未登記の家、評価証明書に家屋番号が?手続きを解説

ご安心ください、その状況は間違いではありません

相続の手続きを進める中で、市区町村役場から取り寄せた「家屋評価証明書」に家屋番号が書かれているのに、法務局で調べてみたら「建物は登記されていません」と言われてしまった…。
「書類が間違っているのだろうか」「何か大変なことになってしまったのでは…」と、ご不安な気持ちでいっぱいかもしれませんね。

でも、どうぞご安心ください。その状況は決して珍しいことではありませんし、間違いでもありません。きちんとした理由があるのです。

この記事では、なぜそのようなことが起こるのか、そして次に何をすればよいのかを、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事では、疑問点を整理し、次に確認すべき窓口や手続きの流れが分かるように説明します。このテーマの全体像については、未登記建物の相続手続きの全体像で体系的に解説しています。

なぜ?「家屋番号」があるのに「未登記」となる理由

「家屋番号があるなら、登記されているはず」と思ってしまいますよね。この疑問を解くカギは、目的の違う2つの帳簿が別々に存在することにあります。一つは法務局が管理する「登記簿」、もう一つは市区町村が管理する「固定資産課税台帳」です。

法務局が管理する「登記簿」と市区町村が管理する「課税台帳」の目的の違いを比較した図解。登記簿は権利証明、課税台帳は税金徴収が目的であることを示しています。

目的が違う2つの帳簿:「登記簿」と「課税台帳」

この2つの帳簿の関係を、身近なものに例えてみましょう。

  • 登記簿(法務局):これは、国が管理する不動産の記録です。「この建物はどこにあって、どんな構造で、誰が所有者として登記されているか」を公示するためのものです。
  • 課税台帳(市区町村):こちらは、市区町村が管理する『税金のお知らせリスト』のようなもの。「この建物に対して、誰に固定資産税を請求すればよいか」を管理するためのリストです。

普段、この2つは連動していることが多いのですが、必ずしも一致しているわけではありません。特に、昔に建てられた建物などでは、法務局に『戸籍謄本(登記簿)』がないまま、市区町村の『税金のお知らせリスト(課税台帳)』にだけ載っているケースがあるのです。土地の評価証明書に記載される現況地目なども、登記簿と必ずしも一致しない場合がある点と似ていますね。

評価証明書の「家屋番号」の正体とは

では、お手元にある家屋評価証明書の「家屋番号」は一体何なのでしょうか。

それは、市区町村が固定資産税をかけるために独自につけた管理番号なのです。

建物が登記されていなくても、市区町村は航空写真や現地調査などで建物の存在を把握します。そして、税金を公平に課すために、その未登記建物を「家屋補充課税台帳」という特別なリストに登録します。その際に、他の建物と区別するための整理番号として「家屋番号」を付けるのです。

つまり、「家屋番号がある=登記がある」というわけではなく、「家屋番号がある=市区町村が税金の対象として把握している」というのが正しい理解になります。このように、評価証明書の家屋番号は、登記の有無とは別に市区町村が管理のために付けている番号です。

具体的な手続き:市区町村役場の税務課で何をすべきか

現状がご理解いただけたところで、次に取るべき具体的な行動についてお話しします。法務局での複雑な登記手続きの前に、まずは目の前の税金の問題を解決するために、市区町村役場で手続きを行いましょう。

家屋評価証明書に家屋番号が記載されているにもかかわらず、登記されていないことが判明した場合、市区町村役場の税務課にて調査を行い、未登記建物であることが確認できた場合は、市区町村役場税務課で「家屋補充課税台帳登録変更届」を提出して手続きを行います。

ステップ1:税務課の窓口で現状を相談する

まずは、建物の所在地を管轄する市区町村役場の「固定資産税課」や「資産税課」といった名前の窓口へ行ってみましょう。その際、以下の書類を持っていくと話がスムーズに進みます。

  • 亡くなった方の名前が記載された固定資産税納税通知書(あれば)
  • 今回取得した家屋評価証明書
  • あなたの身分証明書(運転免許証など)
  • 印鑑

窓口では、難しく考えずに「父(母)が亡くなり家を相続したのですが、この建物が登記されていないようです。固定資産税の支払いを私に変更したいのですが」と、ありのままを伝えてみてください。窓口で必要書類や手続きの流れを確認してください。

