分家住宅の購入前に知るべき都市計画法42条許可のすべて

「特別な許可が必要な土地」と言われ、ご不安ではありませんか?

「この土地に家を建てるには、特別な許可が必要になります」

不動産会社の方からそう告げられ、専門用語が並んだ書類を前に、戸惑いや不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。「本当に自分の家を、思い描いた通りに建てられるのだろうか」「将来、何か困ったことになるのではないか」…そんなふうに思われるのは、ごく自然なことです。

特に「分家住宅」が建てられていた土地は、一般的な土地とは少しルールが異なります。しかし、ご安心ください。これからそのルールと、必要な手続きについて、一つひとつ丁寧に、分かりやすい言葉で解きほぐしていきます。

この記事を読み終える頃には、ご自身の状況が整理され、何をすべきかが明確になっているはずです。あなたのマイホームの夢をかなえるため、一緒に知識を深めていきましょう。

まず知っておきたい「分家住宅」の特別なルール

なぜ、あなたが検討している土地には「特別な許可」が必要なのでしょうか。その答えは、その土地がもともと「分家住宅」のために用意された場所であることに隠されています。まずは、この分家住宅の基本的なルールから見ていきましょう。

「分家住宅」とは?なぜ普通の土地と違うの?

私たちの住む街には、むやみに建物が増えて自然が失われないよう、建物を建てて良いエリア(市街化区域)と、原則として建物を建ててはいけないエリア(市街化調整区域)に分けられています。

あなたが検討している土地は、後者の「市街化調整区域」にあることが多いはずです。このエリアでは、新しい家を建てることは原則として認められていません。

しかし、例外があります。その地域に長く住んでいる本家から独立して、その子どもなどが近くに住むための家、それが「分家住宅」です。これは「特定の家族のために、特別に許可されて建てられた家」なのです。だからこそ、誰でも自由に売ったり買ったりできる一般的な土地とは、少し性格が違うというわけです。

購入前に注意すべき「建てた人しか使えない」というルール

分家住宅は多くの自治体で「親族を前提とした許可」として扱われることが多く、譲渡や第三者利用に制限が課される場合があります。ただし、要件や具体的な運用は市町村ごとに異なるため、該当地域の自治体基準を確認してください。

たとえるなら、学校の給食で「Aさん専用の特別な献立」が用意されたようなものです。その献立はAさんのために作られたものなので、Bさんが食べることはできません。

分家住宅も同じで、「もともと許可を受けた家族」が住むことを前提に建てられています。そのため、その家族とは関係のない第三者であるあなたが、その土地に新しい家を建てるためには、「今度は、私のための家を建てることを認めてください」という、別の特別な許可手続きが必要になるのです。

分家住宅の「属人性」を説明する図解。許可を受けた家族専用の家から、新しい購入者の家へは直接移行できず、別の許可が必要であることを示している。

都市計画法第42条第1項ただし書きの許可とは?

ここからが本題です。あなたがこれから向き合うことになるのが、「都市計画法第42条第1項ただし書き」という許可手続きです。名前は少し難しく聞こえるかもしれませんが、その意味を理解すれば、決して怖いものではありません。

行政書士からの一言アドバイス

分家住宅などで開発行為の許可を受け、工事が終わった土地では、最初に届け出た「予定建築物(この場合は分家住宅)」以外の建物を建てることは原則としてできません。しかし、この「都市計画法第42条第1項ただし書の許可を得られれば、条件を満たす場合に新しい専用住宅の建築が認められる可能性があります(許可は都道府県知事等の判断で、利便性や環境保全などの要件を満たす必要があります)」。まさに、土地のルールを現代の状況に合わせて更新する手続きといえるでしょう。

一言でいうと「計画変更のお許し」をもらう手続きです

分家住宅を建てる際には、お役所に対して「ここに、〇〇さんのための分家住宅を建てます」という計画書を提出し、許可(開発許可)を受けています。つまり、その土地は「分家住宅を建てるための場所」として登録されている状態です。

しかし、あなたが建てたいのは「分家住宅」ではなく、あなたご自身の新しいマイホームのはずです。もともとの計画とは違う建物を建てることになるため、「計画を変更したいのですが、よろしいでしょうか?」とお役所にお伺いを立て、お許しをもらう。これが、都市計画法第42条第1項ただし書きの許可手続きの本質です。

よく似た「43条の許可」との違いは?

都市計画法には、よく似たものに「43条の許可」というものもあります。この二つは混同されやすいのですが、明確な違いがあります。

  • 42条の許可:一度、開発許可という計画が立てられた土地で、その計画内容(建物の種類など)を変更するための手続き。
  • 43条の許可:まだ開発許可を受けていない、計画のない土地に、新しく建物を建てるための手続き。

あなたが購入を検討している土地は、すでに「分家住宅を建てる」という開発許可を受けている土地ですので、今回のケースは「42条の許可」に該当する、と整理しておくと分かりやすいでしょう。

【購入者向け】許可申請の具体的な流れとチェックリスト

それでは、実際に許可を得るためには、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか。ここでは、あなたが土地の購入者として、具体的にどう動けばよいのかを順を追って解説します。

