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市街化調整区域に家を建てる「指定区域」制度をわかりやすく解説
市街化調整区域でも家が建てられる「指定区域」とは?
「市街化調整区域にある土地だけれど、家を建てられるだろうか」。ご両親から譲り受けた土地や、購入を検討している土地について、このようなお悩みをお持ちではないでしょうか。原則として、市街化調整区域は建物をむやみに建てられない場所と定められています。
しかし、あきらめるのはまだ早いかもしれません。市街化調整区域の中にも、特定の条件を満たせば、誰でも自分の家を建てられる特別なエリアが存在します。それが「指定区域」と呼ばれる場所です。
この制度を、とても簡単にたとえてみましょう。市街化調整区域は「自然を大切にして、静かに過ごすためのエリア」というルールが決められた場所だと考えてみてください。そのため、新しい建物はあまり建てられません。
ところが、そのエリアの中には、ルールができるずっと前からたくさんの家が建ち並び、人々が生活していた「にぎやかな集落」がありました。そうした場所について、「もともとまちとして成り立っているのだから、これからも家を建ててもいいですよ」と、特別に認められたのが「指定区域」なのです。この特別な制度のおかげで、市街化調整区域であっても、マイホームの夢を実現できる可能性があるのです。
「市街化調整区域」と「指定区域」の関係
ここで、「市街化調整区域」と「指定区域」の関係を整理しておきましょう。
まず「市街化調整区域」とは、都市計画法という法律で「市街化を抑制すべき区域」、つまり、まちが無秩序に広がるのを防ぎ、自然環境などを守るためのエリアと定められています。そのため、原則として住宅や商業施設などを新しく建てることには厳しい制限があります。
一方、「指定区域」は、その市街化調整区域という大きな枠の中に、ぽつんと存在する特別なエリアです。もともと家が建ち並んでいたり、公共施設が整っていたりする集落を、自治体が条例で「ここなら家を建てても良いですよ」と指定した場所を指します。大きな「市街化調整区域」の中に、小さな「指定区域」が点在しているイメージです。

なぜ「指定区域」制度ができたのか
この「指定区域」制度は、法律と地域の実情との間に生じるズレを調整するために生まれました。
法律(都市計画法)ができたとき、すでに多くの家が建ち並び、一つのコミュニティとして機能している集落が市街化調整区域内にたくさんありました。そうした地域では、子どもが大きくなったから家を建てたい、あるいはこの地域に住みたいから土地を買って家を建てたい、というごく自然な要望が生まれます。
こうした地域の現実に合わせるため、都市計画法第34条第11号という規定に基づき、各自治体が条例でエリアを定めることで建築を認める「区域指定型制度」、いわゆる指定区域の制度が作られました。これにより、一定の条件を満たすエリアであれば、市街化調整区域内であっても開発許可を得て住宅を建てることが可能になったのです。
注意点:法改正で「指定区域」は減っています
市街化調整区域に家を建てる希望となる「指定区域」制度ですが、近年、大きな変化がありました。結論から申し上げますと、国の関連法改正は主に令和2年(2020年)に行われ、これを受けて多くの自治体で条例や指定区域が見直された結果、自治体によっては指定区域が縮小されています。
この改正は「廃止」というわけではありませんが、多くの自治体で条例が見直され、これまで「指定区域」だった場所が指定から外されたり、新たな指定がされなくなったりする動きが広がっています。そのため、「以前は建てられたのに、今は建てられない」というケースも出てきています。

災害リスクへの配慮が背景に
なぜ、制度が厳しくなったのでしょうか。その背景には、近年日本各地で多発している自然災害への備えがあります。
新しい法律では、住民の安全を第一に考え、土砂災害や洪水などのリスクが高いエリアを、原則として開発許可の対象から除外する方針が示されました。国の法改正では、災害リスクを踏まえたまちづくりが強化されていますが、都市計画法第34条第11号に基づく指定区域の具体的な運用(例えば、災害イエローゾーンをどう扱うかなど)は、最終的に各自治体の条例や審査基準によって判断されます。
これは、これから家を建てて長く住む方々の安全を守るための重要な変更です。単なる規制強化ではなく、安心して暮らせるまちづくりの一環とご理解いただければと思います。
お住まいの自治体への確認が不可欠です
法改正の影響は、それぞれの市町村によって対応が異なります。ある自治体では指定区域のほとんどが廃止された一方、別の自治体では一部のエリアが存続しているなど、状況は様々です。
したがって、「ご自身が家を建てたいと考えている土地が、今現在も指定区域として有効なのか」を正確に知るためには、必ずその土地がある市町村の役所(都市計画課など)に直接確認することが不可欠です。インターネット上の古い情報や噂だけで判断するのは大変危険です。
計画を進める第一歩として、まずは公的な窓口で最新の情報を確認することから始めましょう。
参考:報道発表資料:「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律 …
指定区域に家を建てるメリット・デメリット
もし、ご自身の土地が無事に「指定区域」として有効だった場合、そこにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。ここでは、指定区域だからこその特徴について解説します。
メリット:誰でも建築可能、土地の価値向上
指定区域の最大のメリットは、条例で定められた用途や敷地面積などの要件を満たせば、その土地に縁故がない方でも住宅の建築を申請できる可能性があるという点です。市街化調整区域では通常、農家の跡継ぎなど、ごく限られた人しか家の建築が認められません。しかし、指定区域であれば、その土地に縁故がない方でも、土地を購入してマイホームを建てることが可能です。
これにより、土地活用の幅が大きく広がります。また、家を建てられる土地になることで、土地そのものの資産価値が向上する可能性も期待できるでしょう。
一般的に市街化調整区域の土地は、市街化区域に比べて価格が安い傾向にあります。建築の自由度が高まることで、費用を抑えつつ理想の住まいを実現できるチャンスが生まれるかもしれません。
デメリット:インフラ整備や建築物の制限
一方で、注意すべき点もあります。指定区域は、あくまで市街化調整区域の一部です。そのため、都市部のようにインフラが完璧に整備されているとは限りません。
例えば、公共の下水道が通っておらず、ご自身で合併処理浄化槽を設置する必要があるかもしれません。その場合、設置費用やメンテナンス費用が別途かかります。また、都市ガスではなくプロパンガスを利用する地域も多いでしょう。
さらに、建てられる建物の種類や規模にも制限があります。自治体の条例によって異なりますが、基本的には「専用住宅」や、自宅と兼用する小規模な店舗などに限定されることがほとんどです。大規模なアパートや商業施設などを建てることはできません。建物の高さや大きさにも制限が設けられている場合があるため、計画の際には注意が必要です。
指定区域で専用住宅を建てるための建築条件と手続き
それでは、実際に指定区域で家を建てるには、どのような条件をクリアし、どんな手続きを踏む必要があるのでしょうか。ここでは、その概要をご説明します。
主な建築条件(自治体により異なります)
指定区域内に土地があればどこでも自由に建てられるわけではなく、自治体が条例で定めた細かい建築条件を満たす必要があります。これは自治体ごとに内容が大きく異なりますが、一般的には以下のような項目が定められています。
- 予定建築物の用途:原則として専用住宅(自分が住むための家)。店舗兼住宅などが認められる場合もある。
- 敷地の面積:「200平方メートル以上」など、最低敷地面積が定められていることが多い。
- 接道条件::敷地が「幅員4m以上の道路に2m以上接している」ことなど、道路との関係が問われる。
- 建物の規模:「2階建て以下」「建ぺい率・容積率の上限」など、建物の大きさに関する制限。
これらの条件は、あくまで一般的な例です。必ず、建築を計画している自治体の条例を確認する必要があります。例えば、当事務所のある栃木県佐野市の基準については、栃木県佐野市 都市計画法第34条第11号に規定する開発行為の許可の基準に関する条例に基づく許可申請についてのページでも解説していますので、ご参考にしてください。
手続きの基本的な流れ
条件を満たしていることを確認できたら、次は建築に向けた手続きに進みます。大まかな流れは以下の通りです。
- 自治体への事前相談:計画の初期段階で、必ず役所の担当課(都市計画課など)に相談します。土地の状況や建築計画を伝え、指定区域の対象となるか、どのような手続きが必要かを確認します。この段階で問題点を洗い出しておくことが非常に重要です。
- 開発許可申請:「開発許可」の申請先は、都道府県または市町村となります。自治体によって管轄や手続き、必要書類が異なるため、事前相談の際に必ず確認が必要です。測量図や設計図など、多くの専門的な書類が必要となります。
- 建築確認申請:開発許可が下りたら、次に建築基準法に基づき、建物の設計が法律に適合しているかどうかの「建築確認」を申請します。
- 工事着工・完了検査::建築確認が下りると、いよいよ工事を始めることができます。建物が完成したら、図面通りに建てられているかどうかの完了検査を受け、合格すれば入居可能となります。
このように、多くの段階を経て許可を得る必要があります。一つひとつの手続きに時間もかかりますので、余裕を持った計画を立てることが大切です。

まとめ:まずはご自身の土地の状況確認から
この記事では、市街化調整区域に家を建てるための「指定区域」制度について解説しました。
この制度は、市街化調整区域であってもマイホームを実現できる可能性を秘めたものですが、2022年の法改正により、その適用は以前より厳しくなっています。特に災害リスクのあるエリアは対象から外れるなど、状況は大きく変化しています。
したがって、まず行うべきことは、ご自身が建築を考えている土地について、管轄の自治体に「現在も指定区域の対象となっているか」を直接確認することです。これが、すべての計画のスタートラインとなります。
開発許可の申請手続きは、専門的な知識や書類作成が求められ、複雑に感じられるかもしれません。開発許可申請や条例の確認などでお困りの際は、行政書士がサポートできる場合があります。費用や具体的な業務範囲は案件によって異なりますので、まずはお気軽にご相談いただき、ご自身の状況に合ったサポート内容かをご確認ください。ご相談内容は、行政書士の守秘義務に基づき厳重に管理いたします。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
第1種農地の判定基準とは?農地の集団性の判断を行政書士が解説
なぜ「第1種農地」の判定が重要なのか
ご自身の所有する農地について、「この土地は将来、家を建てたり、駐車場にしたりできるのだろうか」と考えたことはありませんか。農地を農地以外の目的で利用することを「農地転用」と呼びますが、すべての農地で自由に転用が認められるわけではありません。
特に「第1種農地」は優良な農地として保護されており、原則として転用が許可されにくいとされています。ただし、公共性の高い事業に利用される場合などの例外規定や、農業振興地域からの除外といった手続きも制度として存在します。もし、将来的な土地活用の計画があったとしても、第1種農地であるという判定が、その計画の大きな障壁となる可能性があるのです。
この判定の中でも、特に判断が複雑で専門的な知識を要するのが「農地の集団性の判断」です。見た目では分かりにくく、様々な要因を総合的に考慮する必要があるため、多くの方が悩まれるポイントです。この記事では、第1種農地の判定基準、特にその鍵を握る「農地の集団性」について、専門家の視点から分かりやすく解説してまいります。
第1種農地と判定される3つの主な基準
農地が「第1種農地」に該当するかどうかは、主に3つの基準から総合的に判断されます。これらの基準は、その土地が日本の農業にとってどれだけ重要かを示す指標とお考えください。ここでは、その3つの基準の全体像を掴んでいきましょう。

基準1:10ヘクタール以上の「一団の農地」であること
まず最も重要な基準が、農地がまとまった広さを持っているかどうかです。具体的には、おおむね10ヘクタール(東京ドーム約2個分)以上の規模で農地が集まっている地域にある農地が、一つの目安とされています。ただし、これは絶対的な基準ではなく、最終的な判定は自治体などが集団性や土地の条件を総合的に評価して行います。
ここでポイントとなるのが「一団の農地」という言葉です。これは単に広いだけでなく、農地と農地が物理的につながり、一体として利用されている状態、つまり「農地の集団性」が高い状態を指します。この集団性がどのように判断されるかが、第1種農地の判定における最大の鍵となります。
基準2:土地改良事業などの対象となっていること
国や都道府県、市町村が税金を投入して、農業をしやすくするための工事(土地改良事業)を行った農地も、第1種農地に判定されやすくなります。
例えば、区画を整理して大型の機械が入りやすくする「圃場(ほじょう)整備」や、水を安定して供給するための「かんがい排水施設」の整備などがこれにあたります。公的な投資によって優良な農地として整備された経緯があるため、今後も農地として守っていく必要性が高いと判断されるのです。
基準3:高い生産能力が見込まれること
土地そのものが持つ能力、つまり「生産性」も重要な基準です。具体的には、以下のような条件を満たす農地が該当します。
- 傾斜が緩やかで、農作業がしやすいこと
- 土壌が良く、作物が育ちやすいこと
- 風水害などの自然災害の被害を受けにくい場所にあること
単に広いだけでなく、農地としての質が高く、安定して高い収穫量が見込める土地は、保護すべき優良な農地とみなされます。
【具体例で解説】農地の集団性の判断ポイント
ここからは、この記事の核心である「農地の集団性の判断」について、具体例を挙げて詳しく解説します。農地と農地の間に道路や川があった場合、それらは農地のまとまりを断ち切る「分断要因」と見なされるのでしょうか。それとも、一体の農地として扱われるのでしょうか。この見極めが非常に重要です。

