浄化槽排水の道路占用許可|申請方法と費用、注意点を解説

合併処理浄化槽の処理水、道路に流してもいいの?

下水道がまだ整備されていない地域で家を建てる、あるいはリフォームを計画する際、多くの方が「合併処理浄化槽から出るきれいになった水は、どこへ流せばいいのだろう」という疑問に直面します。特に、家の前の道路にある側溝へ流したいと考えたとき、「そもそも、個人の排水を公の道路に流しても良いのだろうか」と不安に思われるかもしれません。

結論から申し上げますと、適切な手続きを踏み、許可を得ることで、合併処理浄化槽の処理水を道路側溝へ流すことは可能です。もちろん、そのためにはいくつかの条件をクリアし、法律に基づいた「道路占用許可」という手続きを経る必要があります。

この記事では、合併処理浄化槽の排水管を道路に接続するために不可欠な「道路占用許可」について、その基本から具体的な申請ステップ、気になる費用、そして実務上の注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。この記事を最後までお読みいただければ、手続きの全体像が明確になり、安心して計画を進めるための知識が身につくはずです。この記事の全体像については、道路占用許可の全体像で体系的に解説しています。

なぜ必要?道路占用許可の基本を理解しよう

「なぜ、自宅の排水管を少し接続するだけなのに、わざわざ許可が必要なのだろう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、道路占用許可という制度の根本的な考え方と、よく似た別の許可との違いについてご説明します。

「道路占用許可」とは?目的と根拠

道路は、誰もが通行するために利用する公共の財産です。もし、誰もが自由に道路に物を置いたり、穴を掘ったりできるとしたら、どうなるでしょうか。道路はすぐに傷み、安全な通行が妨げられ、大きな混乱が生じてしまいます。

そこで、個人の排水管のように、特定の人が道路の敷地やその地下・上空を継続的に使用する場合には、道路を管理する国や都道府県、市町村(これらを「道路管理者」と呼びます)の許可が必要とされています。これが「道路占用許可」です。

この制度は、道路の安全を守り、皆が公平に利用できるようにするために設けられています。根拠となる法律は道路法という法律であり、この手続きが法律に基づいた正式なものであることをご理解ください。

参照:道路法(昭和二十七年法律第百八十号)

「道路使用許可」との違いは?

道路占用許可と非常によく似た言葉に「道路使用許可」があります。この二つは目的も申請先も異なるため、混同しないように注意が必要です。

道路占用許可と道路使用許可の違いを比較した図解。目的、具体例、申請先、根拠法がそれぞれ分かりやすくまとめられている。
道路占用許可道路使用許可
目的道路に施設を設置し、継続的に使用するため工事や作業などで、一時的に道路を使用するため
具体例排水管の埋設、電柱・看板の設置など工事車両の駐車、資材の搬入、お祭りなど
申請先道路管理者(国、都道府県、市町村)管轄の警察署長
根拠法道路法道路交通法
道路占用許可と道路使用許可の違い

合併処理浄化槽の排水管を道路下に埋設する工事では、まず排水管という「施設」を設置するために道路管理者から「道路占用許可」を受けます。そして、その工事を行うために一時的に道路の交通を制限する必要があるため、警察署から「道路使用許可」も受けることになります。このように、多くの場合で両方の許可が必要になる、と覚えておくと良いでしょう。より具体的な手順については、道路占用許可の申請手続きをご覧ください。

道路占用許可の申請方法|5つのステップで解説

それでは、実際に道路占用許可を申請する際の手順を、5つのステップに分けて具体的に見ていきましょう。この流れを事前に把握しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。

ステップ1:申請先の確認【国道・県道・市道で窓口が違う】

最初にすべきことは、排水管を接続したい道路を誰が管理しているのかを正確に特定することです。道路法上の道路は「高速自動車国道」「一般国道」「都道府県道」「市町村道」などに分かれており、どの道路かによって申請の窓口が変わります。

  • 国道(指定区間内):国(国土交通省の地方整備局の担当窓口)
  • 国道(指定区間外)・都道府県道:都道府県の道路管理担当窓口
  • 市町村道:各市役所・町村役場の道路管理担当課

