第1種農地の判定基準とは?農地の集団性の判断を行政書士が解説

なぜ「第1種農地」の判定が重要なのか

ご自身の所有する農地について、「この土地は将来、家を建てたり、駐車場にしたりできるのだろうか」と考えたことはありませんか。農地を農地以外の目的で利用することを「農地転用」と呼びますが、すべての農地で自由に転用が認められるわけではありません。

特に「第1種農地」は優良な農地として保護されており、原則として転用が許可されにくいとされています。ただし、公共性の高い事業に利用される場合などの例外規定や、農業振興地域からの除外といった手続きも制度として存在します。もし、将来的な土地活用の計画があったとしても、第1種農地であるという判定が、その計画の大きな障壁となる可能性があるのです。

この判定の中でも、特に判断が複雑で専門的な知識を要するのが「農地の集団性の判断」です。見た目では分かりにくく、様々な要因を総合的に考慮する必要があるため、多くの方が悩まれるポイントです。この記事では、第1種農地の判定基準、特にその鍵を握る「農地の集団性」について、専門家の視点から分かりやすく解説してまいります。

第1種農地と判定される3つの主な基準

農地が「第1種農地」に該当するかどうかは、主に3つの基準から総合的に判断されます。これらの基準は、その土地が日本の農業にとってどれだけ重要かを示す指標とお考えください。ここでは、その3つの基準の全体像を掴んでいきましょう。

第1種農地の3つの判定基準(集団性・面積、公共投資、生産性)を分かりやすく図解したインフォグラフィック

基準1:10ヘクタール以上の「一団の農地」であること

まず最も重要な基準が、農地がまとまった広さを持っているかどうかです。具体的には、おおむね10ヘクタール(東京ドーム約2個分)以上の規模で農地が集まっている地域にある農地が、一つの目安とされています。ただし、これは絶対的な基準ではなく、最終的な判定は自治体などが集団性や土地の条件を総合的に評価して行います。

ここでポイントとなるのが「一団の農地」という言葉です。これは単に広いだけでなく、農地と農地が物理的につながり、一体として利用されている状態、つまり「農地の集団性」が高い状態を指します。この集団性がどのように判断されるかが、第1種農地の判定における最大の鍵となります。

基準2:土地改良事業などの対象となっていること

国や都道府県、市町村が税金を投入して、農業をしやすくするための工事(土地改良事業)を行った農地も、第1種農地に判定されやすくなります。

例えば、区画を整理して大型の機械が入りやすくする「圃場(ほじょう)整備」や、水を安定して供給するための「かんがい排水施設」の整備などがこれにあたります。公的な投資によって優良な農地として整備された経緯があるため、今後も農地として守っていく必要性が高いと判断されるのです。

基準3:高い生産能力が見込まれること

土地そのものが持つ能力、つまり「生産性」も重要な基準です。具体的には、以下のような条件を満たす農地が該当します。

  • 傾斜が緩やかで、農作業がしやすいこと
  • 土壌が良く、作物が育ちやすいこと
  • 風水害などの自然災害の被害を受けにくい場所にあること

単に広いだけでなく、農地としての質が高く、安定して高い収穫量が見込める土地は、保護すべき優良な農地とみなされます。

【具体例で解説】農地の集団性の判断ポイント

ここからは、この記事の核心である「農地の集団性の判断」について、具体例を挙げて詳しく解説します。農地と農地の間に道路や川があった場合、それらは農地のまとまりを断ち切る「分断要因」と見なされるのでしょうか。それとも、一体の農地として扱われるのでしょうか。この見極めが非常に重要です。

農地の集団性について、分断要因と見なされるケース(高速道路・河川)と見なされないケース(農道・水路)を比較した図解

「分断要因」と見なされるもの(集団性が失われるケース)

農地の一体性を失わせ、集団性を断ち切ってしまう「分断要因」と判断されやすいものには、以下のようなものがあります。

  • 高速道路や国道、鉄道:これらは農業機械が自由に横断しにくく、農地を物理的にも機能的にも分断するため、分断要因とみなされやすい傾向にあります。ただし、近隣に橋や横断できる施設があるなど、営農上の一体性が保たれている実態があれば、総合的に判断されます。
  • 幅の広い河川:橋が近くになく、簡単に行き来ができないような大きな川も、農地の一体性を損なう要因となる可能性が高いです。しかし、これも橋の有無や実際の営農状況などを踏まえ、総合的に判断されます。
  • 恒久的な施設(庁舎、学校など):公的な建物や大規模な工場なども、農地の連続性を遮る明確な要因です。

これらの共通点は、「農業機械などが容易に横断できず、一体的な営農を妨げるもの」であるという点です。これらによって農地が分断されている場合、それぞれが別の「一団の農地」として扱われる可能性があります。

「分断要因」と見なされないもの(集団性が維持されるケース)

