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小型船舶の全部事項証明書は「船の戸籍謄本」です
「小型船舶の全部事項証明書を持ってきてください」船の売買や相続の手続きを進める中で、突然こう言われて戸惑っていませんか。なんだか難しそうな名前の書類で、何から手をつけていいか分からず、不安な気持ちになってしまいますよね。
でも、ご安心ください。この「全部事項証明書」は、一言でいえば「船の戸籍謄本」のようなものです。
人間でいう戸籍謄本が、その人の出生から現在までの身分関係を証明するように、この証明書には、あなたの船が登録されてから今にいたるまでの全ての情報が記録されています。誰が所有者で、いつどこで造られ、過去にどんな人が持ち主だったのか、といった船の「経歴」がすべてわかる、とても大切な書類なのです。
この記事では、全部事項証明書とは一体どんな書類なのか、どんな時に必要になるのか、そしてどうすれば手に入れることができるのかを、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を読むことで、手続きの流れや必要な書類を整理しやすくなります。小型船舶に関する各種手続きの全体像については、海事代理士対応業務一覧で体系的に解説しています。
小型船舶の全部事項証明書とは?基本を解説
それでは、全部事項証明書について、もう少し詳しく見ていきましょう。この書類がなぜ必要なのか、そして他の似たような名前の書類と何が違うのかを知ることで、手続きへの理解がぐっと深まります。
小型船舶登録原簿の全ての情報がわかる証明書
小型船舶の全部事項証明書は、国が管理している「小型船舶登録原簿(こがたせんぱくとうろくげんぼ)」という公式の台帳に記録されている内容を、そのまま書き写して証明した公的な書類です。
この証明書には、具体的に次のような情報が記載されています。
- 船舶に関する情報:船舶番号、船舶の種類、船籍港、船の長さ・幅・深さ、総トン数、船体識別番号、推進機関の種類・型式など
- 所有者に関する情報:現在の所有者の氏名と住所
- 履歴に関する情報:過去の所有者の情報、住所変更などの変更登録の履歴など
名前の通り「全部」の事項が書かれているのが特徴で、過去の所有者履歴までさかのぼって確認することができます。これにより、その船のこれまでの経緯がすべて分かり、安心して取引などが行えるようになるのです。
(参照:小型船舶の登録等に関する法律)
一部事項証明書や船舶検査証書との違い
船に関する書類には、名前が似ていて混同しやすいものがあります。特に「一部事項証明書」と「船舶検査証書」との違いは、しっかり理解しておきましょう。
・一部事項証明書との違い
「全部」があるなら「一部」もあります。一部事項証明書は、登録事項のうち、所有権に関するすべての事項と、その他の事項について請求時点の最新情報を証明する書類です。全部事項証明書と比べると、証明される範囲が限定されています。
・船舶検査証書との違い
船舶検査証書は、船の持ち主を証明する書類ではありません。これは、船が安全に航行できる状態にあることを証明する、いわば「船の車検証」のようなものです。定期的な検査に合格しないと交付されず、船を航行させる際には必ず船内に備え付けておく必要があります。
それぞれの書類の役割をまとめると、以下のようになります。

| 書類の名前 | 証明する内容 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 全部事項証明書 | 過去から現在までの全ての所有者履歴や船の情報 | 船の経歴を証明する(船の戸籍謄本) |
| 一部事項証明書 | 現在の所有者や船の情報 | 現在の権利関係を証明する |
| 船舶検査証書 | 船の安全性や性能 | 安全に航行できることを証明する(船の車検証) |
全部事項証明書の具体的な使用用途は?いつ必要になる?
では、この全部事項証明書は、具体的にどのような場面で必要になるのでしょうか。ここでは、代表的な3つの使用用途をご紹介します。ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。
使用用途1:船を売買・譲渡するとき
最も一般的な使用用途は、船を売ったり買ったり、誰かに譲ったりするときです。この手続きを「移転登録」といいます。
船を買う側からすれば、「本当にこの人が所有者なのだろうか」「過去に差し押さえなどのトラブルはなかっただろうか」といった点は、とても気になるところです。全部事項証明書があれば、現在の所有者が誰であるか、そして過去の経歴に問題がないかを公的に確認できるため、買い主は安心して取引を進めることができます。
この確認を怠ると、後から本当の所有者が現れるなどの思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もゼロではありません。安全な取引のために、全部事項証明書は欠かせない書類なのです。より具体的な手順については、小型船舶移転手続きの業務をご覧ください。
使用用途2:船を相続するとき
船の所有者の方が亡くなり、ご家族などがその船を受け継ぐ「相続」の場面でも、この証明書が必要になります。
相続の手続きでは、まず「誰が相続人になるのか」を戸籍などで確定させ、その上で船の名義を新しい所有者に変更します。その際、亡くなった方が確かにその船の所有者であったことを公的に証明するために、全部事項証明書の提出が求められるのです。
相続はただでさえ手続きが複雑になりがちです。この証明書は、相続手続きをスムーズに進めるための大切な第一歩となります。詳しい手順については、小型船舶の相続手続きをご覧ください。