「分断要因」と見なされるもの(集団性が失われるケース)
農地の一体性を失わせ、集団性を断ち切ってしまう「分断要因」と判断されやすいものには、以下のようなものがあります。
- 高速道路や国道、鉄道:これらは農業機械が自由に横断しにくく、農地を物理的にも機能的にも分断するため、分断要因とみなされやすい傾向にあります。ただし、近隣に橋や横断できる施設があるなど、営農上の一体性が保たれている実態があれば、総合的に判断されます。
- 幅の広い河川:橋が近くになく、簡単に行き来ができないような大きな川も、農地の一体性を損なう要因となる可能性が高いです。しかし、これも橋の有無や実際の営農状況などを踏まえ、総合的に判断されます。
- 恒久的な施設(庁舎、学校など):公的な建物や大規模な工場なども、農地の連続性を遮る明確な要因です。
これらの共通点は、「農業機械などが容易に横断できず、一体的な営農を妨げるもの」であるという点です。これらによって農地が分断されている場合、それぞれが別の「一団の農地」として扱われる可能性があります。
「分断要因」と見なされないもの(集団性が維持されるケース)
一方で、農地と農地の間を通っていても、必ずしも分断要因とはならないものもあります。
- 農道や里道:農業機械が日常的に通行し、横断も容易な細い道は、分断要因とはみなされないことが一般的です。しかし、道の幅や利用実態によっては判断が分かれることもあり、一体的な営農に不可欠な施設として扱われるかどうかは個別の状況によります。
- 小さな水路:農業用の小さな用水路や排水路も、農地の一体性を保つための施設であり、分断要因にはなりません。
- 畦畔(けいはん・あぜ):田んぼと田んぼを区切る「あぜ道」はもちろん分断要因ではありません。
これらのポイントは、「営農上の一体性が保たれているかどうか」という実態に即して判断されます。見た目だけで「道があるからダメだ」と安易に判断するのは禁物です。
判断が難しいケースと行政書士の視点
実際の現場では、手引き通りに判断できない複雑なケースが数多く存在します。ここでは、私たちが実務でよく遭遇する、判断が難しいケースとその考え方について解説します。農地制度に詳しい行政書士など、行政手続きの経験がある者による詳細な調査と分析が有益です。

ケース1:道路を挟んでいるが、耕作者が同じ場合
例えば、市道のような比較的小さな道路を挟んで、両側の農地を同じ方が耕作しているケースです。物理的には道路で分断されていますが、耕作者はトラクターで道路を横断し、両方の土地を一体のものとして管理・運営している実態があります。
このような場合、形式的には分断されていても、実際の営農状況を重視し、全体として「一団の農地」であると判断される可能性があります。農業委員会事務局との協議では、こうした利用実態を丁寧に説明することが重要になります。
ケース2:農地の間に宅地や山林が点在している場合
広大な農地地帯の中に、ぽつんぽつんと住宅や小さな山林が混在しているケースもよく見られます。この場合、これらの宅地や山林の規模や配置によって「農地の集団性の判断」が大きく変わってきます。
例えば、広大な田園風景の中に小さな農家住宅が一軒ある程度であれば、農地の集団性は維持されていると判断されるでしょう。しかし、宅地がいくつも連なっていたり、大きな雑木林が農地を隔てていたりすると、集団性が失われていると判断される可能性が高まります。明確な線引きが難しく、個別の状況に応じた専門的な判断が求められます。
ケース3:面積が10ヘクタールぎりぎりの場合
基準には「おおむね10ヘクタール」と書かれています。この「おおむね」という言葉が、判断を難しくさせる要因の一つです。
例えば、地図上で計測すると9.8ヘクタールだった場合、即座に基準を満たさないと判断されるわけではありません。周辺の農地の状況、土地改良事業の有無、生産性の高さなどを総合的に考慮し、実質的に10ヘクタールの一団の農地と遜色ない優良な農地であると認められれば、第1種農地と判定される可能性は十分にあります。逆に、10ヘクタールをわずかに超えていても、集団性が低いと見なされれば、第1種農地と判定されないこともあり得ます。条文の文言だけでなく、その背景にある趣旨を理解することが不可欠です。
専門家コラム:なぜ第1種農地の判定はこれほど厳しいのか
「なぜ自分の土地なのに、自由に利用できないのか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。第1種農地の制度は、日本の食料自給率を守るという、非常に重要な目的のために存在します。
一度、優良な農地を宅地や工場にしてしまうと、元の状態に戻すことはほぼ不可能です。特に、中山間地域などで先祖代々受け継がれてきた農地は、単なる資産であるだけでなく、地域の景観や文化、そして日本の食を支える大切な基盤です。
ご依頼者様のお気持ちに寄り添いながらも、こうした法制度の背景を丁寧にご説明し、ご自身の土地が持つ価値や可能性について、一緒に考えることを大切にしています。その上で、法律の範囲内で最善の道を探るお手伝いをさせていただいております。
第1種農地の判定でお悩みならご相談ください
ここまで解説してきたように、第1種農地の判定、とりわけ「農地の集団性」の判断は、非常に専門的で複雑です。道路の種類、土地の利用状況、周辺環境など、多くの要素を総合的に評価する必要があり、一般の方が正確に判断することは容易ではありません。
もし、ご自身の判断で「ここは第1種農地にはならないだろう」と考えて計画を進めてしまい、後から転用が不許可となってしまった場合、計画の見直しや、場合によっては工事の中止に伴う費用が発生するなど、予期せぬ事態につながる可能性も考えられます。
当事務所は、栃木県佐野市を拠点に、これまで農地に関するお手続きに携わってまいりました。特に、判断が難しいとされる中山間地域の農地手続きについても従事した経験がございます。第1種農地の判定に関するご不安や、農地転用の可能性についてお悩みでしたら、まずは一度ご相談ください。
ご依頼者様のお話をじっくりと伺い、現地の状況を丁寧に調査した上で、最善の方法を一緒に考えさせていただきます。どんな些細なことでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
農振除外の6要件とは?行政書士がわかりやすく解説
農振除外とは?まず知っておきたい基本
「自分の持っている畑に、子どものための家を建てたい」「事業を始めるために倉庫が必要になった」など、ご自身の土地の活用を考えたとき、その土地が「農用地区域」という特別なエリアに含まれている場合があります。この場合、目的を達成するためには「農振除外(のうしんじょがい)」という手続きが必要になります。
言葉だけ聞くと難しそうに感じるかもしれませんが、ご安心ください。ここでは、農振除外の基本的な考え方から、わかりやすくご説明します。
なぜ「農振除外」の手続きが必要なの?
日本には、食料を安定して作り続けるために、特に優良で、これからも農業のために大切にしていくべき農地があります。国や市町村は、こうした選りすぐりの農地を「農用地区域」に指定し、日本の農業の土台として守っています。
この「農用地区域」は、いわば“農業のための聖域”のようなものです。そのため、原則として農業以外の目的で利用することはできません。しかし、社会情勢の変化や個人のやむを得ない事情も存在します。そこで、どうしても他の方法がなく、厳格な条件をすべて満たした場合に限り、特別に「農用地区域」の指定から外してもらう手続きが認められています。これが「農振除外」です。
この手続きは、日本の農業の根幹を守りつつ、個別の事情にも配慮するための、非常に重要な制度なのです。
「農用地区域(青地)」と「白地」の違い
農業振興地域の中の土地は、大きく2種類に分けられます。それが「農用地区域(青地)」と「それ以外の区域(白地)」です。
- 農用地区域(青地):前述の通り、農業の「特等席」ともいえる土地です。集団的に存在し、農業に適した条件が整っているため、今後も長期にわたって農業での利用が推奨されています。原則として、農地以外への転用はできません。家を建てたり、駐車場にしたりするには、まず農振除外の手続きが必要です。
- 白地(しろじ):農用地区域ではない土地のことです。こちらも農地であることに変わりはありませんが、青地に比べると規制が緩やかです。農地転用の許可を得られれば、他の目的に利用できる可能性があります。
ご自身の土地がどちらに該当するかによって、必要な手続きが大きく異なります。まずは、お持ちの土地が「青地」なのか「白地」なのかを市町村の担当窓口で確認することが、計画の第一歩となります。

【本題】農振除外の6つの要件をわかりやすく解説
農振除外を認めてもらうためには、法律(農業振興地域の整備に関する法律第13条第2項)で定められた、以下の6つの要件をすべて満たす必要があります。一つでも欠けてしまうと、原則として除外は認められません。ここでは、それぞれの要件が何を求めているのか、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。
要件1:他に代わりの土地がないこと(代替性)
これが最も重要で、かつ判断が難しい要件です。簡単に言うと、「その目的を達成するためには、農振除外をしようとしているその土地以外に、本当に他の土地はないのですか?」という問いに、客観的な証拠をもって答えなければなりません。
例えば、「自分の土地だから」「あちらの土地は価格が高いから」といった個人的な理由は、残念ながら認められません。農用地区域以外の土地(白地)や、すでに宅地になっている土地など、あらゆる可能性を検討し、それでも「この場所でなければならない」という特別な理由を具体的に示す必要があります。特に、計画地のあるエリアだけでなく、その周辺の地域も含めて代替地がないことを証明することが求められます。
要件2:地域計画の達成に支障がないこと
市町村では、地域の農業を将来どのように発展させていくかという「地域計画」を定めています。この計画には、「この地域では、みんなで協力して高品質な〇〇(作物名)のブランド産地を目指そう」といった目標が描かれています。
もし、農振除外を希望する土地が、その計画の中心的な場所に含まれている場合、除外することで計画の達成を妨げてしまう可能性があります。そのため、ご自身の計画が、地域の農業の未来図と調和するものであることが求められるのです。
要件3:農業上の利用に支障が少ないこと
これは、農地の集団性を壊さず、周りの農作業の効率を下げないようにするための要件です。例えば、広大な田んぼのど真ん中に一軒だけ家が建つとどうなるでしょうか。大型の農業機械が通りにくくなったり、家の影になって作物の生育に影響が出たり、農薬散布の際に気を使ったりと、周辺の農家の方々にとって多くの不都合が生じる可能性があります。
このような事態を避けるため、農振除外はできる限り農地の集団の端、つまり「農用地区域の周辺部」で行うことが望ましいとされています。この点が、計画を立てる上で非常に重要なポイントとなります。
要件4:担い手の農地利用に支障がないこと
地域には、農業を専門的に行い、その地域の農業を支えている「担い手」と呼ばれる方々(認定農業者など)がいます。もし、除外したい土地が、その担い手の方々が一体的に利用している農地の一部であった場合、その方の経営に直接的な影響を与えてしまうかもしれません。
地域の農業の担い手の活動を妨げないこと、その方の農地利用の計画を壊さないことも、大切な要件の一つです。
要件5:農業用施設の機能に支障がないこと
農地には、水を供給するための用水路や、余分な水を排出する排水路、農業機械が通るための農道など、農業に欠かせない施設がたくさんあります。これらの施設は、地域全体の農業を支える重要なインフラです。
農振除外をする計画によって、これらの用水路や農道の機能を損なうことがないか、慎重に確認する必要があります。例えば、計画によって水路が分断されたり、農道が使えなくなったりするようなことは認められません。
要件6:土地改良事業完了後8年が経過していること
区画整理(ほ場整備)など、国や県の補助金を使って行われた土地改良事業が完了した農地は、多額の公的資金が投じられています。これは、「今後も長く優良な農地として活用してください」という期待が込められているためです。
そのため、こうした事業が完了してから8年を経過していない土地は、原則として農振除外が認められません。ただし、特定の条件下では例外的に認められる場合もありますので、ご自身の土地が該当するかどうかは個別に確認が必要です。
【実務上の注意点】6つの要件は「パズルのピース」
農振除外の6つの要件は、それぞれが独立しているようで、実は密接に関連し合っています。例えば、「農用地区域の周辺部」の土地を選ぶことは、要件3(農業上の利用への支障)だけでなく、要件1(代替性)や要件4(担い手への影響)の証明にも繋がりやすくなります。
これらの要件を一つひとつクリアしていく作業は、まるで複雑なパズルのピースをすべて揃えるようなものです。法律の条文(農業振興地域の整備に関する法律第13条第2項第1号から第6号)をただ読むだけでは見えてこない、地域の実情や行政の考え方を踏まえた総合的な判断が求められます。地域の実情に応じた判断が必要ですので、まずは市町村の担当窓口で事前によく確認することが重要です。
具体例で見る「農用地区域の周辺部」が有利な理由
6つの要件の中でも、特に「どこに計画するか」は重要な要素です。行政がなぜ「農用地区域の周辺部」での計画を望ましいと考えるのか、具体的な例を挙げてご説明します。

