく記載する必要があります。

  1. 事業計画の概要(場所、規模、発電出力など)
  2. 関連する法令などを守っていること
  3. 土地の権利について
  4. 工事の概要(期間、時間帯など)
  5. 事業者の連絡先
  6. 事業による影響(騒音、景観など)と、その対策

そして、ここで非常に重要なのが「周知を行った証拠」をきちんと残しておくことです。国の認定を申請する際に、これらの記録の提出が求められます。以下のものは必ず保管しておきましょう。

  • 配布した日時
  • 配布先のリスト(地図上でチェックしたものでも可)
  • 配布した資料そのもの

これらの記録がなければ、手続きを適切に行ったことを証明できません。忘れずに保管してください。

知らないと危険。周知義務を怠った場合のリスク

ここまで説明してきた周知手続きを、もし面倒だからといって省略したり、内容に偽りがあったりした場合はどうなるのでしょうか。

その場合、事業の根幹を揺るがす非常に大きなリスクが伴います。

  • FIT/FIP認定が受けられない
  • 認定を受けた後で発覚した場合、認定が取り消される

認定が受けられなければ、事業として成り立ちません。また、一度取り消されてしまうと、それまで投資した費用が無駄になってしまう可能性もあります。事業の安定性を確保するためにも、定められたルールは誠実に守ることが不可欠です。これは、事業実施状況の報告と同様に、事業者が果たすべき責任の一つです。

トラブルを避けるために。住民との良好な関係を築く心構え

法律で定められた手続きをきちんと行うことは、事業者として当然の務めです。しかし、本当に大切なのは、その先にある地域の方々との良好な関係づくりではないでしょうか。

資料を配布した後、内容を見た方から不安や疑問に関する問い合わせの連絡が入るかもしれません。その際は、面倒がらずに、一つひとつ丁寧に対応する姿勢が求められます。「法律の基準はクリアしているから問題ない」という態度ではなく、相手の気持ちに寄り添い、誠実に説明を尽くすことが、信頼関係の構築につながります。

再生可能エネルギー事業者が、地域の住民に事業内容を丁寧に説明し、理解を得て良好な関係を築いている様子のイラスト。

地域の方々から「この事業者が来てくれてよかった」と思ってもらえるような関係を築くことができれば、それは将来の事業運営における何よりの財産となるはずです。法令を守るだけでなく、地域の一員として理解を得る努力を続けることが、結果的にトラブルを未然に防ぎ、事業の成功へとつながっていくのです。

手続きに不安があれば、ご相談も一つの方法です

ここまで再生可能エネルギー事業における周辺住民への周知手続きについて解説してきましたが、いざご自身の事業に当てはめてみると、「周知範囲の判断が難しい」「自治体との協議をどう進めればよいか分からない」「配布する資料の作り方に不安がある」といった悩みが出てくるかもしれません。

特に、事業の収支計画と並行してこれらの許認可手続きを進めるのは、大変な労力がかかります。もし、ご自身で手続きを進めることに少しでも不安を感じるようでしたら、行政手続きに詳しい行政書士に相談するのも有効な選択肢の一つです。

書類の作成から自治体との協議のサポートまで、複雑な手続きを円滑に進めるお手伝いができます。一人で悩みを抱え込まず、安心して事業の第一歩を踏み出すために、どうぞお気軽にご相談ください。

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