使用用途3:その他の手続き(マリーナ契約、ローンなど)
上記の2つ以外にも、全部事項証明書にはさまざまな使用用途があります。
例えば、以下のようなケースで提出を求められることがあります。
- マリーナ(船の保管場所)との係留契約を結ぶとき
- 船を担保にお金を借りる(ローンを組む)とき
- 船の保険に加入するとき
- 所有権をめぐって法的な争いになったとき
- 船を海外へ売却するため輸出の手続きをするとき
このように、船の所有者であることを公的に証明する必要がある様々な場面で、この証明書は重要な役割を果たします。
小型船舶全部事項証明書の取得方法【4ステップで解説】
それでは、実際に全部事項証明書を取得する方法を、4つのステップに分けて分かりやすく解説します。基本的な流れを確認しておけば、必要な準備を進めやすくなります。
ステップ1:申請書を手に入れる
最初に、申請書である「登録事項証明書等交付申請書」を用意します。
この申請書は、日本小型船舶検査機構(JCI)のウェブサイトからダウンロードするのが一番簡単です。ご自宅のプリンターで印刷して使いましょう。もし印刷環境がなければ、お近くのJCIの支部窓口や、一部のマリーナでもらうこともできます。
申請書には、船の船舶番号や所有者の氏名などを記入します。特に船舶番号は、証明書を発行するための重要な情報ですので、船舶検査証書などを見て、正確に書き写すようにしましょう。
ステップ2:手数料を支払う
次に、証明書の発行に必要な手数料を支払います。
2026年9月現在、全部事項証明書の手数料は1通あたり1,750円です。この手数料は、郵便局や指定された銀行の窓口で振り込むことができます。振込先などの詳しい情報は、JCIのウェブサイトで確認できます。手数料は変更されることもあるので、申請前に最新の情報を確認するとより安心です。
支払いが終わると、金融機関から「払込証明書」や「ご利用明細」といった控えがもらえます。これは手数料を支払った証拠になる大切な書類なので、なくさないように保管し、ステップ1で用意した申請書に貼り付けましょう。

ステップ3:JCIの窓口へ申請する(郵送も可)
申請書と手数料の支払証明書が準備できたら、いよいよ申請です。
申請方法は2つあります。
1. JCIの窓口で直接申請する
お近くのJCIの支部窓口へ、準備した書類を持っていきます。船が保管されている場所に関係なく、全国どこの支部でも申請できます。窓口の方に書類を渡せば、手続きを進めてくれます。
2. 郵送で申請する
平日に窓口へ行く時間がない方は、郵送でも申請できます。準備した書類一式と、返信用の封筒(宛先を書いて切手を貼ったもの)を同封して、JCIの支部へ送りましょう。これで、自宅に証明書を郵送してもらえます。この登録事務支援センターなどの情報を参考にすると良いでしょう。
ステップ4:証明書を受け取る
申請が無事に終われば、あとは証明書を受け取るだけです。
窓口で申請した場合、混雑していなければ、その日のうちに受け取れることがほとんどです。郵送で申請した場合は、書類がJCIに到着してから数日後に自宅へ届きます。
証明書を受け取ったら、記載されている内容に間違いがないか、必ず自分の目で確認しましょう。これで、全部事項証明書の取得手続きはすべて完了です。
全部事項証明書に関するよくある質問
最後に、全部事項証明書について多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。手続き前の最後の確認として、ぜひお役立てください。
Q. 誰でも取得できますか?
A. はい、誰でも取得できます。
小型船舶の登録情報は公開されているため、船の所有者本人でなくても、船舶番号さえ分かれば誰でも交付を申請することができます。そのため、例えば中古の船の購入を考えている人が、契約前にその船の履歴を確認するために利用することも可能です。所有者の情報などを確認する際にも役立ちます。
Q. 証明書が取れないことはありますか?
A. はい、取れない場合もあります。
申請した船が「小型船舶として登録されていない」場合や、「すでに登録が抹消されている(廃船になっている)」場合には、証明書は発行されません。例えば、何年も乗らずに放置されていた船や、漁船としての登録はあっても小型船舶としての登録はしていない船などが、これにあたります。もし証明書が発行されなかった場合は、その理由が通知されることになっています。
Q. 手続きが難しそうです。代行はお願いできますか?
A. はい、行政書士に手続きの代行を依頼することができます。
「平日は仕事で時間が取れない」「書類の準備や記入に自信がない」という方もいらっしゃると思います。そんな時は、船の手続きのプロである行政書士に任せるのも一つの良い方法です。費用はかかりますが、面倒な手続きを迅速かつ正確に進めてもらえます。
船の手続きは、人生で何度も経験することではないかもしれません。だからこそ、分からないことや不安なことがあれば、一人で抱え込まずに、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの状況を丁寧にお伺いし、最善の方法を一緒に考えさせていただきます。料金についても、まずはお気軽にお問い合わせいただければと思います。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