【良い例】農用地区域の周辺部での計画
道路に面していて、農地が広がっているエリアの端に位置する土地。このような「農用地区域の周辺部」での計画は、比較的認められやすい傾向にあります。
<理由>
- 農地のまとまりを壊しにくい:農地の集団から少し外れた場所なので、農地の一体性を損なう影響が最小限で済みます。
- 周辺の農作業への影響が少ない:道路に直接アクセスできるため、工事車両や将来の生活車両が農道を通る必要がありません。また、日照や風通しへの影響も限定的です。
- インフラの接続が容易:水道や電気などの生活インフラを、既存の宅地から引き込みやすいという利点もあります。
このように、「農用地区域の周辺部」は、多くの要件を満たしやすい合理的な場所と言えるのです。
【難しい例】農地のど真ん中での計画
一方で、四方をすべて優良な農地に囲まれた、いわゆる「田んぼのど真ん中」での計画は、除外が非常に難しくなります。
<理由>
- 農地の分断:農地の集団性を著しく損ない、一体的な利用を不可能にしてしまいます。
- 周辺への悪影響:大型の農業機械の通行を妨げるだけでなく、生活排水が水路に流れ込む懸念や、農薬散布時に周辺農家が気を遣うなど、多くの問題を引き起こす可能性があります。
- アクセスの問題:その土地へ行くために、新たに道路を整備する必要が生じ、さらに他の農地を潰してしまうことにもなりかねません。
このような計画は、複数の要件を満たすことが困難であるため、許可を得るのは極めて難しいと言わざるを得ません。
農振除外が難しいケースと注意点
6つの要件を形式的に満たしているように見えても、申出の目的や計画の具体性によっては、農振除外が認められない場合があります。ここでは、特に注意すべき点をいくつかご紹介します。
転売目的や資産価値向上のための申出
農振除外は、あくまでご自身やご家族が利用するなど、やむを得ない具体的な必要性がある場合に認められる手続きです。「将来的に土地の価値が上がるかもしれないから」「除外して高く売りたい」といった、投機的な目的や単なる資産形成のための申出は、認められることはありません。
事業計画の具体性・緊急性がない場合
「いつか家を建てるかもしれない」「将来、何か事業を始めるかもしれない」といった、漠然とした計画では許可されません。なぜ今、その土地を転用する必要があるのかという「緊急性」と、資金計画や建物の図面など、計画が確実に実行されることを示す「具体性」が厳しく問われます。
除外が認められた後は、多くの自治体で、決定後一定期間内に計画に着手することが求められる場合があります。詳細は各自治体の担当窓口にご確認ください。すぐに実行できる、実現可能な計画であることが大前提となります。
申請すれば必ず許可されるわけではない
農振除外の手続きは、申出をすれば自動的に許可されるものではありません。市町村の農業委員会や関係各課、さらには県との間で慎重な協議が行われ、総合的に判断されます。
受付期間も年に1〜2回と限られている自治体が多く、申出から決定までには半年から1年以上かかることも珍しくありません。時間的な余裕を持ち、長期的な視点で計画を進めることが不可欠です。また、関連する手続きとして農地転用手続きは必要だが、開発行為許可申請は不要なケースについても考慮が必要な場合があります。

複雑な農振除外は行政書士への相談が近道です
ここまで農振除外の6つの要件についてご説明してきましたが、その手続きの複雑さや専門性の高さをご理解いただけたかと思います。
6つの要件をすべてクリアしていることを客観的な資料で証明し、行政機関と協議を重ねていくには、法律の知識はもちろん、地域の農業事情や行政の判断基準に対する深い理解が欠かせません。
弊事務所では中山間地域の案件にも対応しており、土地の条件が複雑で、より丁寧な計画と説明が求められるケースのご相談も承っております。
「自分の計画は要件を満たせるだろうか?」
「何から手をつけていいかわからない」
「手続きを進める時間がない」
もし、このようにお悩みでしたら、ぜひ一度、弊事務所にご相談ください。ご自身の判断で進めて時間と労力を費やした結果、計画が頓挫してしまうという事態を避けるためにも、最初の段階で行政書士の視点を取り入れることが、結果的に最も確実な近道となるはずです。
海事代理士・行政書士 中村光男事務所では、ご依頼者様のお話をじっくりと伺い、ともに最善の方法を考えます。どんな些細なことでも構いません。まずはお気軽なお気持ちで、農振除外に関する無料相談はこちらからお問い合わせください。状況をお伺いした上で、適切な手続きをご提案できるよう誠心誠意サポートいたします。

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小型船舶の相続手続きガイド|移転登録から費用まで解説
突然のことでお困りではありませんか?小型船舶の相続でまず知っておくべきこと
大切なご家族が亡くなられ、突然のことで何から手をつけていいか分からず、心身ともにお疲れのことと存じます。故人が大切にされていた小型船舶(ボートや水上オートバイなど)を相続されたものの、この先どうすればよいのか、不安な気持ちでいらっしゃるかもしれません。
不動産や預貯金とは少し異なり、船の相続手続きには専門的な知識が必要になる場面もあります。しかし、ご安心ください。一つひとつの手順を順番に進めていきば、決して難しいものではありません。
小型船舶の相続で必要となる手続きの流れや必要書類、費用について、できる限り分かりやすく、丁寧にご説明します。あなたの不安が少しでも軽くなるよう、お手伝いができれば幸いです。
相続した船、そのままにしていませんか?手続きを放置する3つのリスク
「今は気持ちの整理がつかないから」「手続きが面倒だから」と、相続した船の名義変更(移転登録)を後回しにしてしまうと、思わぬトラブルに繋がることがあります。ここでは、手続きをしないまま放置してしまうことの3つのリスクについてご説明します。

リスク1:法律上の義務違反となる可能性
名義変更(移転・変更・抹消等)の申請に関する期限は、手続の種類や事由によって異なります。例えば法令上、抹消登録の一部事由については事由発生日から15日以内の申請が規定されていますが、相続による移転登録を含む所有者変更全般に一律で「15日以内」が適用されるとは限りません。手続を怠った場合、法令に基づく罰則が適用される可能性があります。罰則の内容・上限は適用される手続や条文によって異なります。
もちろん、「知らなかった」という方も多くいらっしゃるでしょう。大切なのは、この事実を知った今、きちんと手続きを進めることです。
リスク2:事故やトラブルに巻き込まれる危険性
名義が故人のままになっていると、万が一、その船が事故を起こしたり、トラブルの原因になったりした場合に、大変な問題に発展する可能性があります。例えば、台風などで係留ロープが切れて船が流され、他の船や港の施設にぶつかって損害を与えてしまったケースを考えてみましょう。
この場合、船の所有者として登録されているのは故人ですが、その管理責任は相続人全員にあると見なされる可能性があります。つまり、相続人全員が損害賠償の責任を負うことになりかねないのです。名義変更は、こうした予期せぬリスクからご自身を守るためにも非常に重要です。
リスク3:将来の売却や処分が困難になる
「いつか売ろう」「そのうち処分しよう」と考えて手続きを先延ばしにすると、将来、その「いつか」が来たときに、さらに大変な手間がかかることがあります。
時間が経つうちに、相続人の誰かが亡くなってしまったり、連絡が取りにくくなったりすることもあるでしょう。そうなると、関係者がさらに増えてしまい、船を売ったり処分したりするために必要な全員の同意を取り付けることが、非常に難しくなってしまいます。相続の手続きは、関係者がはっきりしている今のうちに進めておくことが、将来の負担を軽くする一番の近道です。
小型船舶の相続手続き、全体の流れを4ステップで解説
それでは、具体的にどのような手順で手続きを進めていけばよいのでしょうか。ここでは、小型船舶の相続手続きの全体の流れを、大きく4つのステップに分けてご説明します。

ステップ1:誰が船を相続するのかを決める(遺産分割協議)
まず最初に行うことは、相続人の皆さん全員で話し合い、誰がその船を引き継ぐのかを決めることです。これを「遺産分割協議」と呼びます。
「妻が引き継ぐ」「船が好きな長女に」など、ご家庭の事情に合わせて話し合いを進めてください。この話し合いが、相続手続きの第一歩であり、最も大切な部分です。そして、話し合いで決まった内容は、遺産分割協議書を作成し相続人全員が署名押印するのが一般的です。
ステップ2:移転登録に必要な書類を集める
誰が船を相続するかが決まったら、次に名義変更(移転登録)に必要な書類を集めます。特に相続の場合は、普段あまり目にしない書類も必要になるため、少し時間に余裕をもって準備を始めましょう。
主に必要となるのは、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本、そしてステップ1で作成した遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などです。これらの多くは、市区町村の役場で取得できます。
ステップ3:申請書を作成し、手数料を支払う
必要書類がすべて揃ったら、次に申請書を作成します。申請書は日本小型船舶検査機構のウェブサイトからダウンロードできます。ダウンロードのほか、手数料の振込先や提出先(担当支部)・提出方法(窓口持参や郵送の可否)は日本小型船舶検査機構の各手続ページで最新の案内を確認してください。
また、手数料は「移転登録 2,950円(登録手数料)」です。支払方法は日本小型船舶検査機構の案内に従い、原則として郵便局または指定銀行への振込で納付してください。
ステップ4:日本小型船舶検査機構の窓口へ書類を提出する
作成した申請書と、集めたすべての必要書類を揃えて、お近くの本部・支部案内 | 日本小型船舶検査機構の窓口に提出します。窓口に直接持っていくのが困難な場合は、郵送での手続きも可能です。
書類に不備がなければ、後日、新しい所有者の名前が記載された船舶検査証書などが交付され、これで一連の相続手続きは完了となります。このゴールを目指して、一つずつ着実に進めていきましょう。
【一覧】小型船舶の相続(移転登録)に必要な書類と費用
ここでは、手続きに必要な書類と費用について、一覧で分かりやすくまとめました。実際に手続きを進める際のチェックリストとしてご活用ください。
相続の状況によって変わる「必要書類リスト」
遺言書があるかないかなど、状況によって必要書類は少し異なります。ここでは、遺言書がない一般的な相続のケースで必要な書類をリストアップします。
| 書類の種類 | どこで取得・作成する? | 備考 |
|---|---|---|
| 移転登録申請書 | 日本小型船舶検査機構の窓口やウェブサイト | 新しい所有者が記入します |
| 手数料納付書 | 日本小型船舶検査機構の窓口やウェブサイト | 申請書を提出する前に郵便局または銀行からお振込み |
| 被相続人(故人)の出生から死亡までの戸籍謄本 | 市区町村の役場 | 相続人を確定するために必要です |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 市区町村の役場 | |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員で作成 | 相続人全員の署名と実印での押印が必要です |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 市区町村の役場 | 発行から3ヶ月以内のもの |
| 新所有者の住民票 | 市区町村の役場 | 発行から3ヶ月以内のもの |
| 船舶検査証書 | 船に備え付け | 船の車検証のようなものです |
| 船舶検査手帳 | 船に備え付け | 船の記録簿のようなものです |
※事案によっては、上記以外の書類が必要になる場合もあります。

手続きにかかる費用の内訳
手続きにかかる費用は、大きく分けて「日本小型船舶検査機構に支払う手数料」と「書類の取得費用」の2つです。
- 登録手数料(実費):2,950円(移転登録)
- 書類取得費用(実費):戸籍謄本・住民票・印鑑証明書などの取得費用は市区町村によって異なります。多くの自治体では戸籍謄本が概ね数百円台(例:約450円)で、住民票・印鑑証明も数百円台が目安ですが、正確な金額は各市区町村の窓口や公式サイトで確認してください。複数通必要になる場合が多いので、合計で数千円程度を見込むのが一般的です。
- 専門家への報酬:手続きを専門家に依頼する場合は、別途報酬が必要になります。費用は事務所によって異なりますので、事前に見積もりを取ることをお勧めします。
船を使わない場合はどうする?相続後の3つの選択肢
相続した船を、必ずしもご自身で乗り続ける必要はありません。「維持管理が大変そうだ」「誰も乗る人がいない」といった場合には、他の選択肢も考えられます。
選択肢1:名義変更して乗り続ける、または維持する
まずは、これまでご説明してきた通り、相続人の方の名義に変更して、故人の思い出と共に船を大切に乗り続ける、あるいはご自身で所有し続けるという選択肢です。ただし、船にはマリーナの保管料や保険料、定期的なメンテナンス費用といった維持費がかかることを念頭に置いておく必要があります。