一方で、農地と農地の間を通っていても、必ずしも分断要因とはならないものもあります。

  • 農道や里道:農業機械が日常的に通行し、横断も容易な細い道は、分断要因とはみなされないことが一般的です。しかし、道の幅や利用実態によっては判断が分かれることもあり、一体的な営農に不可欠な施設として扱われるかどうかは個別の状況によります。
  • 小さな水路:農業用の小さな用水路や排水路も、農地の一体性を保つための施設であり、分断要因にはなりません。
  • 畦畔(けいはん・あぜ):田んぼと田んぼを区切る「あぜ道」はもちろん分断要因ではありません。

これらのポイントは、「営農上の一体性が保たれているかどうか」という実態に即して判断されます。見た目だけで「道があるからダメだ」と安易に判断するのは禁物です。

判断が難しいケースと行政書士の視点

実際の現場では、手引き通りに判断できない複雑なケースが数多く存在します。ここでは、私たちが実務でよく遭遇する、判断が難しいケースとその考え方について解説します。農地制度に詳しい行政書士など、行政手続きの経験がある者による詳細な調査と分析が有益です。

農地の判定について専門家である行政書士に相談している夫婦のイラスト

ケース1:道路を挟んでいるが、耕作者が同じ場合

例えば、市道のような比較的小さな道路を挟んで、両側の農地を同じ方が耕作しているケースです。物理的には道路で分断されていますが、耕作者はトラクターで道路を横断し、両方の土地を一体のものとして管理・運営している実態があります。

このような場合、形式的には分断されていても、実際の営農状況を重視し、全体として「一団の農地」であると判断される可能性があります。農業委員会事務局との協議では、こうした利用実態を丁寧に説明することが重要になります。

ケース2:農地の間に宅地や山林が点在している場合

広大な農地地帯の中に、ぽつんぽつんと住宅や小さな山林が混在しているケースもよく見られます。この場合、これらの宅地や山林の規模や配置によって「農地の集団性の判断」が大きく変わってきます。

例えば、広大な田園風景の中に小さな農家住宅が一軒ある程度であれば、農地の集団性は維持されていると判断されるでしょう。しかし、宅地がいくつも連なっていたり、大きな雑木林が農地を隔てていたりすると、集団性が失われていると判断される可能性が高まります。明確な線引きが難しく、個別の状況に応じた専門的な判断が求められます。

ケース3:面積が10ヘクタールぎりぎりの場合

基準には「おおむね10ヘクタール」と書かれています。この「おおむね」という言葉が、判断を難しくさせる要因の一つです。

例えば、地図上で計測すると9.8ヘクタールだった場合、即座に基準を満たさないと判断されるわけではありません。周辺の農地の状況、土地改良事業の有無、生産性の高さなどを総合的に考慮し、実質的に10ヘクタールの一団の農地と遜色ない優良な農地であると認められれば、第1種農地と判定される可能性は十分にあります。逆に、10ヘクタールをわずかに超えていても、集団性が低いと見なされれば、第1種農地と判定されないこともあり得ます。条文の文言だけでなく、その背景にある趣旨を理解することが不可欠です。

専門家コラム:なぜ第1種農地の判定はこれほど厳しいのか

「なぜ自分の土地なのに、自由に利用できないのか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。第1種農地の制度は、日本の食料自給率を守るという、非常に重要な目的のために存在します。

一度、優良な農地を宅地や工場にしてしまうと、元の状態に戻すことはほぼ不可能です。特に、中山間地域などで先祖代々受け継がれてきた農地は、単なる資産であるだけでなく、地域の景観や文化、そして日本の食を支える大切な基盤です。

ご依頼者様のお気持ちに寄り添いながらも、こうした法制度の背景を丁寧にご説明し、ご自身の土地が持つ価値や可能性について、一緒に考えることを大切にしています。その上で、法律の範囲内で最善の道を探るお手伝いをさせていただいております。

第1種農地の判定でお悩みならご相談ください

ここまで解説してきたように、第1種農地の判定、とりわけ「農地の集団性」の判断は、非常に専門的で複雑です。道路の種類、土地の利用状況、周辺環境など、多くの要素を総合的に評価する必要があり、一般の方が正確に判断することは容易ではありません。

もし、ご自身の判断で「ここは第1種農地にはならないだろう」と考えて計画を進めてしまい、後から転用が不許可となってしまった場合、計画の見直しや、場合によっては工事の中止に伴う費用が発生するなど、予期せぬ事態につながる可能性も考えられます。

当事務所は、栃木県佐野市を拠点に、これまで農地に関するお手続きに携わってまいりました。特に、判断が難しいとされる中山間地域の農地手続きについても従事した経験がございます。第1種農地の判定に関するご不安や、農地転用の可能性についてお悩みでしたら、まずは一度ご相談ください。

ご依頼者様のお話をじっくりと伺い、現地の状況を丁寧に調査した上で、最善の方法を一緒に考えさせていただきます。どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

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