60条証明とは?農家住宅の建て替えを行政書士が解説

「60条証明書」?市街化調整区域での家づくり、お悩みではありませんか?

「そろそろ家を建て替えたいけれど、うちは市街化調整区域だから難しいのかな…」
「役所に行ったら『60条証明書が必要です』と言われたけど、一体何のことだろう?」

市街化調整区域で、ご家族との大切な住まいである農家住宅の建て替えや新築を考えたとき、聞き慣れない言葉や複雑そうな手続きを前に、不安な気持ちになっていらっしゃるかもしれません。そのお気持ち、とてもよく分かります。

でも、ご安心ください。この記事は、まさにそんなお悩みをお持ちのあなたのために書きました。

この記事を最後までお読みいただければ、

  • 「60条証明書」がなぜ必要なのか、その役割がすっきり分かる
  • ご自身が対象になるかの条件が具体的にイメージできる
  • 手続きの全体像と、特に注意すべき点が把握できる

ようになります。複雑に見える手続きも、一つひとつ順を追って理解すれば、決して怖いものではありません。この記事が、あなたの家づくりの第一歩を、安心して踏み出すためのお手伝いになれば幸いです。

市街化調整区域に建てられた新しい農家住宅の前で、笑顔で立つ若い家族のイラスト。背景にはのどかな田園風景が広がっている。

「60条証明書」とは?開発許可が不要になる証明書

まず、「60条証明書」とは何か、その正体からご説明しますね。一言でいうと、「60条証明が得られれば開発許可が不要となる場合がありますが、適用要件は厳格で自治体ごとに確認が必要です。まずは事前相談で可否を確認してください。」という、行政からの証明書のことです。

自治体によって表記は異なりますが(例:「適合証明」「省令第60条証明」など)、一般に都市計画法施行規則第60条に基づく「適合を証する書面」を指します。少し長い名前ですが、この「60条」という数字が名前の由来になっているんですね。

【専門家コラム】そもそも「開発許可」ってなんだろう?

市街化調整区域に家を建てる場合、原則として「開発許可」という手続きが必要です。これは、街の景観やインフラを守るため、無秩序な開発を防ぐための大切なルールです。しかし、農業を営む方にとって、その生活や仕事に欠かせない農家住宅の建築まで厳しく制限されてしまうと、地域の農業そのものが成り立たなくなってしまいます。そこで、一定の条件を満たす農家住宅については、この開発許可が免除される特例が設けられているのです。60条証明書は、その特例に当てはまることを証明するための、いわば「特別な通行手形」のようなもの、とイメージしていただくと分かりやすいかもしれませんね。

なぜ「60条証明書」が必要になるの?

市街化調整区域は、もともと街の市街化を抑えるためのエリアです。そのため、新しい建物を建てる際には「開発許可」という、いわば行政の厳しいチェックを受けるのが大原則です。

しかし、先ほども触れたように、そこで農業を営み、地域を支えている方々が住む家まで厳しく制限しては、農業の担い手がいなくなってしまいます。そこで、「農業を続けるために本当に必要な農家住宅」については、その厳しいチェックを簡略化し、スムーズに建築を進められるようにしよう、という目的で「60条証明書」の制度が作られました。この証明書があることで、地域農業の維持と、無秩序な開発の防止という二つの目的のバランスをとっているのです。

「開発許可」との違いは?

「開発許可」と「60条証明書」は、似ているようで役割が全く異なります。

  • 開発許可:これから行う土地の造成や建築が、街づくりのルールに合っているかを「審査」し、問題がなければ「許可」を与えるもの。時間も費用もかかる、いわば「本審査」です。
  • 60条証明書:あなたの建築計画が「農家住宅」などの特別な例外に当たるため、そもそも開発許可の「審査が不要ですよ」ということを「証明」してくれるもの。本審査の前段階で、「あなたは審査対象外です」と教えてくれるものです。

この違いを理解しておくと、役所や建築会社の方との打ち合わせもスムーズに進めやすくなりますよ。

参考:都市計画制度の概要

【私は対象?】60条証明書で農家住宅を建てるための3つの条件

「うちは対象になるのだろうか?」というのが、一番気になるところですよね。60条証明書を受け取るためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。自治体によって細かいルールは異なりますが、ここでは一般的に求められることが多い3つの大きな条件について解説します。