選択肢2:売却して現金化する
もし船に乗る方がいないのであれば、売却するというのも一つの有効な方法です。この場合、一度、相続人の名義に移転登録をしてから、買主へさらに移転登録するという流れが一般的です。中古艇の売買を専門に扱う業者に相談すれば、査定から買い手探しまで手伝ってもらえます。維持費の負担がなくなると同時に、売却による収入を得られる可能性があります。
選択肢3:廃船(解体・処分)する
船がかなり古い、あるいは故障していて買い手が見つからない、といった場合には、廃船(はいせん)という選択肢もあります。これは、船を解体・処分し、登録を抹消する手続きです。ただし、船の解体には専門の業者に依頼する必要があり、大きさにもよりますが数十万円単位の費用がかかる場合があります。最終手段として考えておくとよいでしょう。
手続きが複雑で難しいと感じたら、専門家への相談も一つの方法です
ここまで小型船舶の相続手続きについてご説明してきましたが、「戸籍を集めるのが大変そう」「遺産分割協議書の作り方が分からない」「平日に役所や日本小型船舶検査機構に行く時間がない」など、ご自身で手続きを進めることに不安や難しさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そのようなときは、行政書士にご相談いただくのも一つの大切な選択肢です。
当事務所の代表は海事代理士および行政書士の資格を保有しており、日本小型船舶検査機構への移転登録手続や戸籍収集、遺産分割協議書の作成支援など、行政書士・海事代理士の範囲内の手続を一括で請け負うことが可能です。※裁判代理等、行政書士の業務範囲外の手続については弁護士等へご案内します。
特に、ご高齢でご自身で動くのが難しい方や、相続人が遠方にお住まいで手続きがなかなか進まないといったケースでは、専門家がお手伝いすることで、ご負担を大きく減らすことができます。ご自宅や入所されている施設への出張相談も承っておりますので、ご安心ください。
ただ手続きを代行するだけではありません。ご家族の想いに寄り添い、何が最善の方法なのかを一緒に考えさせていただきます。小型船舶の相続でお困りでしたら、小型船舶移転手続きの業務もご覧いただき、ぜひ一度、当事務所の無料相談をご利用ください。
どんな些細なことでも構いません。あなたの不安な気持ちを、まずはお聞かせください。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
山林化した農地の非農地証明|願出方法から却下時の対策まで解説
「どうすれば…」山林化した農地でお悩みのあなたへ
「先祖から受け継いだ土地が、いつの間にか木々が生い茂る山林になってしまった…」
「管理もできず、毎年固定資産税だけがかかって負担になっている」
「このまま放置していいのだろうか…」
そんなふうに、管理できなくなった農地のことで、一人で頭を抱えていらっしゃいませんか。どうしていいか分からず、不安な気持ちでいっぱいかもしれませんね。
でも、ご安心ください。そのお悩みを解決する一つの方法として「非農地証明(ひのうちしょうめい)」という手続きがあります。
この記事では、山林化してしまった農地をどうにかしたいとお考えのあなたのために、
- そもそも非農地証明ってどんな制度?
- 手続きをするメリットとデメリットは?
- どうやって申請すればいいの?具体的な流れは?
- もし申請が認められなかったら、どうすればいい?
といった疑問に、一つひとつ丁寧にお答えしていきます。専門用語は使わず、分かりやすい言葉で解説しますので、役所の手続きが苦手な方も心配いりません。この記事を読み終える頃には、きっと次の一歩をどう踏み出せばよいか、道筋が見えているはずです。
そもそも非農地証明とは?わかりやすく解説
「非農地証明」と聞いても、ピンとこない方がほとんどだと思います。
これは一言でいうと、「見た目はもう畑や田んぼではないのに、書類上(登記簿)は農地のままになっている土地について、そのズレを農業委員会事務局に正式に認めてもらう手続き」のことです。
土地には「農地法」という法律があり、農地は容易に売ったり、家を建てたりできないように守られています。しかし、長年放置されて木が生い茂り、どう見ても農地として使えない状態になっているのに、書類上は「農地」のままだと、この法律の制限を受け続けてしまいます。
そこで、非農地証明をもらうことで「この土地はもう農地ではありませんよ」とお墨付きをもらい、農地法の制限から外してもらうのです。これにより、土地の売買や活用がしやすくなります。

どんな土地が対象になるの?3つの主なケース
では、具体的にどんな土地が非農地証明の対象になるのでしょうか。主なケースは以下の3つです。
- 自然災害で元に戻せなくなった土地
大雨で土砂が流れ込んだり、川の氾濫で石や砂利だらけになったりして、農地として復旧することが非常に難しくなったケースです。 - もともと農地として使えない土地
昔の測量ミスなどで、書類上は農地になっているけれど、実際は岩だらけの土地や急な斜面で、はじめから作物が育てられないようなケースです。 - 長年放置され、山林や原野のようになってしまった土地
今回のテーマである「山林化」した農地がこれにあたります。長年(目安として20年以上)の間耕作されずに放置され、農地に復元することが著しく困難な場合が対象となります。具体的な年数などの基準は自治体により異なるため、事前に農業委員会で確認してください。
ご自身の土地がこれらのどれかに当てはまるかもしれない、と感じたら、非農地証明を検討する価値があるでしょう。
非農地証明のメリット・デメリットを天秤にかける
「自分の土地も対象になりそうだけど、本当に願出した方がいいのかな?」と迷われる方もいらっしゃるでしょう。ここでは、非農地証明のメリットとデメリットを比べて、ご自身の状況に合うかどうかを判断するお手伝いをします。
メリット:土地活用の可能性が広がる
非農地証明を取得する主なメリットは、以下の3つです。
- 自由に売ったり貸したりしやすくなる
農地法の制限がなくなるため、農業をする人以外にも土地を売ったり貸したりできるようになります。「売りたいけど買い手が見つからない」という悩みが解決しやすくなります。 - 家を建てるなど、土地の使い道が広がる
農地でなくなれば、自分の家を建てたり、駐車場にしたりと、土地の利用方法が格段に広がります。土地活用の道が開けるのは大きなメリットです。 - 地目変更等に伴い評価が変わる可能性があり、結果として固定資産税が下がることもあれば上がることもあります。税額の変動は自治体の評価次第なので、市区町村の資産税担当窓口で確認してください。
土地の評価額は状況によって変わりますが、一般的に「宅地」や「雑種地」などと比べて「山林」の評価は低くなる傾向があります。そのため、地目が山林などに変わることで、固定資産税が安くなる可能性があります。
デメリット:知っておくべき注意点
一方で、申請する前に知っておくべき注意点もあります。
- 農地としての税金の優遇がなくなる場合がある
もし、その土地が農業のための税金の優遇措置(例えば、相続税の納税猶予など)を受けていた場合、非農地証明によってその優遇が受けられなくなる可能性があります。 - 一度証明されると、農地に戻すのは難しい
「やっぱりまた農業を始めたい」と思っても、一度「農地ではない」と証明されると、再び農地として扱うのは非常に難しくなります。将来的な計画も考えて判断することが大切です。 - 申請しても必ず認められるわけではない
書類を提出しても、現地の状況などから「まだ農地に戻せる可能性がある」と判断されれば、証明が認められない(却下される)こともあります。
これらのメリット・デメリットをよく考え、ご自身の土地を将来どうしたいのかを想像しながら、申請するかどうかを決めましょう。
非農地証明の申請方法と5つのステップ
「よし、申請してみよう」と決めた方のために、ここからは具体的な手続きの流れを5つのステップに分けて解説します。この通りに進めれば、手続きの全体像が掴めるはずです。

ステップ1:まずは農業委員会事務局へ「事前相談」
何よりも、まず最初に行うべきことは、あなたの土地がある市町村の農業委員会へ相談に行くことです。これは非常に重要です。
なぜなら、非農地証明の細かいルールや必要な書類は、自治体によって少しずつ違うからです。自己判断で書類を集め始める前に、必ず専門の窓口で確認しましょう。
相談に行く際は、
- 土地の場所がわかる地図(住宅地図のコピーなど)
- 土地の登記情報がわかるもの(権利証や固定資産税の納税通知書など)
を持っていくと、話がスムーズに進みます。「この土地が山林化して困っているのですが、非農地証明の対象になりますか?」と正直に相談してみましょう。
ステップ2:必要書類を集める
事前相談で確認した内容をもとに、必要な書類を集めます。一般的には、以下のような書類が必要になることが多いです。
- 非農地証明願(申請書):農業委員会の窓口でもらえます。
- 土地の登記簿謄本(登記事項証明書):法務局で取得します。
- 地図(公図、案内図など):法務局や市役所、インターネットなどで取得します。
- 土地の現況写真:土地全体の様子や、木々が生い茂っている状況がよく分かる写真を何枚か撮ります。
- 長年、農地でなかったことを示す証拠:昔の航空写真などが有効な場合があります。これは自治体によっては図書館や国土地理院などで手に入ることがあります。
繰り返しになりますが、必ず事前相談で「あなたのケースで必要な書類」を確認してから集めるようにしてください。
ステップ3以降の流れ:申請書の提出から交付まで
書類がすべて揃ったら、農業委員会の窓口に提出します。その後の大まかな流れは以下の通りです。
- 現地調査:農業委員会の担当者や農業委員が、実際に土地を訪れて「本当に農地ではない状態か」を確認します。
- 審査:農業委員会の会議(総会)で、提出された書類と現地調査の結果をもとに、証明を認めるかどうか話し合われます。
- 証明書の交付:無事に審査が通れば、非農地証明書が交付されます。
交付までの期間は自治体や事案により異なります(願出書を提出した後に開催される農業委員会総会後)。各自治体の審議スケジュールや現地調査の有無によって変わるため、事前相談時に所要期間を確認してください。焦らずに連絡を待ちましょう。
もしも非農地証明願が却下されたら?3つの対策
多くの方が一番心配されるのが、「もし申請が認められなかったらどうしよう…」ということだと思います。万が一、非農地証明願が却下されてしまっても、道が閉ざされたわけではありません。落ち着いて、次の3つの対策を考えましょう。

