農地改良の事前協議は必要?手続きと不要なケースを解説

「自分の農地、勝手に土を入れても大丈夫?」その不安、解消します

「うちの畑は水はけが悪いから、少し土を入れて高くしたいな」「田んぼをやめて、野菜を育てられる畑にしたい」。ご自身の農地をより良く活用したい、そのお気持ち、とてもよく分かります。

でも、その一方で、「勝手に農地に土を入れてしまって、後から何か言われたらどうしよう…」「手続きが必要らしいけど、何から手をつけていいか分からない」といった不安を抱えていらっしゃいませんか?

大切な農地だからこそ、正しい手順を踏んで、安心して改良したいものですよね。この記事では、農地改良、特に土を入れる「盛土(もりど)」をお考えのあなたのために、どんな場合に手続きが必要で、どのような流れで進めていけば良いのかを、専門用語をできるだけ使わずに、一つひとつ丁寧に解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたの疑問や不安が解消され、「何をすべきか」が明確になっているはずです。安心して、あなたの大切な農地づくりの第一歩を踏み出しましょう。

そもそも「農地改良」と「事前協議」って何?

手続きの話に入る前に、少しだけ言葉の整理をさせてください。「農地改良」や「事前協議」と聞くと、なんだか難しそうに感じてしまいますが、ご安心ください。一つひとつの意味が分かれば、決して難しい話ではありません。

農地改良とは?農地転用との違い

まず、よく似た言葉に「農地転用」というものがあり、ここで混乱してしまう方が多くいらっしゃいます。この二つの違いをはっきりさせておきましょう。

  • 農地改良これからも「農地」として使い続けるために、土地の状態を良くすることです。田んぼに土を入れて畑にする等の形状変更は、農業を継続する目的であれば農地改良(届出や協議)に該当する場合があるが、届出の要否や基準(高さ、搬入土量、成分等)は自治体ごとに異なるため、事前に農業委員会に確認してください。
  • 農地転用「農地」を、農地以外のもの(駐車場、住宅、資材置場など)に変えてしまうことです。

今回のテーマである盛土は、これからも農業を続けるためのものであれば「農地改良」家を建てるためなどの目的であれば「農地転用」となり、全く別の手続きが必要になります。まずは、ご自身の計画がどちらに当てはまるかを確認することが大切です。

なぜ農業委員会との「事前協議」が必要なの?

「これからも農地として使うのだから、自分の土地だし、自由にやらせてほしい」と思われるかもしれません。しかし、農業委員会との「事前協議」には、大切な理由があります。もし、何のルールもなく、みんなが自由に農地を工事してしまったらどうなるでしょうか?

  • ある人が大量に盛土をしたせいで、大雨が降った時に隣の田んぼに水が流れ込んでしまった…。
  • 建設現場から出た質の悪い土を使ったら、作物が育たない土地になってしまった…。
  • 工事のトラックが狭い農道に頻繁に出入りして、周りの農家さんの迷惑になってしまった…。
無計画な盛土によって、隣の農地に水が流れ込みトラブルになっている様子を説明するイラスト

このようなトラブルを防ぎ、優良な農地を将来にわたって守り、地域の人たちが気持ちよく農業を続けられるようにするために、事前に「こんな計画で工事をしますよ」と農業委員会に相談し、確認してもらうのが「事前協議」の役割なのです。

あなたの農地改良に事前協議は必要?判断基準をチェック

それでは、具体的にどのような場合に事前協議が必要になるのでしょうか。ここが一番知りたいポイントですよね。自治体によって細かな基準は異なりますが、一般的な判断基準をご紹介します。

原則、事前協議が必要になるケース

一般に、外部から土を搬入して盛土を行う場合は農業委員会への事前相談・協議が求められることが多いですが、最終的な要否や必要書類は市町村ごとに定められているため、必ず該当自治体の農業委員会へ事前確認してください。