もし間違った窓口に相談に行くと、時間と労力が無駄になってしまいます。どの道路に該当するかは、法務局で取得できる公図を確認したり、市役所などの道路管理担当部署に直接問い合わせることで確認できます。まず、この第一歩を確実に行うことが重要です。

ステップ2:事前協議【申請前のもっとも重要な工程】

申請先が特定できたら、いきなり申請書を提出するのではなく、必ず「事前協議」を行います。これは、申請手続き全体の中でも、もっとも重要な工程と言っても過過言ではありません。

事前協議では、計画している工事の概要(どこに、どのような管を、どうやって設置するのか)を簡単な図面や現地の写真などを持参して、道路管理者の担当者に説明します。この段階で、技術的な基準を満たしているか、地域のルールに沿っているか、そもそも占用が認められる計画かどうか、といった点について確認と助言を受けます。

ここで担当者としっかり打ち合わせを行い、問題点や修正すべき点を洗い出しておくことで、その後の正式な申請が非常にスムーズに進みます。手戻りを防ぐためにも、この事前協議の時間を大切にしてください。

ステップ3:申請書類の作成と提出

事前協議で計画内容の合意が得られたら、いよいよ正式な申請書類の作成に取り掛かります。一般的に必要となる書類は以下の通りです。

  • 道路占用許可申請書
  • 位置図(付近の案内図)
  • 平面図(どこに埋設するかが分かる図面)
  • 断面図(道路を横から見た深さなどが分かる図面)
  • 構造図(使用する管の材質や寸法が分かる図面)
  • 現況写真

特に各種図面の作成には、専門的な知識が求められます。通常は、建築を依頼している工務店や設計事務所と協力して準備を進めることになります。申請書の様式は、多くの自治体のウェブサイトからダウンロードすることが可能です。

ステップ4:許可と占用料の納付

申請書類が正式に受理されると、道路管理者による審査が始まります。審査にかかる期間は自治体によって異なりますが、おおむね2週間から3週間程度が目安です。計画には余裕を持っておきましょう。

審査の結果、問題がなければ「道路占用許可書」が交付されます。また、後述する「道路占用料」が発生する場合には、納付書が送付されてきますので、指定された期限までに納付を済ませる必要があります。

ステップ5:工事の実施と完了報告

無事に許可が下りたら、いよいよ工事に着手できます。工事は、許可された内容や条件を遵守し、安全管理を徹底して行わなければなりません。

そして、工事がすべて完了したら、それで終わりではありません。道路管理者に「完了届」を提出し、工事前後の写真などを添えて報告する必要があります。担当者が現地の確認を行い、道路が適切に元通りになっていることが認められて、一連の手続きがすべて完了となります。

合併処理浄化槽の排水管を道路側溝に接続する工事の様子を描いたイラスト。作業員が安全に配慮しながら作業を進めている。

費用はいくら?道路占用許可のお金の話

手続きを進める上で、やはり気になるのは費用面でしょう。道路占用許可に関連するお金には、主に「道路占用料」があります。その仕組みについて見ていきましょう。

道路占用料の計算方法

道路占用料とは、公共の財産である道路を継続的に使用することに対する使用料のようなものです。この金額は、申請手数料とは異なり、許可後に年額で発生するのが一般的です。

占用料は、以下の要素を基に、各自治体が条例で定めた単価を乗じて計算されます。

  • 占用する物件の種類:今回は「排水管」
  • 大きさ:排水管の直径や長さ
  • 場所:道路の路線価など、土地の評価額が影響する場合がある

具体的な金額は自治体や場所によって大きく異なるため、一概に「いくらです」と示すことは難しいのが実情です。詳細な金額については、申請先の自治体の条例を確認するか、事前協議の際に担当者に直接質問するのが最も確実な方法です。

参照:八代市道路占用料に関する条例

占用料が減免(免除)されるケースとは?