対策1:却下の理由を確認し、再申請を検討する
まずは、なぜ却下されたのか、その理由を農業委員会に詳しく聞くことが大切です。「書類が足りなかった」「写真だけでは長年放置されていた証拠として不十分だった」など、理由がはっきりすれば、対策の立てようがあります。
もし、指摘された点を改善できるのであれば、書類を整え直したり、追加の証拠を集めたりして、再願出に対応していただける可能性があります。諦めずに、まずは却下の理由を正確に把握しましょう。
対策2:農地転用の手続きに切り替える
非農地証明が「現状、もう農地ではない」ことを認めてもらう手続きであるのに対し、「農地転用」という別の手続きがあります。
これは、「今は農地だけれど、これから家を建てるために使わせてほしい」というように、農地を別の目的で使うための許可をもらう手続きです。具体的な利用計画がある場合は農地転用の手続きを検討できますが、都市計画や開発許可の要否など複数の要因で可否が決まるため、事前に自治体や専門家に個別相談してください。
非農地証明がダメでも、農地法関連(農地転用等)業務という別の道があることを覚えておきましょう。
対策3:専門家に相談し、別の解決策を探る
却下理由が複雑だったり、自分でどうすればいいか判断に迷ったりしたときは、私たちのような行政書士にご相談いただくのが有効な選択肢です。
専門家であれば、
- 却下された理由を法的な視点から分析し、再願出の可能性を探る
- 農地転用など、他の手続きの方が適していないか判断する
- そもそも売却や貸し出しなど、あなたにとって一番良い解決策は何かを一緒に考える
といったお手伝いができます。一人で抱え込まず、専門家の知恵を頼ることも考えてみてください。
手続きは専門家へ。中山間地域の実績豊富な当事務所にご相談を
ここまで、山林化してしまった農地の非農地証明について、メリット・デメリットから申請の流れ、万が一の対策までお話ししてきました。
手続きの全体像はご理解いただけたかと思いますが、実際に自分で書類を集め、役所とやり取りをするのは、時間も手間もかかり、精神的な負担も大きいものです。
特に、弊事務所がある栃木県のような中山間地域では、土地の境界が曖昧だったり、状況が複雑だったりと、判断が難しいケースが少なくありません。
行政書士からのワンポイントアドバイス
市街化調整区域や都市計画区域外の農地を、農地以外の用途(駐車場や資材置き場など)として20年以上使っていることが客観的に認められる場合、非農地証明の手続きが認められることがあります。
ただし、これはあくまで行政サービスの一環であり、自治体によっては取り扱いがない場合もあります。また、都市計画法の開発許可など、別の手続きが必要になるケースもあるため、まずは専門家にご相談いただくのが確実です。
当事務所は、中山間地域の農地手続きに対応しております。ご状況を丁寧にお伺いし、非農地証明が最善なのか、あるいは別の方法が良いのか、あなたにとって一番良い解決策を一緒に考えさせていただきます。詳しい実績は面談時にご説明いたします。
「何から手をつけていいか分からない」、「役所に相談に行くのが不安だ」
そんな時は、どうぞお気軽に当事務所にご連絡ください。初回のご相談は無料です(初回30分まで、電話または面談いずれか1回)。あなたのお悩みが少しでも軽くなるよう、誠心誠意サポートいたします。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
農地改良の事前協議は必要?手続きと不要なケースを解説
「自分の農地、勝手に土を入れても大丈夫?」その不安、解消します
「うちの畑は水はけが悪いから、少し土を入れて高くしたいな」「田んぼをやめて、野菜を育てられる畑にしたい」。ご自身の農地をより良く活用したい、そのお気持ち、とてもよく分かります。
でも、その一方で、「勝手に農地に土を入れてしまって、後から何か言われたらどうしよう…」「手続きが必要らしいけど、何から手をつけていいか分からない」といった不安を抱えていらっしゃいませんか?
大切な農地だからこそ、正しい手順を踏んで、安心して改良したいものですよね。この記事では、農地改良、特に土を入れる「盛土(もりど)」をお考えのあなたのために、どんな場合に手続きが必要で、どのような流れで進めていけば良いのかを、専門用語をできるだけ使わずに、一つひとつ丁寧に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、あなたの疑問や不安が解消され、「何をすべきか」が明確になっているはずです。安心して、あなたの大切な農地づくりの第一歩を踏み出しましょう。
そもそも「農地改良」と「事前協議」って何?
手続きの話に入る前に、少しだけ言葉の整理をさせてください。「農地改良」や「事前協議」と聞くと、なんだか難しそうに感じてしまいますが、ご安心ください。一つひとつの意味が分かれば、決して難しい話ではありません。
農地改良とは?農地転用との違い
まず、よく似た言葉に「農地転用」というものがあり、ここで混乱してしまう方が多くいらっしゃいます。この二つの違いをはっきりさせておきましょう。
- 農地改良:これからも「農地」として使い続けるために、土地の状態を良くすることです。田んぼに土を入れて畑にする等の形状変更は、農業を継続する目的であれば農地改良(届出や協議)に該当する場合があるが、届出の要否や基準(高さ、搬入土量、成分等)は自治体ごとに異なるため、事前に農業委員会に確認してください。
- 農地転用:「農地」を、農地以外のもの(駐車場、住宅、資材置場など)に変えてしまうことです。
今回のテーマである盛土は、これからも農業を続けるためのものであれば「農地改良」、家を建てるためなどの目的であれば「農地転用」となり、全く別の手続きが必要になります。まずは、ご自身の計画がどちらに当てはまるかを確認することが大切です。
なぜ農業委員会との「事前協議」が必要なの?
「これからも農地として使うのだから、自分の土地だし、自由にやらせてほしい」と思われるかもしれません。しかし、農業委員会との「事前協議」には、大切な理由があります。もし、何のルールもなく、みんなが自由に農地を工事してしまったらどうなるでしょうか?
- ある人が大量に盛土をしたせいで、大雨が降った時に隣の田んぼに水が流れ込んでしまった…。
- 建設現場から出た質の悪い土を使ったら、作物が育たない土地になってしまった…。
- 工事のトラックが狭い農道に頻繁に出入りして、周りの農家さんの迷惑になってしまった…。

このようなトラブルを防ぎ、優良な農地を将来にわたって守り、地域の人たちが気持ちよく農業を続けられるようにするために、事前に「こんな計画で工事をしますよ」と農業委員会に相談し、確認してもらうのが「事前協議」の役割なのです。
あなたの農地改良に事前協議は必要?判断基準をチェック
それでは、具体的にどのような場合に事前協議が必要になるのでしょうか。ここが一番知りたいポイントですよね。自治体によって細かな基準は異なりますが、一般的な判断基準をご紹介します。
原則、事前協議が必要になるケース
一般に、外部から土を搬入して盛土を行う場合は農業委員会への事前相談・協議が求められることが多いですが、最終的な要否や必要書類は市町村ごとに定められているため、必ず該当自治体の農業委員会へ事前確認してください。
外部搬入土は、有害物質や土質(pH・有機物等)の検査、搬入元の明示、発生土の性状報告などの提出を求められる場合があります。建設発生土を用いる場合は特に検査書類の準備が必要となる可能性が高いため、事前に確認・検査を行ってください。
「自分の場合はどうだろう?」と迷ったら、「外部から土を持ってくるなら、まずは相談が必要」と考えておくと間違いがないでしょう。
事前協議が「不要」または「届出」で済む場合の条件
一方で、すべての農地改良に厳格な手続きが必要なわけではありません。以下のようなケースでは、事前協議が不要、あるいは簡単な届出で済むことがあります。
- 耕うん(こううん)の範囲内とみなされる行為
トラクターなどで農地を耕す際に、同じ農地内のでこぼこをならすために土を少し移動させる、といった程度であれば手続きは不要です。 - ごく小規模な改良
自治体の基準によりますが、「盛土の高さが〇cm未満」「面積が〇㎡未満」「工事期間が〇日以内」といった、ごく小規模な改良であれば、簡単な届出だけで済む場合があります。
ただし、これらの基準は本当に自治体ごとに様々です。「許可がいらない場合もあるんだな」ということを知っておきつつも、最終的にはご自身の農地がある市町村の農業委員会に確認するのが最も確実です。
要注意!「盛土規制法」との関係
宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)は令和5年(2023年)5月26日施行で、一定規模(例:崖の高さや盛土の高さ・面積等)の盛土は都道府県知事等の許可・届出対象になるため、盛土を計画する際は自治体の規制区域・基準を確認してください。
農地改良のための盛土であっても、一定の高さを超える崖ができる場合や、大規模な工事になる場合などは、この盛土規制法の許可も必要になる可能性があります。
農地法だけでなく、安全のための新しいルールも関係してくる場合がある、ということを頭の片隅に置いておいてください。
参考:「宅地造成及び特定盛土等規制法」(通称「盛土規制法」)について
農地改良の事前協議、手続きの流れと必要書類
事前協議が必要だと分かった場合、どのような流れで手続きを進めていくのでしょうか。ここでは、一般的な手続きのステップと、準備すべき書類について解説します。

ステップ1:農業委員会への相談と事前協議書の提出
最初の一歩は、計画の段階で、まず農業委員会の窓口へ相談に行くことです。正式な書類を出す前に、「実は、ここの農地でこういうことを考えているのですが…」と話をしにいくのです。
その際、以下のものを持っていくと話がスムーズに進みます。
- 場所がわかる地図(住宅地図のコピーなど)
- 計画の簡単なメモ(どの様な土を、どれくらい、どの様な目的で盛土したいか)
- 農地の現在の写真
窓口で相談することで、ご自身の計画に必要な手続きや書類の種類、注意点などを具体的に教えてもらえます。その後、自治体のウェブサイトなどから「農地改良事業計画事前協議書」といった様式の書類を入手し、必要事項を記入して提出します。
ステップ2:工事計画と添付書類の準備
事前協議書とあわせて、計画の詳細を示すための書類を準備します。一般的に、以下のような書類が必要になります。
| 書類名 | 内容・目的 |
|---|---|
| 位置図・案内図 | 農地の場所を示す地図です。 |
| 公図(こうず)の写し | 法務局で取得できる、土地の区画や地番を示す図面です。 |
| 土地の登記事項証明書 | 土地の所有者などを証明する書類です。 |
| 計画図(平面図・断面図) | 工事前と工事後の土地の高さや形状がどう変わるかを示す図面です。 |
| 隣接農地所有者等の同意書 | 工事によって影響を受ける可能性のある、お隣の土地の方からの同意書です。トラブル防止のために非常に重要です。 |
| 搬入する土の発生場所や成分を証明する書類 | 安全な土であることを確認するための書類です。 |
特に「隣接農地所有者等の同意書」は、円満に計画を進めるための鍵となります。事前に計画をきちんと説明し、理解を得ておくことが大切です。
ステップ3:工事の開始と完了報告
農業委員会での審査が終わり、計画に問題がないと確認が取れれば、いよいよ工事を開始できます。そして、工事が計画通りに完了したら、「終わりました」という報告(完了届)を提出するのを忘れないようにしましょう。
完了届には、工事後の写真などを添付することが一般的です。この報告をもって、一連の手続きがすべて完了となります。
もし無断で農地改良をしたら?知っておくべきリスク
「手続きは面倒だし、こっこりやってしまえばバレないのでは?」…そんな風に考えてしまう気持ちも分からなくはありません。しかし、その安易な判断が、将来的に大きなトラブルを招く可能性があります。専門家の立場から、知っておいていただきたいリスクをお伝えします。
農地法違反による罰則の可能性
無断で行った盛土が、実質的に農地を潰してしまう行為(農地転用)だと判断された場合、農地法違反に問われる可能性があります。
その場合、農業委員会から工事の中止命令や、元の状態に戻すようにという原状回復命令が出されることがあります。これらの命令に従わないと、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下の罰金)という重い罰則が科されることもあります。(農地法の規定に基づく罰則で、違反転用や原状回復命令違反に適用される。詳細は農地法第64条等を参照)
近隣トラブルや将来の売却・相続への影響
法的なリスクだけではありません。無計画な盛土は、お隣の農地への水の流れを変えてしまったり、日当たりを悪くしてしまったりと、ご近所トラブルの直接的な原因になります。一度こじれてしまうと、その後の関係修復は非常に困難です。
また、手続きが正しく行われていない農地は、将来、売却しようとしても買い手がつかなかったり、子どもたちに相続させようとしたときに問題が発覚したりするケースもあります。資産として価値が下がってしまうのです。
「あの時、ちゃんと手続きしておけばよかった…」と後悔しないためにも、ルールに沿って進めることが、あなた自身とあなたの大切な農地を守ることにつながります。
手続きの不安は専門家へ。行政書士に相談するメリット
ここまで読んでみて、「やっぱり手続きは複雑で難しそう…」「自分一人でやるのは不安だ」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。そんなときは、私たち行政書士は、許認可・届出の手続きに関する支援を行う有資格者です。農地手続きに関する書類作成や役所対応の代行を希望される場合はご相談ください。
複雑な書類作成や役所とのやり取りを任せられる
行政書士にご依頼いただく一番のメリットは、時間と手間のかかる書類作成や役所との折衝などの手続きの代行・サポートを行い、手続きの円滑化を図ることが期待できる点です。図面の作成や同意書の取り付けなど、専門的な知識や経験が必要な場面でも、スムーズに手続きを進めることができます。
これにより、あなたは面倒な手続きに煩わされることなく、本業やお仕事、日々の暮らしに集中していただくことが可能です。
あなたの計画に最適な手続きを提案してもらえる
ご自身の計画が、本当に「農地改良」の届出で済むのか、それとも「一時転用」などの別の許可が必要なのか、専門家でなければ判断が難しいケースも少なくありません。
私たちは、あなたの計画内容を丁寧にお伺いした上で、法律や条例に基づき、最も適切でスムーズな手続きの方法をご提案します。思い込みで誤った手続きを進めてしまい、後からやり直しになる、といったリスクを避けることができます。
特に当事務所は、中山間地域の農地手続きの相談経験があります。一つひとつの案件に誠実に向き合い、ご相談者様と一緒に最善の方法を考えることを大切にしています。
農地改良の手続きで不安があれば、ご相談を承ります。手続き・書類作成の支援や役所との調整を行い、可能な範囲でサポートいたします。まずはお住まいの自治体の農業委員会の確認結果をお持ちください。
農地改良の手続きに関するご相談はこちら(※ご相談の前に、リンク先のサービス内容、料金、対応範囲等をご確認ください。)