外部搬入土は、有害物質や土質(pH・有機物等)の検査、搬入元の明示、発生土の性状報告などの提出を求められる場合があります。建設発生土を用いる場合は特に検査書類の準備が必要となる可能性が高いため、事前に確認・検査を行ってください。

「自分の場合はどうだろう?」と迷ったら、「外部から土を持ってくるなら、まずは相談が必要」と考えておくと間違いがないでしょう。

事前協議が「不要」または「届出」で済む場合の条件

一方で、すべての農地改良に厳格な手続きが必要なわけではありません。以下のようなケースでは、事前協議が不要、あるいは簡単な届出で済むことがあります。

  • 耕うん(こううん)の範囲内とみなされる行為
    トラクターなどで農地を耕す際に、同じ農地内のでこぼこをならすために土を少し移動させる、といった程度であれば手続きは不要です。
  • ごく小規模な改良
    自治体の基準によりますが、「盛土の高さが〇cm未満」「面積が〇㎡未満」「工事期間が〇日以内」といった、ごく小規模な改良であれば、簡単な届出だけで済む場合があります。

ただし、これらの基準は本当に自治体ごとに様々です。「許可がいらない場合もあるんだな」ということを知っておきつつも、最終的にはご自身の農地がある市町村の農業委員会に確認するのが最も確実です。

要注意!「盛土規制法」との関係

宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)は令和5年(2023年)5月26日施行で、一定規模(例:崖の高さや盛土の高さ・面積等)の盛土は都道府県知事等の許可・届出対象になるため、盛土を計画する際は自治体の規制区域・基準を確認してください。

農地改良のための盛土であっても、一定の高さを超える崖ができる場合や、大規模な工事になる場合などは、この盛土規制法の許可も必要になる可能性があります。

農地法だけでなく、安全のための新しいルールも関係してくる場合がある、ということを頭の片隅に置いておいてください。

参考:「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)について

農地改良の事前協議、手続きの流れと必要書類

事前協議が必要だと分かった場合、どのような流れで手続きを進めていくのでしょうか。ここでは、一般的な手続きのステップと、準備すべき書類について解説します。

行政書士が農地改良の計画について農家の方へ丁寧に説明しているイラスト

ステップ1:農業委員会への相談と事前協議書の提出

最初の一歩は、計画の段階で、まず農業委員会の窓口へ相談に行くことです。正式な書類を出す前に、「実は、ここの農地でこういうことを考えているのですが…」と話をしにいくのです。

その際、以下のものを持っていくと話がスムーズに進みます。

  • 場所がわかる地図(住宅地図のコピーなど)
  • 計画の簡単なメモ(どの様な土を、どれくらい、どの様な目的で盛土したいか)
  • 農地の現在の写真

窓口で相談することで、ご自身の計画に必要な手続きや書類の種類、注意点などを具体的に教えてもらえます。その後、自治体のウェブサイトなどから「農地改良事業計画事前協議書」といった様式の書類を入手し、必要事項を記入して提出します。

ステップ2:工事計画と添付書類の準備

事前協議書とあわせて、計画の詳細を示すための書類を準備します。一般的に、以下のような書類が必要になります。

書類名内容・目的
位置図・案内図農地の場所を示す地図です。
公図(こうず)の写し法務局で取得できる、土地の区画や地番を示す図面です。
土地の登記事項証明書土地の所有者などを証明する書類です。
計画図(平面図・断面図)工事前と工事後の土地の高さや形状がどう変わるかを示す図面です。
隣接農地所有者等の同意書工事によって影響を受ける可能性のある、お隣の土地の方からの同意書です。トラブル防止のために非常に重要です。
搬入する土の発生場所や成分を証明する書類安全な土であることを確認するための書類です。
主な添付書類の例