条件1:建築主が「農業を営む人」であること

まず最も大切なのが、家を建てる人(建築主)が「農業を営む人」、つまり農家さんであることです。具体的には、以下のような方が対象となります。

  • 農地基本台帳に登録されている農家世帯に属する人
  • 主に農業によって生計を立てている人(農業所得が一定以上あるなど)

例えば、農家の親御さんと同居しているお子さん(後継者)が、結婚を機に同じ敷地内に新しい家を建てる、といったケースも対象になることがありますが、実際には「実態として農業に従事しているか」等の確認が行われます。後継者の場合は具体的な就農状況や世帯の実態を役所へ確認してください。

条件2:一定規模以上の農地を耕作していること

次に、どのくらいの規模で農業を行っているか、という点も重要です。自治体によりは面積要件を定めている場合があります(例として1,000㎡などの基準を採る自治体もあります)。具体的な数値や要件は必ず担当窓口で確認してください。

条件3:建築する場所と建物に関するルール

どこに、どんな建物を建てるかにもルールがあります。

  • 場所:原則として、ご自身が所有し耕作している農地の中や、その農地に隣接した土地である必要があります。農作業の利便性を考えてのルールですね。
  • 建物:建物の広さにも、上限が設けられている場合があります。あくまで農業を営む人の生活に必要な範囲の建物、という考え方なので、社会通念上あまりに大きな豪邸などは認められない可能性があります。

これらの条件は複雑に絡み合うため、「自分の場合はどうだろう?」と迷われたら、ご自身で判断せずに、まずは専門家や役所の窓口に相談することが大切です。

60条証明書の申請手続きと必要書類

では、実際に60条証明書を取得するには、どのような流れで進めていけばよいのでしょうか。ここでは、一般的な手続きのステップをご紹介します。

ステップ1:まずは役所の担当窓口へ事前相談

いきなり書類を集め始めるのではなく、まず最初に行うべきは「事前相談」です。市町村の都市計画課や建築指導課といった担当窓口へ連絡し、「市街化調整区域で農家住宅の建て替えを考えているのですが…」と相談してみましょう。

この事前相談で、

  • ご自身の計画が60条証明の対象になりそうか
  • どのような書類を、どこで集めればよいか
  • その後の手続きの流れ

などを具体的に教えてもらえます。この最初のステップを丁寧に行うことで、後の手続きが格段にスムーズになります。もちろん、この段階で私たちのような行政書士にご相談いただければ、窓口相談への同行や書類作成、手続きの代理申請等の支援が可能です(ただし、許認可の可否は行政の判断によります)。支援内容と費用は事前にご説明します。

ステップ2:必要書類を集める

事前相談で確認した必要書類を集めます。一般的には、以下のような書類が必要になることが多いです。(※自治体により異なりますので、必ず担当窓口にご確認ください)

分類書類名入手先など
申請書類証明願(申請書)役所の窓口
申請理由書ご自身で作成
図面類付近見取図(案内図)建築士などに依頼
配置図・各階平面図
土地の実測求積図
証明書類農業委員会の証明書市町村の農業委員会
土地の登記事項証明書法務局
公図の写し法務局
60条証明申請の主な必要書類(例)

特に重要なのが、農業委員会が発行する「農業を営む者であることの証明」や「耕作証明書」などです。これらは、あなたが条件を満たす農家であることを客観的に証明するための大切な書類となります。

ステップ3:申請書の提出から証明書の交付まで

すべての書類が揃ったら、役所の窓口に申請書を提出します。提出後、役所内で審査が行われ、問題がなければ証明書が交付されます。

申請から交付までの期間は自治体により大きく異なります。一般に「一定の期間を要する」と案内されることが多いため、具体的な所要期間は事前相談時に担当窓口へ確認してください。