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
海技士国家試験の必要書類を解説、申請・書き方・注意点
海技士試験の書類準備、何から始めれば…?ご安心ください
「海技士になるぞ!」と決意したものの、いざ受験の準備を始めると、たくさんの書類の山に圧倒されていませんか?「どの書類が自分に必要なの?」「書き方はこれで合っているのかな…」と、専門用語が並んだ手引きを前に、不安な気持ちでいっぱいになっているかもしれませんね。
でも、ご安心ください。そのお気持ち、とてもよく分かります。初めての挑戦は、誰だって戸惑うものです。
この記事では、海技士国家試験の受験に必要な書類について、まるで隣で一緒にお手伝いしているかのように、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を最後まで読み終える頃には、「なんだ、意外と簡単だった!」と思っていただけるはずです。
さあ、一緒に書類準備の第一歩を踏み出しましょう。
まずは全体像を把握、海技士試験の申請書類一覧
何事も、まずは全体像をつかむのが成功への近道です。ここでは、海技士国家試験の申請に必要な書類を一覧にしました。「自分にはどの書類が必要なのか」をチェックしてみてくださいね。
書類は大きく分けて、「全員が必ず用意する書類」と、「あなたの状況によって必要になる書類」の2種類があります。
【全員必須】基本となる申請書類セット
まずは、受験する方全員が準備する書類です。これらは申請の基本セットとなります。
| 書類の名前 | どんな書類? | どこで手に入る? |
|---|---|---|
| 海技試験申請書(第10号様式) | 受験を申し込むためのメインの書類です。 | 運輸局の窓口、または国土交通省のHPからダウンロード |
| 受験票 | 試験当日に必要になる大切な票です。写真を貼ります。 | 運輸局の窓口、または国土交通省のHPからダウンロード |
| 手数料納付書 | 受験手数料(収入印紙)を貼るための台紙です。 | 運輸局の窓口、または国土交通省のHPからダウンロード |
| 戸籍抄本 または 本籍地記載の住民票 | 本人確認のための公的な証明書です。有効期間は手続きや管轄によって異なるため、発行日からの有効期間は管轄の地方運輸局の最新案内に従ってください。一般的には申請日前3〜6か月以内の発行が求められることがあるため、必ず事前に確認しましょう。 |
【条件による】あなたに必要な追加書類は?
次に、受験する試験の種類や、あなたの状況によって追加で必要になる書類です。ご自身がどれに当てはまるか確認してみましょう。
| 書類の名前 | どんな場合に必要? | どこで手に入る? |
|---|---|---|
| 乗船履歴証明書 | 口述試験を受ける場合や、筆記試験で乗船履歴による科目免除を受ける場合に必要です。 | 運輸局の窓口、または国土交通省のHPからダウンロード(会社や船長に証明してもらう必要があります) |
| 海技士身体検査証明書 | 運輸局で行う身体検査を受けずに、指定医の証明書で代える場合に必要です。申請日前3か月以内に発行されたものが必要です。 | |
| 筆記試験合格証明書(のコピー) | すでに合格している筆記試験の有効期間内に、口述試験を受ける場合に必要です。 | 以前受験した運輸局 |
| 海技免状(のコピー) | すでに他の海技免状を持っていて、試験科目の免除を受ける場合に必要です。 | – |
【見本あり】申請書類の書き方と注意点
書類の全体像が分かったところで、次は一番大切な「書き方」を見ていきましょう。特に間違えやすいポイントを、見本をイメージしながら分かりやすく解説します。
海技試験申請書(第10号様式):鉛筆で書くのはなぜ?
申請の顔ともいえる「海技試験申請書」。実はこの書類、国土交通省の記入例に従って記入してください(様式によって印刷倍率や記入方法の指定があるため、最新の記入例の確認が必要です)という、決まりがあります。
「え、大事な書類なのに鉛筆でいいの?」と驚かれるかもしれませんね。これは、申請書を機械で読み取って処理するためなんです。ボールペンなどで書いてしまうと、機械が読み取れず、再提出になってしまう可能性があるので注意しましょう。
記入する際は、国土交通省のホームページにある記入例をよく確認しながら、一文字ずつ丁寧にはっきりと書いてください。特に、受験する試験の区分や、科目免除の有無を間違えないようにしましょう。
受験票:写真のサイズ・ルールは大丈夫?
受験票で一番気をつけたいのが「写真」です。せっかく撮った写真が無駄にならないよう、ルールをしっかり確認しておきましょう。
- サイズ:縦3cm × 横2.4cm
- いつ撮った?:申請する日からさかのぼって6ヶ月以内に撮影したもの
- 写り方:帽子をかぶっていない、背景がない、正面を向いているもの
スピード写真などで撮影する場合は、サイズを間違えないように設定してくださいね。写真の裏には、お名前と撮影年月日を書いてから貼り付けましょう。万が一はがれてしまった時でも、誰のものか分かるようにするためです。
手数料納付書:収入印紙はどこで買う?金額は?
受験手数料は、現金ではなく「収入印紙」で納めます。手数料納付書という台紙に、必要な金額分の収入印紙を貼って提出します。
収入印紙が買える場所
- 郵便局
- 法務局
- 一部のコンビニエンスストア(高額なものは置いていないことが多いです)
試験の区分によって手数料の金額は異なりますので、必ず事前に確認してください。そして、とても大切な注意点が一つ。収入印紙を貼ったら、絶対に自分で割り印や消印をしないでください。印紙は、受付の担当者が確認して消印をする決まりになっています。
意外な落とし穴?「原本確認」を分かりやすく解説
郵送で申請を考えている方が、特に戸惑いやすいのが「原本確認」という手続きです。初めて聞く言葉かもしれませんが、仕組みはとてもシンプルなので安心してくださいね。

そもそも「原本確認」って何のためにするの?
「原本確認」とは、一言でいうと「提出する書類のコピーが、本物と間違いありませんよ」ということを、公的な機関に証明してもらう手続きのことです。
例えば、科目免除のために「海技免状のコピー」を提出する場合を考えてみましょう。窓口で直接申請するなら、職員さんが原本とコピーを見比べて「はい、同じものですね」とその場で確認できます。
しかし、郵送だとそれができません。送られてきたコピーが本当に本物の免状のコピーなのか、確かめようがないのです。そこで、事前に運輸局の窓口で「このコピーは、本物の免状を見て写したものです」というお墨付き(証明印)をもらっておく。これが「原本確認」の役割です。
事前に運輸局で、原本確認の手順と持ち物
では、具体的にどうすればよいのでしょうか。手順はとっても簡単です。
- 原本とコピーを用意する
証明してほしい書類(海技免状や筆記試験合格証明書など)の原本そのものと、そのコピーを両方準備します。 - 最寄りの運輸局へ行く
準備した原本とコピーを持って、お近くの地方運輸局の「海技免許」担当窓口へ行きます。 - 証明印をもらう
窓口の職員さんに「海技士試験の申請で、原本確認をお願いします」と伝え、原本とコピーを渡します。職員さんが内容を確認し、問題がなければコピーの方に証明印を押して返してくれます。
この証明印が押されたコピーを、他の申請書類と一緒に郵送すればOKです。行く前には、念のためご自身の身分証明書(運転免許証など)も持っていくと安心ですね。
【専門家からのひとこと】
海技免状や無線従事者免許証など、科目免除に使う証明書のコピーを郵送で提出する場合は、この「原本確認」が必須となります。手続き自体は難しくありませんが、運輸局の窓口が開いている平日の日中に行く必要があります。お仕事などで忙しい方は、時間に余裕を持って計画的に準備を進めることが大切ですよ。
書類がそろったら|申請方法と提出先
さあ、いよいよ最後のステップ、申請です。方法は2つあります。
1. 窓口へ直接持っていく
一番確実な方法です。受験を希望する地方運輸局の窓口へ、そろえた書類一式を持参します。もし書類に不備があっても、その場で教えてもらえるので安心です。時間に余裕がある方には、この方法がおすすめです。
2. 郵送する
遠方にお住まいの方や、平日に時間が取れない方に便利な方法です。ただし、書類に不備がないか、何度も確認してから送りましょう。郵送する際は、必ず郵便物の追跡ができる「簡易書留」や「レターパック」を利用してください。大切な書類が今どこにあるのかを把握でき、万が一の郵便事故を防ぐことができます。
提出先は、あなたが受験を希望する試験地を管轄する地方運輸局です。間違った場所に送らないよう、提出先もしっかり確認しましょう。
どうしても不安…そんな時は専門家を頼る選択肢も
ここまで書類の準備について解説してきましたが、「やっぱり自分一人で全部やるのは不安…」「仕事が忙しくて、書類を集めたり運輸局に行ったりする時間がない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時は、海事手続きに注力している海事代理士事務所を頼る、という選択肢があることも、ぜひ知っておいてください。
当事務所では、書類作成や運輸局窓口での申請代理(※代理が可能な手続きに限る)など、手続き面の支援を行っています。詳細はお問い合わせください。あなたは安心して試験勉強に集中することができます。
弊事務所では、海事代理士対応業務一覧として、船舶に関する様々な手続きをお手伝いしております。もちろん、海技士試験の申請サポートも承っております。
「こんな初歩的なことを聞いてもいいのかな?」なんて心配はまったく必要ありません。あなたの船出を全力で応援するのが、私たちの仕事です。もし少しでも手続きに不安を感じたら、どうぞお気軽に手続きに関するご相談・お問い合わせはこちらからご連絡ください。合格に向けた書類準備をサポートします。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
60条証明とは?農家住宅の建て替えを行政書士が解説
「60条証明書」?市街化調整区域での家づくり、お悩みではありませんか?
「そろそろ家を建て替えたいけれど、うちは市街化調整区域だから難しいのかな…」
「役所に行ったら『60条証明書が必要です』と言われたけど、一体何のことだろう?」
市街化調整区域で、ご家族との大切な住まいである農家住宅の建て替えや新築を考えたとき、聞き慣れない言葉や複雑そうな手続きを前に、不安な気持ちになっていらっしゃるかもしれません。そのお気持ち、とてもよく分かります。
でも、ご安心ください。この記事は、まさにそんなお悩みをお持ちのあなたのために書きました。
この記事を最後までお読みいただければ、
- 「60条証明書」がなぜ必要なのか、その役割がすっきり分かる
- ご自身が対象になるかの条件が具体的にイメージできる
- 手続きの全体像と、特に注意すべき点が把握できる
ようになります。複雑に見える手続きも、一つひとつ順を追って理解すれば、決して怖いものではありません。この記事が、あなたの家づくりの第一歩を、安心して踏み出すためのお手伝いになれば幸いです。