特に「隣接農地所有者等の同意書」は、円満に計画を進めるための鍵となります。事前に計画をきちんと説明し、理解を得ておくことが大切です。

ステップ3:工事の開始と完了報告

農業委員会での審査が終わり、計画に問題がないと確認が取れれば、いよいよ工事を開始できます。そして、工事が計画通りに完了したら、「終わりました」という報告(完了届)を提出するのを忘れないようにしましょう。

完了届には、工事後の写真などを添付することが一般的です。この報告をもって、一連の手続きがすべて完了となります。

もし無断で農地改良をしたら?知っておくべきリスク

「手続きは面倒だし、こっこりやってしまえばバレないのでは?」…そんな風に考えてしまう気持ちも分からなくはありません。しかし、その安易な判断が、将来的に大きなトラブルを招く可能性があります。専門家の立場から、知っておいていただきたいリスクをお伝えします。

農地法違反による罰則の可能性

無断で行った盛土が、実質的に農地を潰してしまう行為(農地転用)だと判断された場合、農地法違反に問われる可能性があります。

その場合、農業委員会から工事の中止命令や、元の状態に戻すようにという原状回復命令が出されることがあります。これらの命令に従わないと、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)という重い罰則が科されることもあります。(農地法の規定に基づく罰則で、違反転用や原状回復命令違反に適用される。詳細は農地法第64条等を参照)

参考:農地の無断転用 – 平川市

近隣トラブルや将来の売却・相続への影響

法的なリスクだけではありません。無計画な盛土は、お隣の農地への水の流れを変えてしまったり、日当たりを悪くしてしまったりと、ご近所トラブルの直接的な原因になります。一度こじれてしまうと、その後の関係修復は非常に困難です。

また、手続きが正しく行われていない農地は、将来、売却しようとしても買い手がつかなかったり、子どもたちに相続させようとしたときに問題が発覚したりするケースもあります。資産として価値が下がってしまうのです。

「あの時、ちゃんと手続きしておけばよかった…」と後悔しないためにも、ルールに沿って進めることが、あなた自身とあなたの大切な農地を守ることにつながります。

手続きの不安は専門家へ。行政書士に相談するメリット

ここまで読んでみて、「やっぱり手続きは複雑で難しそう…」「自分一人でやるのは不安だ」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。そんなときは、私たち行政書士は、許認可・届出の手続きに関する支援を行う有資格者です。農地手続きに関する書類作成や役所対応の代行を希望される場合はご相談ください。

複雑な書類作成や役所とのやり取りを任せられる

行政書士にご依頼いただく一番のメリットは、時間と手間のかかる書類作成や役所との折衝などの手続きの代行・サポートを行い、手続きの円滑化を図ることが期待できる点です。図面の作成や同意書の取り付けなど、専門的な知識や経験が必要な場面でも、スムーズに手続きを進めることができます。

これにより、あなたは面倒な手続きに煩わされることなく、本業やお仕事、日々の暮らしに集中していただくことが可能です。

あなたの計画に最適な手続きを提案してもらえる

ご自身の計画が、本当に「農地改良」の届出で済むのか、それとも「一時転用」などの別の許可が必要なのか、専門家でなければ判断が難しいケースも少なくありません。

私たちは、あなたの計画内容を丁寧にお伺いした上で、法律や条例に基づき、最も適切でスムーズな手続きの方法をご提案します。思い込みで誤った手続きを進めてしまい、後からやり直しになる、といったリスクを避けることができます。

特に当事務所は、中山間地域の農地手続きの相談経験があります。一つひとつの案件に誠実に向き合い、ご相談者様と一緒に最善の方法を考えることを大切にしています。

農地改良の手続きで不安があれば、ご相談を承ります。手続き・書類作成の支援や役所との調整を行い、可能な範囲でサポートいたします。まずはお住まいの自治体の農業委員会の確認結果をお持ちください。

農地改良の手続きに関するご相談はこちら(※ご相談の前に、リンク先のサービス内容、料金、対応範囲等をご確認ください。)

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