森林の土地所有者届出書を解説|相続後90日以内の手続き

相続した山林、90日以内の届出を忘れていませんか?

「親が亡くなり、遺産の中に山林があることが分かったけれど、何から手をつければ良いのか分からない…」
突然のことで、このように戸惑われている方も少なくないでしょう。特に、なじみのない山林の相続では、聞き慣れない手続きに不安を感じるのも無理はありません。

実は、相続などで山林の所有者になった場合、所有者となった日から90日以内に「森林の土地の所有者届出書」を提出するという大切なルールがあります。

この記事では、山林を引きついだときに出す書類(森林の土地の所有者届出書)について、できるだけかんたんな言葉で説明します。この記事を最後までお読みいただければ、

  • なぜ届出が必要なのかという根本的な理由
  • ご自身の状況に合わせた届出書の具体的な書き方
  • どこに、何を、いつまでに提出すれば良いのか
  • もし届出を忘れたらどうなるのか

といった、手続きに関する疑問が整理でき、90日という期限内に何をすべきかが分かりやすくなります。専門的な言葉をできるだけ使わず、一つひとつ丁寧にご説明しますので、行政手続きが苦手な方もどうぞご安心ください。あなたの不安を解消し、次の一歩を踏み出すお手伝いができれば幸いです。

なお、山林だけでなく農地を含めた相続手続きの全体像については、「農地・森林の相続手続き」で体系的に解説していますので、そちらも併せてご覧ください。

「森林の土地の所有者届出制度」とは?目的と基本を解説

まずは、「森林の土地の所有者届出制度」がどのようなものなのか、その基本から見ていきましょう。この制度は、相続や売買などで森林の新しい所有者になった方が、その土地がある市町村長へ「私が新しい所有者です」と届け出る仕組みです。

対象となるのは、都道府県が作成する「地域森林計画」の対象となっている森林です。相続した山林が対象かどうか分からない場合は、市町村の林務担当課などで確認することができます。

この届出は、土地の所有者となった日から90日以内に行う必要があります。この「90日」という期間は、手続きを進める上で非常に重要なポイントになります。

森林の土地の所有者届出制度の概要を示す図解。対象者、対象の土地、90日以内の届出期限という3つの基本要素がアイコンと共に解説されている。

なぜ届出が必要?制度ができた背景

「なぜ、わざわざ届け出る必要があるのだろう」と疑問に思われるかもしれませんね。この制度が作られた背景には、日本の森林が抱える深刻な問題があります。

昔は、山の持ち主は地域の人々にとって明らかでした。しかし、代々相続が繰り返されるうちに、持ち主が誰なのか、どこに住んでいるのか分からなくなってしまうケースが増えてきたのです。

所有者が分からない森林は、手入れがされずに荒れてしまいます。木が密集しすぎたり、枯れ木が放置されたりすると、土砂崩れなどの災害を引き起こす危険性も高まります。そこで、国や市町村が森林の所有者をきちんと把握し、適切な手入れや管理を促すために、この届出制度が平成24年4月からスタートしました。

この届出は、私たちの暮らしを守り、豊かな森林を次の世代に引き継いでいくための大切な役割を担っているのです。

届出の期限「90日」はいつから数える?

読者の皆様が最も気になる点であろう、届出期限の「90日」はいつから数え始めるのか、という点について解説します。

相続の場合の「90日」は、原則として亡くなった日から数えます。ただし、話し合いで山林を引きつぐ人が決まった場合は、話し合いが終わった日から数える扱いになります。

例えば、4月1日にご家族が亡くなられた場合、その日から90日以内が届出の期限となります。なお、山林をだれが引きつぐかを話し合いで決めた場合は、話し合いが終わった日が起算日になる扱いです。一方で、法務局で名義を変えた日が起算日になるわけではありません。相続が発生したその日から、期限のカウントダウンは始まっているのです。

相続の手続きは多岐にわたるため、つい後回しにしてしまいがちですが、この届出には90日という短い期限があることを念頭に置いておきましょう。ちなみに、農地を相続した場合にも似たような届出制度があり、そちらは農業委員会への届出が必要となります。

参照:森林の土地の所有者届出制度 – 林野庁

届出をしないとどうなる?放置するリスク

「もし、90日の期限を過ぎてしまったら…」「届出をしなかったら、どうなるの」という心配もあるかと思います。

正当な理由なく届出をしなかった場合、森林法という法律に基づき、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。

これは、決まりを守らなかったときに、国や市町村からお金を払うように言われることがある、という意味です。

だからといって、過度に不安になる必要はありません。もし期限を過ぎてしまったことに気づいた場合でも、正直にその旨を伝え、できるだけ速やかに届出を行うことが大切です。まずは、お早めに市町村の担当窓口へ相談することをお勧めします。放置しておくことが最も避けるべき選択です。

【状況別】森林の土地の所有者届出書の書き方と注意点

ここからは、この記事の核心部分である「森林の土地の所有者届出書」の具体的な書き方について、相続の状況別に解説していきます。ご自身のケースに最も近いものをご覧ください。

行政書士が森林の土地の所有者届出書の書き方を夫婦に説明しているイラスト。相続手続きの相談風景。

相続人が一人の場合(単独相続)

最も基本的な、相続人がお一人で全ての山林を引き継ぐ場合の書き方です。

  • 届出者:山林を相続したご自身の氏名、住所、電話番号を記入します。
  • 前所有者:亡くなられた方(被相続人)の氏名と、亡くなる前の住所を記入します。
  • 所有者となった年月日:被相続人が亡くなった年月日を記入します。
  • 所有権移転の原因:「相続」と記入します。
  • 土地の所在場所・面積など:登記簿謄本(登記事項証明書)や固定資産税の納税通知書を見ながら、正確に記入します。
  • 持分:空欄のままで構いません。