「60条証明書」とは?開発許可が不要になる証明書
まず、「60条証明書」とは何か、その正体からご説明しますね。一言でいうと、「60条証明が得られれば開発許可が不要となる場合がありますが、適用要件は厳格で自治体ごとに確認が必要です。まずは事前相談で可否を確認してください。」という、行政からの証明書のことです。
自治体によって表記は異なりますが(例:「適合証明」「省令第60条証明」など)、一般に都市計画法施行規則第60条に基づく「適合を証する書面」を指します。少し長い名前ですが、この「60条」という数字が名前の由来になっているんですね。
【専門家コラム】そもそも「開発許可」ってなんだろう?
市街化調整区域に家を建てる場合、原則として「開発許可」という手続きが必要です。これは、街の景観やインフラを守るため、無秩序な開発を防ぐための大切なルールです。しかし、農業を営む方にとって、その生活や仕事に欠かせない農家住宅の建築まで厳しく制限されてしまうと、地域の農業そのものが成り立たなくなってしまいます。そこで、一定の条件を満たす農家住宅については、この開発許可が免除される特例が設けられているのです。60条証明書は、その特例に当てはまることを証明するための、いわば「特別な通行手形」のようなもの、とイメージしていただくと分かりやすいかもしれませんね。
なぜ「60条証明書」が必要になるの?
市街化調整区域は、もともと街の市街化を抑えるためのエリアです。そのため、新しい建物を建てる際には「開発許可」という、いわば行政の厳しいチェックを受けるのが大原則です。
しかし、先ほども触れたように、そこで農業を営み、地域を支えている方々が住む家まで厳しく制限しては、農業の担い手がいなくなってしまいます。そこで、「農業を続けるために本当に必要な農家住宅」については、その厳しいチェックを簡略化し、スムーズに建築を進められるようにしよう、という目的で「60条証明書」の制度が作られました。この証明書があることで、地域農業の維持と、無秩序な開発の防止という二つの目的のバランスをとっているのです。
「開発許可」との違いは?
「開発許可」と「60条証明書」は、似ているようで役割が全く異なります。
- 開発許可:これから行う土地の造成や建築が、街づくりのルールに合っているかを「審査」し、問題がなければ「許可」を与えるもの。時間も費用もかかる、いわば「本審査」です。
- 60条証明書:あなたの建築計画が「農家住宅」などの特別な例外に当たるため、そもそも開発許可の「審査が不要ですよ」ということを「証明」してくれるもの。本審査の前段階で、「あなたは審査対象外です」と教えてくれるものです。
この違いを理解しておくと、役所や建築会社の方との打ち合わせもスムーズに進めやすくなりますよ。
参考:都市計画制度の概要
【私は対象?】60条証明書で農家住宅を建てるための3つの条件
「うちは対象になるのだろうか?」というのが、一番気になるところですよね。60条証明書を受け取るためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。自治体によって細かいルールは異なりますが、ここでは一般的に求められることが多い3つの大きな条件について解説します。
条件1:建築主が「農業を営む人」であること
まず最も大切なのが、家を建てる人(建築主)が「農業を営む人」、つまり農家さんであることです。具体的には、以下のような方が対象となります。
- 農地基本台帳に登録されている農家世帯に属する人
- 主に農業によって生計を立てている人(農業所得が一定以上あるなど)
例えば、農家の親御さんと同居しているお子さん(後継者)が、結婚を機に同じ敷地内に新しい家を建てる、といったケースも対象になることがありますが、実際には「実態として農業に従事しているか」等の確認が行われます。後継者の場合は具体的な就農状況や世帯の実態を役所へ確認してください。
条件2:一定規模以上の農地を耕作していること
次に、どのくらいの規模で農業を行っているか、という点も重要です。自治体によりは面積要件を定めている場合があります(例として1,000㎡などの基準を採る自治体もあります)。具体的な数値や要件は必ず担当窓口で確認してください。
条件3:建築する場所と建物に関するルール
どこに、どんな建物を建てるかにもルールがあります。
- 場所:原則として、ご自身が所有し耕作している農地の中や、その農地に隣接した土地である必要があります。農作業の利便性を考えてのルールですね。
- 建物:建物の広さにも、上限が設けられている場合があります。あくまで農業を営む人の生活に必要な範囲の建物、という考え方なので、社会通念上あまりに大きな豪邸などは認められない可能性があります。
これらの条件は複雑に絡み合うため、「自分の場合はどうだろう?」と迷われたら、ご自身で判断せずに、まずは専門家や役所の窓口に相談することが大切です。
60条証明書の申請手続きと必要書類
では、実際に60条証明書を取得するには、どのような流れで進めていけばよいのでしょうか。ここでは、一般的な手続きのステップをご紹介します。
ステップ1:まずは役所の担当窓口へ事前相談
いきなり書類を集め始めるのではなく、まず最初に行うべきは「事前相談」です。市町村の都市計画課や建築指導課といった担当窓口へ連絡し、「市街化調整区域で農家住宅の建て替えを考えているのですが…」と相談してみましょう。
この事前相談で、
- ご自身の計画が60条証明の対象になりそうか
- どのような書類を、どこで集めればよいか
- その後の手続きの流れ
などを具体的に教えてもらえます。この最初のステップを丁寧に行うことで、後の手続きが格段にスムーズになります。もちろん、この段階で私たちのような行政書士にご相談いただければ、窓口相談への同行や書類作成、手続きの代理申請等の支援が可能です(ただし、許認可の可否は行政の判断によります)。支援内容と費用は事前にご説明します。
ステップ2:必要書類を集める
事前相談で確認した必要書類を集めます。一般的には、以下のような書類が必要になることが多いです。(※自治体により異なりますので、必ず担当窓口にご確認ください)
| 分類 | 書類名 | 入手先など |
|---|---|---|
| 申請書類 | 証明願(申請書) | 役所の窓口 |
| 申請理由書 | ご自身で作成 | |
| 図面類 | 付近見取図(案内図) | 建築士などに依頼 |
| 配置図・各階平面図 | ||
| 土地の実測求積図 | ||
| 証明書類 | 農業委員会の証明書 | 市町村の農業委員会 |
| 土地の登記事項証明書 | 法務局 | |
| 公図の写し | 法務局 |
特に重要なのが、農業委員会が発行する「農業を営む者であることの証明」や「耕作証明書」などです。これらは、あなたが条件を満たす農家であることを客観的に証明するための大切な書類となります。
ステップ3:申請書の提出から証明書の交付まで
すべての書類が揃ったら、役所の窓口に申請書を提出します。提出後、役所内で審査が行われ、問題がなければ証明書が交付されます。
申請から交付までの期間は自治体により大きく異なります。一般に「一定の期間を要する」と案内されることが多いため、具体的な所要期間は事前相談時に担当窓口へ確認してください。
そして、無事に60条証明書を受け取ったら、次のステップである「建築確認申請」へと進むことになります。

【重要】農家住宅の建て替えで絶対に注意すべき3つのポイント
特に、今ある家を「建て替える」場合に、知らずに進めると取り返しのつかない事態になりかねない、非常に重要な注意点があります。ここでは、専門家として特に強調しておきたい3つのポイントをお伝えします。
注意点1:先に現在の農家住宅を解体することは控えましょう
これは最も重要なポイントです。60条証明書や建築確認の許可が正式に下りる前に、現在の農家住宅を解体することは控えましょう。
なぜなら、「今ある農家住宅を取り壊して、同じような目的の家を建てる」という「建て替え」であることが、大きな前提条件になっているからです。もし先に解体して更地にしてしまうと、「建て替え」ではなく「何もない土地に新しく家を建てる=新規建築」と見なされてしまいます。そうなると、許可のハードルが格段に上がってしまい、最悪の場合、家を建てられなくなる可能性すらあるのです。工事の段取りを考えて焦る気持ちは分かりますが、必ず行政の許可を得てから解体工事に着手してください。
注意点2:相続した農家住宅は誰が建て替えられる?
親御さんから農家住宅と農地を相続したお子さんが、その家を建て替えたい、というケースも多いでしょう。この場合、注意が必要です。
建て替えができるのは、あくまで「農業を営む人」です。もし、相続したお子さん自身が農業をしておらず、今後も就農する予定がない場合、原則として農家住宅として建て替えることはできません。将来的にご自身が農業を始める計画があるなど、特別な事情がある場合は認められる可能性もありますが、非常に専門的な判断が必要となります。ご家族の状況が変わった場合は、安易に「建て替えられるはず」と考えず、必ず事前にご相談ください。
注意点3:「農家住宅」でなくなると売却や賃貸ができない?
60条証明を受けて建てた農家住宅は、あくまで「農業を営む人のための家」という特別な位置づけです。そのため、建築後に農業をやめる、第三者に売却・賃貸する場合は、証明の趣旨や自治体の取り扱いにより制約や手続きが生じる可能性があります。将来的な利用変更を検討している場合は、事前に自治体へ照会してください。
将来、お子さんが家を出て農業を継がないかもしれない、といったライフプランの変化も考えられます。この制度を利用して家を建てるということは、そうした将来的な制約も受け入れるということになります。ご家族の未来も見据えた上で、慎重に計画を進めることが大切です。

手続きが複雑…そんな時は専門家への相談も選択肢に
ここまでお読みいただき、60条証明書の全体像はご理解いただけたかと思います。しかし、実際に自分のケースに当てはめてみると、「うちの耕作面積で大丈夫だろうか?」「この書類はどこでもらえばいいの?」など、新たな疑問や不安が出てくることも多いでしょう。
そんな時、一人で抱え込まずに、行政書士に相談をするという選択肢もぜひご検討ください。
行政書士に相談をすることで、
- 役所の担当者との複雑な協議や確認を代行できる
- 膨大で分かりにくい必要書類の収集をスムーズに進められる
- あなたの状況が要件を満たすか、専門的な視点で的確に判断できる
- 将来的なリスクも踏まえた上で、最善の方法をご提案できる
といったメリットがあります。単に書類を作るだけでなく、あなたの家づくり計画が円滑に進むよう、伴走者としてサポートさせていただきます。
弊事務所は、特に手続きが複雑になりがちな中山間地域の農地案件に注力しています。あなたのお悩みに寄り添いながら、最善の解決策を一緒に考えさせていただきます。
「何から相談していいか分からない」という段階でも全く問題ありません。まずはお気軽にお話をお聞かせください。ご相談は初回無料です。ただし、無料相談の範囲は、お電話やメールでの一般的なご質問への回答に限らせていただいております。具体的な書類の確認や作成、官公署への同行といった業務に着手する際は、別途費用が発生いたしますので、あらかじめご了承ください。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
船舶免許の更新手続きを徹底解説|費用・流れ・失効した場合も安心
船舶免許の更新、忘れていませんか?まずはこちらで状況を確認
「船舶免許の更新時期が近づいてきたけど、手続きが面倒くさそう…」「うっかり更新を忘れて、有効期限が切れてしまった」
そんなふうに、焦りや不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。でも、ご安心ください。このページを読めば、何をすべきかがはっきりと分かり、スムーズに手続きを進めることができますよ。
まずは、お手元の免許証を見て、ご自身の状況を確認してみましょう。
【有効期限まで1年以内の方】通常の更新手続きへ
小型船舶操縦士免許証の真ん中あたりに、「有効期間」という欄があります。ここの日付がまだ先で、有効期限まで1年以内という方は、「通常の更新手続き」に進みます。
更新手続きは、有効期限の1年前から行うことができます。ギリギリになって慌てないためにも、早めに準備を始めるのがおすすめです。早めに手続きを済ませてしまえば、講習の日程も選びやすく、心に余裕が生まれますよ。
【有効期限が過ぎてしまった方】失効再交付手続きへ
もし、免許証の有効期限が過ぎてしまっていたとしても、決して慌てないでくださいね。ご安心ください、もう一度試験を受け直す必要はありません。
有効期限が切れてしまった場合は、「失効再交付」という手続きを行うことで、再び免許を有効にすることができます。大変な思いをして取得した大切な免許です。諦めずに、次の「失効再交付の手続き」の項目をじっくりお読みください。
【有効期限内】小型船舶免許の更新手続き|4つのステップで解説
有効期限内に免許を更新する場合の手続きは、大きく分けて4つのステップで進みます。一つひとつは決して難しくありませんので、一緒に確認していきましょう。
ステップ1:更新講習の予約
まず最初に行うことは、「更新講習」の予約です。これは、免許を更新するために必ず受けなければならない講習で、簡単な身体検査と、海事法令の改正点などを学ぶ約1時間の座学で構成されています。
この更新講習は、国に登録された全国各地の講習機関で受けることができます。お住まいの地域や職場の近くなど、ご都合の良い場所を選んで予約しましょう。予約は電話やインターネットで受け付けているところがほとんどです。
ステップ2:必要書類の準備
次に、申請に必要な書類を準備します。不備がないように、リストを確認しながら揃えましょう。
- 操縦免許証更新申請書:講習機関や運輸局で入手できます。
- 証明写真2枚:縦4.5cm×横3.5cm、6ヶ月以内に撮影した無帽・無背景のもの。
- 小型船舶操縦士免許証(現在お持ちのもの)
- 住民票(住所や氏名に変更がある場合のみ):本籍地の記載があるものが必要です。
- 委任状(海事代理士などに依頼する場合)
特に写真はサイズが決まっていますので、間違えないように注意してくださいね。
ステップ3:更新講習の受講と身体検査
予約した日時に講習会場へ行きます。当日の流れは、おおむね以下の通りです。
- 受付で必要書類を提出します。
- 視力や聴力などの簡単な身体検査を受けます。視力に不安がある方は、普段お使いの眼鏡やコンタクトレンズを忘れずにお持ちください。
- 約1時間の講習を受けます。難しい試験などはありませんので、リラックスして受講してください。
この更新講習は、免許を持ち続ける上で大切なルールを再確認する良い機会になります。
【専門家コラム】なぜ更新講習が必要なのでしょうか?
「なぜ毎回講習を受けなければいけないの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、海の上でのルール、つまり法律や条例は、安全を守るために改正されます。また、ご自身の身体的な適性(視力など)が、引き続き船舶の操縦に問題ないかを確認することも、安全な航行には不可欠です。
この更新講習は、そうした最新のルールを学び、ご自身の身体状況を再確認することで、あなた自身だけでなく、周りの船や人々の安全を守るための、とても大切な機会なのです。少し面倒に感じられるかもしれませんが、安心してマリンレジャーを楽しむための大切なステップだと考えていただけると嬉しいです。
ステップ4:運輸局へ申請と新しい免許証の受け取り
講習を終え、すべての書類が揃ったら、管轄の運輸局(運輸支局)へ申請書類を提出します。講習機関によっては、申請代行まで行ってくれるところもあります。
申請後の交付までの期間は講習機関や運輸局の処理状況により異なります。一般には数日〜数週間、場合によっては1か月程度かかることがありますので、詳細は講習機関または管轄の運輸局にご確認ください。
「平日に運輸局へ行く時間がない」「書類の準備がやっぱり面倒…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そんな時は、海事代理士に依頼するという方法もあります。
【有効期限切れ】失効再交付の手続き|慌てず確実に対応する方法
「しまった!有効期限がとっくに過ぎている…」という方も、どうぞご安心ください。先ほどもお伝えした通り、難しい試験をもう一度受ける必要はありません。「失効再交付」という手続きを踏めば、また免許を手にすることができます。
失効再交付講習の予約と受講
有効期限が切れてしまった場合は、「更新講習」ではなく「失効再交付講習」を受ける必要があります。講習機関の探し方や予約方法は更新講習の時と同じです。
ただし、講習内容が少し異なり、時間は約2時間半と長くなります。こちらも筆記試験などはありませんので、落ち着いて受講してくださいね。
必要書類と申請の流れ
必要となる書類は、更新手続きとほとんど同じですが、申請書の様式が「操縦免許証再交付申請書」となります。また、手数料として国に納める収入印紙の金額も少し異なります。
たとえ失効してから何年も経ってしまっている場合でも、手続きは可能です。「もうダメかもしれない」と諦めずに、まずは講習の予約から始めてみましょう。もしご不安な点があれば、いつでもご相談ください。
船舶免許更新・失効の費用はいくら?内訳を詳しく解説
手続きにかかる費用は、多くの方が気になるところだと思います。「更新」と「失効」のそれぞれの場合で、どれくらいの費用がかかるのか、内訳を見ていきましょう。