都市計画法42条許可申請の3つのステップ(事前相談、申請書作成、許可)を分かりやすく示したインフォグラフィック。

ステップ1:まずは役所の窓口で「事前相談」

原則として、土地の売買契約を結ぶ前に市区町村の担当部署へ事前相談することを強く推奨します。

この段階で、その土地にあなたが家を建てられる見込みがあるのかどうかを、担当者と直接確認します。不動産会社の方に同行してもらうか、私たちのような手続きの代理人に相談して、一緒に行ってもらうのがスムーズです。

相談の際には、少なくとも以下の資料を持っていくと話が早く進みます。

  • 検討している土地の場所がわかる地図(公図など)
  • 土地の登記簿謄本
  • 以前の開発許可に関する書類(検査済証などがあれば理想的です)

この事前相談は、あなたの計画全体を左右する最も重要なステップです。

ステップ2:必要な書類を集めて申請書を作成

事前相談で「許可の見込みがありそうだ」という感触を得られたら、次のステップは申請書類の準備です。自治体によって多少異なりますが、一般的には以下のような書類が必要になります。

  • 許可申請書
  • 土地の利用計画図や建物の配置図
  • 建物の平面図や立面図
  • 土地の登記簿謄本
  • 公図の写し
  • 以前の開発許可通知書や検査済証の写し
  • その他、役所が指示する書類

これらの書類を一つひとつ集め、正確な申請書を作成するのは、慣れていない方にとっては大変な作業かもしれません。図面の作成などは建築士の協力も必要になります。

ステップ3:申請から許可までの期間は?

全ての書類が整い、役所の窓口に申請書を提出してから、実際に許可が下りるまでの期間は、処理期間は自治体や案件の内容によって大きく異なります(自治体によっては「標準処理期間 約40日」とする例もあります)。具体的な期間は事前相談時に担当窓口で確認してください。ただし、案件の複雑さや自治体の審査状況によっては、それ以上かかる場合もあります。

この審査期間を考慮せずに住宅ローンの手続きや建築会社との契約を進めてしまうと、後で計画が大きくずれてしまう可能性があります。全体のスケジュールを考える上で、この期間は必ず頭に入れておきましょう。

知っておきたい将来のリスクと建て替えの制限

無事に許可が下り、夢のマイホームを建てられたとしても、その土地との付き合いは続きます。市街化調整区域にある土地ならではの、将来的な注意点についても知っておきましょう。

一度許可が出ても、将来の建て替えは簡単ではない?

今回、あなたが許可を得て建てた家も、市街化調整区域の中にあるという事実は変わりません。そのため、例えば30年後、40年後にその家を建て替えたいと考えたとき、再び同じような許可申請や、その時代の法律に基づいた新たな手続きが必要になる可能性が高いです。

「一度建ててしまえば、あとは自由」というわけではない、という点は心に留めておく必要があります。その土地と長く付き合っていくための、大切な知識です。

万が一、許可が下りなかった場合はどうなるのか

最も避けたいシナリオですが、万が一、許可が下りなかった場合、その土地に家を建てることはできません。だからこそ、ステップ1で解説した「事前相談」が非常に重要になるのです。

そして、ご自身の身を守るために、土地の売買契約を結ぶ際には「停止条件付契約」にしておくことを強くお勧めします。これは、「もし、この建築許可が下りなかった場合には、この売買契約は白紙に戻します」という特別な約束事です。売買契約に「許可が得られない場合は契約を解除する」旨の停止条件を付けることで、許可が下りなかった場合に契約上の義務を解除できる可能性があります。ただし、条項の具体的な文言や手続きにより効果が異なるため、契約書の作成時に売主側と合意し、専門家に文言を確認してください。

複雑な建築許可申請の書類を前に、一人で悩んでいる男性の様子を描いたイラスト

複雑な手続きは、一人で悩まずご相談ください

ここまでお読みいただき、手続きの全体像は見えてきたものの、「やはり自分一人で進めるのは難しそうだ」と感じられたかもしれません。都市計画法が関わる手続きは難しく、時間も労力もかかるのが実情です。

私たちが手続きをスムーズに進めるお手伝いをします

当事務所は、自治体との事前相談への同行、申請書類の作成支援、役所対応の代理(行政書士法に基づく範囲)などの支援が可能です。具体的な対応範囲は個別の契約でご確認ください。

  • 役所との事前相談への同行・代理
  • 複雑な申請書類の収集と作成
  • 役所の担当者との詳しい協議
  • 全体のスケジュール管理

あなたが新しいお住まいでの生活の準備に集中できるよう、面倒で難しい手続きの部分を全面的にサポートいたします。当事務所は、栃木県内の市街化調整区域や農地に関する案件の申請支援について豊富な経験がございます。どうぞお気軽にご相談ください。

ご相談のタイミングは「土地の契約前」が最善です

もし、少しでもご不安や疑問があれば、ぜひ一度お話をお聞かせください。ご相談いただくのに最も良いタイミングは、「気になる土地が見つかり、購入を検討し始めた段階」です。土地の売買契約を結んでしまう前にご相談いただくことで、取れる選択肢が広がり、リスクを最小限に抑えることができます。

「こんなことを聞いてもいいのだろうか」と遠慮なさる必要はありません。あなたの大きな一歩を、誠心誠意お手伝いさせていただきます。まずはお気軽にご連絡ください。

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