そして、無事に60条証明書を受け取ったら、次のステップである「建築確認申請」へと進むことになります。

行政書士が役所の窓口で60条証明書の申請手続きを行っている様子を描いたイラスト。

【重要】農家住宅の建て替えで絶対に注意すべき3つのポイント

特に、今ある家を「建て替える」場合に、知らずに進めると取り返しのつかない事態になりかねない、非常に重要な注意点があります。ここでは、専門家として特に強調しておきたい3つのポイントをお伝えします。

注意点1:先に現在の農家住宅を解体することは控えましょう

これは最も重要なポイントです。60条証明書や建築確認の許可が正式に下りる前に、現在の農家住宅を解体することは控えましょう。

なぜなら、「今ある農家住宅を取り壊して、同じような目的の家を建てる」という「建て替え」であることが、大きな前提条件になっているからです。もし先に解体して更地にしてしまうと、「建て替え」ではなく「何もない土地に新しく家を建てる=新規建築」と見なされてしまいます。そうなると、許可のハードルが格段に上がってしまい、最悪の場合、家を建てられなくなる可能性すらあるのです。工事の段取りを考えて焦る気持ちは分かりますが、必ず行政の許可を得てから解体工事に着手してください。

注意点2:相続した農家住宅は誰が建て替えられる?

親御さんから農家住宅と農地を相続したお子さんが、その家を建て替えたい、というケースも多いでしょう。この場合、注意が必要です。

建て替えができるのは、あくまで「農業を営む人」です。もし、相続したお子さん自身が農業をしておらず、今後も就農する予定がない場合、原則として農家住宅として建て替えることはできません。将来的にご自身が農業を始める計画があるなど、特別な事情がある場合は認められる可能性もありますが、非常に専門的な判断が必要となります。ご家族の状況が変わった場合は、安易に「建て替えられるはず」と考えず、必ず事前にご相談ください。

注意点3:「農家住宅」でなくなると売却や賃貸ができない?

60条証明を受けて建てた農家住宅は、あくまで「農業を営む人のための家」という特別な位置づけです。そのため、建築後に農業をやめる、第三者に売却・賃貸する場合は、証明の趣旨や自治体の取り扱いにより制約や手続きが生じる可能性があります。将来的な利用変更を検討している場合は、事前に自治体へ照会してください。

将来、お子さんが家を出て農業を継がないかもしれない、といったライフプランの変化も考えられます。この制度を利用して家を建てるということは、そうした将来的な制約も受け入れるということになります。ご家族の未来も見据えた上で、慎重に計画を進めることが大切です。

「先に古い家を解体してはいけない」という注意点を警告する、バツ印が描かれた家と重機のイラスト。

手続きが複雑…そんな時は専門家への相談も選択肢に

ここまでお読みいただき、60条証明書の全体像はご理解いただけたかと思います。しかし、実際に自分のケースに当てはめてみると、「うちの耕作面積で大丈夫だろうか?」「この書類はどこでもらえばいいの?」など、新たな疑問や不安が出てくることも多いでしょう。

そんな時、一人で抱え込まずに、行政書士に相談をするという選択肢もぜひご検討ください。

行政書士に相談をすることで、

  • 役所の担当者との複雑な協議や確認を代行できる
  • 膨大で分かりにくい必要書類の収集をスムーズに進められる
  • あなたの状況が要件を満たすか、専門的な視点で的確に判断できる
  • 将来的なリスクも踏まえた上で、最善の方法をご提案できる

といったメリットがあります。単に書類を作るだけでなく、あなたの家づくり計画が円滑に進むよう、伴走者としてサポートさせていただきます。

弊事務所は、特に手続きが複雑になりがちな中山間地域の農地案件に注力しています。あなたのお悩みに寄り添いながら、最善の解決策を一緒に考えさせていただきます。

「何から相談していいか分からない」という段階でも全く問題ありません。まずはお気軽にお話をお聞かせください。ご相談は初回無料です。ただし、無料相談の範囲は、お電話やメールでの一般的なご質問への回答に限らせていただいております。具体的な書類の確認や作成、官公署への同行といった業務に着手する際は、別途費用が発生いたしますので、あらかじめご了承ください。

60条証明書の申請に関する無料相談はこちら

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

0283225411電話番号リンク 問い合わせバナー