自分で手続きする場合の費用内訳
ご自身で全ての申請手続きを行う場合、費用の内訳は主に以下のようになります。
| 項目 | 更新の場合 | 失効の場合 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 講習料 | 約4,000円~ | 約9,500円~ | 講習機関により異なります |
| 身体検査料 | 約1,000円 | 約1,000円 | |
| 収入印紙代 | 1,350円 | 1,250円 | 国に納める手数料 |
| 合計(目安) | 約6,500円~ | 約12,000円~ |
※上記はあくまで目安です。最新の情報や正確な金額は、各講習機関や運輸局にご確認ください。
専門家(海事代理士)に依頼する場合の費用
海事代理士に手続きを依頼する場合は、上記の費用に加えて「代行手数料」がかかります。手数料は事務所によって異なりますが、上記の費用を含めおおむね1万円から2万円前後が相場です。
「費用が高くなるなら自分で…」と思われるかもしれませんが、この手数料には、面倒な書類作成、運輸局への申請、新しい免許証の受け取りまで、全てを代行するサービスが含まれています。時間や手間を考えれば、決して高すぎることはないと感じる方も多いはずです。
面倒な手続きを海事代理士に依頼するメリット
「仕事が忙しくて、平日に休みが取れない」
「書類を揃えたり、役所に行ったりするのは苦手…」
「うっかりミスで手続きが遅れるのは避けたい」
もし、あなたが一つでも当てはまるなら、ぜひ「海事代理士」への依頼を検討してみてください。海事代理士は、船舶に関する手続きの業務を多く扱っています。あなたの代わりに、面倒な手続きを全て引き受けます。
書類作成から申請まで全て代行していただき、時間と手間を節約
海事代理士にご依頼いただければ、あなたがすることは、簡単な申込書への記入と、必要書類(免許証など)を郵送し、あとはご自宅で新しい免許証が届くのを待つだけです。
慣れない書類の書き方を調べたり、平日の昼間にわざわざ運輸局へ足を運んだりする必要は一切ありません。あなたの貴重な時間と手間を、大幅に節約することができます。
書類の不備や申請ミスを防ぎ、確実に手続きが完了
ご自身で手続きをすると、写真のサイズが違っていたり、書類の記入に漏れがあったりといった、ささいなミスが起こりがちです。そのたびに、運輸局と何度もやり取りをしなければならず、思った以上に時間がかかってしまうことも…。
その点、海事代理士に任せれば、申請のプロが全ての書類をチェックし、完璧な状態で提出します。書類の不備を防ぎ、手続きの完了まで手助けできる可能性が高まります。
栃木県佐野市の中村光男事務所が親身にサポートします
当事務所は、栃木県佐野市に根ざし、地域のみなさまに寄り添う海事代理士・行政書士事務所です。最初のご相談から手続きの完了まで、責任を持って一貫して対応いたします。
海事代理士と行政書士の両方の資格を保有しているため、船舶免許の手続きはもちろん、船舶の登録や相続など、関連するお悩みにもワンストップで対応可能です。
「こんなことを聞いてもいいのかな?」と思うような小さなことでも構いません。まずはお気軽に、あなたの状況をお聞かせください。
船舶免許の手続きに関するご相談・お問い合わせはこちら
小型船舶免許の更新に関するよくある質問(Q&A)
最後に、船舶免許の更新について、多くの方が疑問に思われる点をQ&A形式でまとめました。
Q. 住所や氏名が変わったのですが、手続きは必要ですか?
A. はい、必要です。住所、氏名、本籍地(都道府県)に変更があった場合は、更新や失効再交付の手続きと同時に「訂正申請」を行う必要があります。その際は、変更の事実が確認できる「本籍地記載の住民票」(氏名変更の場合は戸籍抄本など)が追加で必要になります。
Q. 免許証をなくしてしまいました。失効手続きと一緒にできますか?
A. はい、できます。免許証を紛失してしまった場合でも、失効再交付と同時に「紛失再交付」の手続きを行うことが可能です。その際は、なぜ紛失したのかを記入する「滅失てん末書」や、運転免許証などの本人確認書類が別途必要になります。紛失と失効が重なっていても問題なく手続きできますので、ご安心ください。
Q. 更新講習はオンラインで受講できますか?
A. 2025年11月現在、小型船舶免許の更新講習や失効再交付講習は、原則として登録講習機関の会場へ行って受講する「対面形式」となっています。一部でオンライン講習の社会実験なども行われていますが、まだ全国的に導入されているわけではありません。そのため、現時点ではお近くの会場で受講する必要があります。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
農地相続の届出【農地法3条の3】忘れると罰則?書き方・期限を解説
農地を相続した方へ。まず、この届出を忘れないでください
ご家族が亡くなられ、突然農地を相続することになった…。「何から手をつけていいのか分からない」「手続きが難しそう」と、戸惑いや不安を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
ご安心ください。この記事では、専門用語をできるだけ使わずに、あなたが今やるべきことを一つひとつ、丁寧にご説明していきます。一緒に確認していけば、決して難しい手続きではありません。
まず、農地を相続した際に、最初に行うべき大切な手続きが「農地法第3条の3の規定による届出」です。まずはこの手続きについて、じっくり見ていきましょう。
「農地法第3条の3の届出」とは?なぜ必要なの?
「農地法第3条の3の届出」と聞くと、なんだか難しそうに感じますよね。でも、中身はとてもシンプルです。
これは、「相続によって農地の新しい持ち主があなたに変わりましたよ」ということを、農地がある市町村の農業委員会へお知らせ(報告)するための手続きです。
国や市町村は、日本の大切な食料を生み出す農地が、今誰によって所有され、どのように管理されているのかをきちんと把握しておく必要があります。この届出は、そのための重要な役割を担っているのです。
大切なポイントは、これは許可を求める「申請」ではなく、事後報告である「届出」だということです。何かを審査されて許可をもらう、というものではないので、少し気持ちが楽になりますよね。

所有権だけでなく「借りる権利」の相続でも必要です
この届出で見落としがちなのが、土地そのもの(所有権)だけでなく、亡くなった方が誰かから農地を借りて耕作していた場合の「借りる権利(賃借権)」を相続したケースです。
この「賃借権」を引き継いだ場合にも、同じように届出が必要になります。「うちは土地を買ったわけじゃないから関係ない」と思わずに、故人が農地を借りていなかったかどうかも、一度確認してみてくださいね。
許可が必要な「農地の売買」とは手続きが違います
農地の手続きには、今回の「届出」とよく似た言葉で「許可申請」というものがあります。この違いを知っておくと、混乱しなくて済みます。
- 届出(今回あなたがするもの):相続など、自分の意思とは関係なく権利が移る場合。事後に報告します。
- 許可申請:お金を払って買う(売買)など、自分の意思で権利を移す場合。事前に許可が必要です。
今回は「相続」ですので、事前の許可は必要なく、この「届出」だけで大丈夫です。もし、将来的に相続した農地の売買などをお考えの場合は、農地法第3条許可申請書 譲渡人・譲渡人欄記載例についての記事で解説しているような、別の手続きが必要になります。
届出の期限と、もし忘れた場合の罰則について
さて、次に皆さんが一番心配されているであろう「期限」と「罰則」についてです。ここは正確に知っておきましょう。
届出の期限は、権利を取得したことを知った日からおおむね10か月以内です(必ずしも死亡日が起算日とならない点にご注意ください)。
そして、もしこの届出を忘れてしまった場合、届出をしなかった場合は、農地法により10万円以下の過料が科される場合があります。過料は行政上の制裁であり、刑事罰(罰金)とは性質や手続きが異なるものです。
「忘れたらどうしよう…」と不安になるかもしれませんが、まずは落ち着いて、ご自身の状況を確認することが大切です。
期限を過ぎてしまった…今からでもやるべきこと
「この記事を読んだ時点でもう10ヶ月過ぎてしまっている…」と焦っている方もいらっしゃるかもしれません。でも、決して諦めないでください。
やるべきことは、気づいた時点ですぐに、農地のある市町村の農業委員会に正直に相談することです。
うっかり忘れてしまった場合など、悪質なケースでなければ、すぐに罰則ということにはならず、「速やかに届出を出してくださいね」という指導で済むことがほとんどです。大切なのは、放置せずに誠実に対応すること。まずは農業委員会の窓口へ電話で連絡してみましょう。
【3ステップで完了】届出書の書き方と提出方法
ここからは、実際の手続きの流れを3つのステップに分けて具体的に解説します。この通りに進めれば、手続きは完了できますよ。

ステップ1:必要書類を集めよう
まず、提出に必要な書類を準備します。基本的には以下の通りですが、市町村によって少し異なる場合があるので、事前に農業委員会のホームページで確認するか、電話で問い合わせておくと確実です。
- 農地法第3条の3の規定による届出書:農業委員会の窓口や、市町村のホームページからダウンロードできます。
- 相続したことが分かる書類::土地の登記簿謄本(全部事項証明書)や、遺産分割協議書の写しなど。法務局で登記手続きを済ませた後にもらえる「登記完了証」の写しで良い場合も多いです。
- (代理人が手続きする場合)委任状:あなたに代わって行政書士などが手続きをする場合に必要です。
- その他:案内図や公図の写しなどを求められることもあります。
ステップ2:届出書を書いてみよう(記入例付き)
書類が手に入ったら、届出書を記入していきましょう。緊張するかもしれませんが、一つひとつ埋めていけば大丈夫です。
特に迷いやすいポイントをいくつか解説します。
- 届出者:農地を相続したあなたの住所・氏名を書きます。
- 権利を取得した者::ここも、あなたの情報を書きます。もし複数の相続人で共有する場合は、全員分の情報を書くか、代表者を決めて「外〇名」と記載し、別紙で全員のリストを添付します。
- 権利を取得された者::亡くなった方(被相続人)の情報を書きます。
- 届出に係る土地の表示::土地の登記簿謄本を見ながら、所在、地番、地目、面積を正確に書き写します。
- 権利を取得した日::相続が開始した日、前所有者が亡くなった日を書きます。
- 権利を取得した事由::「相続」にチェックを入れます。
- 取得した権利の種類::土地そのものを相続した場合は「所有権」、借りる権利を相続した場合は「賃借権」にチェックを入れます。
全体の書き方については、農林水産省が公開している様式例が参考になります。
参考:様式例第3号の1 農地法第3条の3第1項の規定による届出書
ステップ3:農業委員会へ提出しよう
書類が完成したら、いよいよ提出です。
提出先は、その農地がある市町村の農業委員会事務局です。あなたの住民票がある市町村ではないので、ご注意ください。農業委員会の事務局は、市役所や町役場の中にあることが多いです。
窓口へ直接持参するほか、郵送で受け付けてくれる場合もあります。遠方にお住まいの方は、郵送対応が可能か事前に電話で確認しておくと良いでしょう。
書類に不備がなければ、後日「受理通知書」といった書類が送られてきて、手続きは完了となります。
手続きが不安な方へ。専門家への相談も一つの方法です
ここまで、ご自身で手続きを進める方法を解説してきましたが、「やっぱり一人でやるのは不安…」「平日に役所へ行く時間がない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そんな時は、行政書士などの専門職に手続きを依頼するという選択肢もあります。
専門家に依頼するメリットは、
- 面倒な書類集めや作成から解放される
- 役所の窓口とのやり取りをすべて任せられる
- 「これで合っているだろうか?」という精神的な不安がなくなる
- 農地の相続登記や、その後の活用(売却や転用)に関する相談もできる
といった点が挙げられます。特に、相続人が複数いて話がまとまらない、相続した農地が遠くにあってなかなか行けない、といった場合には、専門家のサポートが大きな助けになるはずです。
当事務所は、栃木県佐野市を拠点に、農地に関する様々なご相談を承っております。ご依頼者様のお気持ちに寄り添い、最善の方法を一緒に考えさせていただきます。この届出について、もし少しでもお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。