このケースは、届出の基本形となります。なお、相続した財産に登記されていない建物が含まれている場合も、別途市町村への手続きが必要になることがあります。

遺産分割協議が終わっていない場合

相続人が複数いて、まだ誰が山林を相続するのか話し合いがまとまっていない、というケースは少なくありません。しかし、その場合でも相続開始から90日以内の届出義務は免除されません。

この場合は、いったん、法律で決まっている取り分どおりに、相続人みんなで持っている形として届け出ます。

  • 届出者:相続人全員の氏名、住所を連名で記入します。書ききれない場合は、代表者の方の氏名の後に「ほか〇名」と書き、別紙として相続人全員のリストを添付する方法が一般的です。
  • 持分:それぞれの法定相続分(例:配偶者 2分の1、子 2分の1など)を記入します。
  • その他:基本的な記入方法は単独相続の場合と同じです。

そして、非常に重要なことですが、後日、遺産分割協議がまとまり、正式な所有者が決まったら、その新しい所有者は改めて所有者届出書を提出する必要があります。つまり、このケースでは手続きが二段階になる、と覚えておきましょう。

複数の相続人で共有する場合(共同相続)

遺産分割協議の結果、兄弟など複数の相続人で山林を共有することになった場合の書き方です。

  • 届出者:共有者となる方全員の氏名、住所を記入します。
  • 持分:話し合いで決めたそれぞれの持分割合(例:A 持分 2分の1、B 持分 2分の1など)を正確に記入します。
  • その他:基本的な記入方法は他のケースと同様です。

共有者全員が届出人となりますので、手続きを円滑に進めるためにも、事前に皆さんで連絡を取り合い、協力して書類を作成することが大切です。

参照:森林の土地の所有者届出制度 – 林野庁

届出に必要なもの一覧|提出先と添付書類

実際に手続きを進める段階で、何を用意し、どこへ行けばよいのかをまとめました。このセクションをチェックリストとしてご活用ください。

提出先
相続した森林(山林)が所在する市町村の役場の担当課(林務課、農林課、産業振興課など、名称は市町村によって異なります)

提出する書類

  1. 森林の土地の所有者届出書
    役場の窓口や、市町村のウェブサイトからダウンロードできます。
  2. その森林の場所を示す図面
    住宅地図のコピーや、公図の写しなどで構いません。該当地所をマーカーなどで分かりやすく印をつけましょう。
  3. 土地の権利を取得したことが分かる書類の写し
    相続の場合は、以下のいずれかの書類が該当します。
    • 登記事項証明書(登記簿謄本)
    • 遺産分割協議書の写し
    • 戸籍謄本(相続関係がわかるもの) など

どの書類が必要になるかは、状況や市町村によって異なる場合があるため、事前に電話などで確認しておくとスムーズです。なお、届出書に記載する「所有者となった年月日」は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)を指しますが、提出日自体もその日から90日以内でなければならない点には注意が必要です。相続した土地が、長年耕作されずに山林のようになっている農地だった場合などは、また別の手続きが必要となるケースもあります。

届出と相続登記の違いとは?一緒に進めるべき手続き

相続手続きを進める中で、「相続登記」という言葉も耳にするかと思います。この「森林の土地の所有者届出」と「相続登記」は、しばしば混同されがちですが、全く別の手続きです。

「森林の土地の所有者届出」と「相続登記」の違いを比較する表。目的、根拠法、提出先、期限、罰則の5項目でそれぞれの特徴を解説している。
森林の土地の所有者届出相続登記
目的森林の所有者を把握し、森林整備を促す不動産の持ち主を、だれに対しても分かる形にする
根拠法森林法不動産登記法
提出先市町村の役場法務局
期限所有者となった日から90日以内不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内
罰則10万円以下の過料10万円以下の過料
森林の土地の所有者届出と相続登記の違い

このように、目的も提出先も根拠となる法律も異なります。重要なのは、どちらか一方を行えばもう一方は不要、ということにはならない点です。

2024年4月1日からは相続登記も義務化され、こちらも期限内に手続きをしないと過料の対象となります。

どちらを先に進めるべきか迷うかもしれませんが、森林の土地の所有者届出は「90日以内」と期限が非常に短いため、こちらを優先的に進めつつ、並行して3年以内の相続登記の準備も始めるのが賢明な進め方と言えるでしょう。これらは、農地や森林の相続において、セットで対応すべき手続きだと認識しておきましょう。

参照:相続登記の申請義務化について – 法務省

まとめ

今回は、相続で山林を取得した際の「森林の土地の所有者届出書」について解説しました。

最後に、大切なポイントをもう一度確認しましょう。

  • 相続などで山林の所有者になったら、「森林の土地の所有者届出書」を提出する。
  • 提出先は、その山林がある市町村の役場
  • 期限は、所有者となった日(相続の場合は被相続人が亡くなった日)から90日以内
  • 正当な理由なく届出をしないと、10万円以下の過料の対象となる可能性がある。
  • 遺産分割協議中でも、まずは法定相続分で届出が必要。

聞き慣れない手続きで戸惑うこともあるかと思いますが、この記事で解説した手順に沿って進めれば、決して難しいものではありません。もし手続きで分からないことがあれば、市町村の担当窓口に問い合わせてみましょう。きっと親切に教えてくれるはずです。

この記事が、あなたの手続きの一助となり、不安の解消につながれば大変嬉しく思います。

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