ここで、ぜひ知っておいていただきたい重要な点があります。それは、合併処理浄化槽の排水管については、自治体によって、道路占用料が減額されたり、免除されたりすることがあります。ということです。

生活排水を適切に処理することは、公衆衛生の向上に繋がり、公益性が高いと判断されるためです。自治体によっては、占用料の減免申請書を提出することで、占用料が免除される規定を設けている場合があります。

ただし、これも自治体によって運用が異なります。自動的に免除されるわけではなく、申請が必要な場合がほとんどです。費用を抑えるためにも、占用許可を申請する際には、占用料の減免制度についても必ず窓口で確認するようにしましょう。

申請で難しい点は?知っておきたい3つの注意点

道路占用許可の申請は、書類を提出すれば必ず許可されるという簡単なものではありません。実務上、つまずきやすいポイントや事前に知っておくべき注意点が存在します。ここでは、特に重要な3つの点について解説します。

注意点1:そもそも許可が下りないケース

申請をしても、状況によっては許可が下りない、あるいは計画の変更を求められる場合があります。主なケースは以下の通りです。

  • 側溝の排水能力不足:接続先の側溝や水路が、新たな排水を受け入れるだけの余裕がない場合。
  • 下水道の整備計画:近い将来、その地域に公共下水道が整備される計画がある場合、一時的な施設と見なされ許可されないことがあります。
  • 技術的な基準の不適合:宅地内に最終桝を設置することや、逆流防止の措置など、自治体が定める技術的な基準を満たしていない場合。

特に、住宅ではなく事業用の建築物に設置した合併処理浄化槽からの排水については、より厳しい基準が適用されることがあります。実際に、県道や国道の側溝では、事業用建築物からの排水管接続のための道路占用許可申請が認められない場合も少なくありません。これらの点は、事前協議の段階で入念に確認することが不可欠です。

注意点2:水利権者など第三者の同意が必要な場合

見落としがちですが、非常に重要なのが第三者との利害調整です。接続しようとしている道路側溝が、実は農業用水路としての役割も兼ねていることがあります。

このような場合、道路管理者の許可だけでなく、その水路の水を利用する権利を持つ土地改良区などの「水利権者」からの同意が別途必要になるケースがあります。この同意が得られなければ、道路占用許可の手続きも進めることができません。

事前に放流先の側溝がどのような性質のものかを確認し、必要であれば関係者との調整を行う必要があります。こうした調整には時間がかかることもあるため、早めに確認に着手することが肝心です。より具体的な手順については、農業用水の情報を確認する手続きをご覧ください。

注意点3:工事における技術的な制約

申請が無事に通り、許可を得た後も、工事段階での注意点があります。

  • 勾配の確保:排水は自然の力で流れていくため、敷地から道路側溝に向かって、適切な傾斜(勾配)を確保する必要があります。土地の高低差によっては、これが難しい場合もあります。
  • 他の埋設物:道路の地下には、水道管、ガス管、通信ケーブルなど、様々なライフラインが既に埋まっています。これらを避けながら排水管のルートを計画しなければなりません。
  • 交通規制:道路を掘削する工事中は、片側交互通行などの交通規制が必要になります。そのため、先述した警察署への「道路使用許可」の申請が必須となり、安全対策にも万全を期す必要があります。

これらの計画と施工には高度な知識と技術が求められるため、経験豊富で信頼できる工事業者を選ぶことが、計画を成功させる上で極めて重要になります。

まとめ|複雑な手続きは相談も検討しよう

この記事では、合併処理浄化槽の処理水を道路側溝へ流すために必要な「道路占用許可」について、その全体像を解説しました。

最後に、重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • 合併処理浄化槽の排水には、法律に基づく「道路占用許可」が不可欠であること。
  • 申請をスムーズに進める鍵は、「事前協議」で担当者としっかり打ち合わせをすること。
  • 費用面では、占用料が減免される可能性があるため、必ず確認すること。
  • 許可が下りないケースや、第三者の同意が必要な場合など、事前に把握すべき注意点があること。

ご覧いただいたように、道路占用許可の申請には、専門的な図面の作成や関係各所との調整など、一般の方にとっては複雑で分かりにくい部分が少なくありません。もし、手続きに不安を感じたり、ご自身で進めるのが難しいと感じられたりした場合には、行政書士のような手続きの代理人に相談するという選択肢もあります。

大切な住まいづくりを安心して進めるためにも、こうした法的な手続きを正確に行うことが大切です。この記事が、皆様の計画の一助となれば幸いです。このテーマの全体像については、道路占用許可の全体像で体系的に解説しています。

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