市区町村役場の固定資産税課の窓口で、相続した未登記建物について相談している女性のイラスト。

ステップ2:「家屋補充課税台帳登録変更届」を提出する

窓口で相談すると、おそらく「家屋補充課税台帳登録変更届」という書類を渡されます(自治体によっては「未登記家屋所有者変更届」など、少し名前が違うこともあります)。これが、税金上の持ち主をあなたに変更するための大切な手続きです。

この届出には、一般的に次のような書類を添付する必要があります。

  • 遺産分割協議書の写し:相続人全員で話し合って、誰がこの建物を相続するかを決めた書類です。
  • 相続関係を証明する戸籍謄本など:亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や、相続人全員の現在の戸籍謄本などです。
  • 新しい所有者(あなた)の住民票
  • 新しい所有者(あなた)の印鑑証明書

ただし、必要な書類は自治体によって異なる場合がありますので、必ず事前に窓口で確認するようにしましょう。戸籍謄本などを集めるのは少し手間がかかるかもしれませんが、一つひとつ着実に進めていきましょう。より具体的な手順については、相続人調査・戸籍謄本の取得代行をご覧ください。

なお、建物を新築したり増築したりした際には、建築基準法に基づく「建築工事届」が提出されているのが一般的です。この届出の情報が、市区町村が未登記の建物を把握するきっかけの一つになることもあります。

参照
徳島県ホームページに掲載されている建築工事届の案内は、どのような手続きが行われるかの参考になります。

この手続きで何が変わるのか?知っておきたいポイント

「家屋補充課税台帳」の変更手続きを終えると、何が解決して、何がまだ課題として残るのでしょうか。この手続きの意味を正しく理解しておくことが大切です。これはあくまで「税金の問題を整理する」ための手続きであり、法的な権利関係を確定させる「登記」とは違うということを覚えておいてください。

解決すること:固定資産税の納税がスムーズに

この手続きを完了する一番のメリットは、受付時期や自治体の取扱いに応じて、固定資産税の納税通知書の宛名が新しい所有者に変更されることです。

これにより、誰が税金を支払うのかがはっきりとし、ご家族やご親族の間での余計な心配事をなくすことができます。また、納税証明書などもご自身の名前で取得できるようになるため、他の行政手続きもスムーズに進められるようになります。身近な問題が一つクリアになることで、大きな安心感が得られるはず。
この手続きは、森林の土地所有者届出や農地の相続手続きのように、相続後に市区町村への届出が必要となるケースの一つと考えることができます。

注意点:売却や担保設定の前に登記を求められることがあります

一方で、大切な注意点があります。それは、市区町村への届出だけでは、所有権などの権利を第三者に対して主張するための登記にはならず、売却や融資の場面で登記を求められることがあります、ということです。

なぜなら、この手続きでは法務局の『戸籍謄本(登記簿)』は作られないからです。法的な意味で「この建物の所有者は私です」と社会全体に対して主張するためには、登記が必要になります。

もし将来的に、この建物を売却したり、リフォームローンを組んだりする可能性がある場合は、別途、土地家屋調査士に「建物表題登記」を、司法書士に「所有権保存登記」を依頼する必要がある、ということを頭の片隅に置いておいてください。

手続きでお困りの際はご相談ください

ここまで、未登記建物の家屋評価証明書にまつわる疑問と、具体的な手続きについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

「理屈はわかったけれど、戸籍を集めたり、役所とやり取りしたりするのは、やっぱり自分一人では不安…」
「遺産分割協議書の作り方がよくわからない」

もしそのようにお感じになりましたら、どうぞお気軽にご相談ください。私は海事代理士・行政書士として、相続関連業務を数多くお手伝いしてまいりました。特に、今回のテーマに直結する遺産分割協議書の作成や、役所に提出する書類の準備など、あなたの負担を軽くするためのサポートが可能です。

あなたのお話をじっくりとお伺いし、状況に合わせた進め方を一緒に整理します。まずはお気持ちをお聞かせいただくことから始めませんか。

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