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相続した農地、どうしたら…?そのお悩み、お察しします
「親が大切にしていた田んぼを相続したけれど、自分は農業をしないし、これからどう管理していけばいいのだろう…」「相続した土地が『農用地区域』という特別な場所だと聞いて、なんだか手続きがとても大変そうで不安…」
突然の相続で、このようなお悩みを抱えていらっしゃる方は、決して少なくありません。大切なご家族が遺してくれた土地だからこそ、無責任にはできない。でも、自分ではどうすることもできず、途方に暮れてしまうお気持ち、本当によく分かります。
特に「農用地区域」と聞くと、なんだか厳しい決まりごとが多くて、簡単に手放すこともできないのではないかと、対応の選択肢が分かりにくいと感じる方もいます。
でも、どうかご安心ください。この記事では、相続した農用地区域の農地について、相談先や手続きの進め方を分かりやすく整理します。この記事を読み終える頃には、「何をすれば良いのか分かった」と、次に何を確認すればよいかを整理できます。このテーマの全体像については、農地・森林の相続手続きで体系的に解説しています。
まず知ってほしい「農業委員会のあっせん制度」という選択肢
どうしていいか分からない…そんな時に、ぜひ知っていただきたいのが「農業委員会のあっせん制度」という仕組みです。「あっせん」と聞くと少し難しく聞こえるかもしれませんが、これは、農地の引受先を探す際に利用できる制度です。
簡単に言うと、「あなたの代わりに、市町村の農業委員会が、その農地で農業をしたい人を探してくれる」という公的な仕組みのこと。農業委員会が、農地の所有者と利用を希望する人との間に入って調整する仕組みです。
この制度を利用すると、自分だけで買い手や借り手を探す負担を減らせる場合があります。特に、農地を相続したけれど農業をする予定がない方にとって、とても頼りになる選択肢なのです。

あっせんの対象は「農用地区域」の農地が中心です
このあっせん制度は、農用地区域にある農地が主な対象です。
「農用地区域」とは、市町村の農業振興地域整備計画で、農業のために利用を確保していく区域として定められた場所です。だからこそ、農業委員会も「この大切な農地を、遊ばせておくのではなく、意欲のある次の担い手に引き継いでいきたい」と考えています。農用地区域の農地を相続し、自分で耕作する予定がない場合に、検討できる選択肢の一つです。
あっせんをお願いできるのはどんな人?
この制度を利用できるのは、基本的には農用地区域内にある農地の持ち主であれば、どなたでも申し出ることができます。
特に、あなたのように相続によって農地を受け継いだものの、ご自身で農業をすることが難しい方が、この制度の主な対象者となります。「自分もお願いできるんだ」と、まずは安心してください。特別な資格や難しい手続きが必要なわけではなく、あなたの「手放したい」という気持ちを伝えることからすべてが始まります。
あっせんへの第一歩は「相続の届出」から始まります
では、具体的にどうすれば、あっせんをお願いできるのでしょうか。ここが最も大切なポイントです。
実は、農地を相続した場合、まず市町村の農業委員会へ「農地を相続しました」というお知らせ(法律上の名前は「農地法第3条の3の規定による届出」といいます)を提出する義務があります。そして、その届出の書類の中に、「あっせんを希望しますか?」と尋ねる項目があるのです。
この「あっせんを希望する」という欄に印を付けること。この記入が、農業委員会に相談を始めるきっかけになります。この届出をきっかけに、農業委員会があなたの農地の情報をリストに加え、地域の担い手とのマッチングを始めてくれるのです。
【実務のポイント】
農地を相続した際に提出する「農地法第3条の3の規定による届出書」の中に、あっせんを希望するかどうかを記入する欄が設けられています。あっせんを希望する場合は、忘れずにその旨を記入しましょう。このあっせんの対象となるのは、原則として農用地区域内の農地に限られます。
届出はいつまでに?どこへ出せばいいの?
この大切な届出には、期限と提出先が決まっています。
- 提出期限:農地の権利を取得したことを知った時点から、10か月以内
- 提出先:その農地がある市町村の農業委員会
土地の名義変更(相続登記)は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内が原則です。ただし、令和6年4月1日より前に開始した相続については、令和9年3月31日までの経過措置があります。農業委員会への届出は、これとは別に期限があるため注意が必要です。届出書の用紙は、多くの市町村のウェブサイトからダウンロードできますので、一度確認してみてください。
「あっせん希望」に丸を付けるだけで相談が始まります
届出書の「あっせん希望」の欄に印を付けるだけで、農業委員会はあなたの農地の情報を、地域で農業を頑張っているプロの農家さんや、新しく農業を始めたいと考えている人たち(新規就農希望者)に情報提供を始めてくれます。
何か難しい申請書を一から書く必要はありません。まずは「手放すことを考えています」というあなたの意思を、公的な窓口に伝えることが何よりも大切なのです。この手続きにより、農業委員会へ相談しやすくなります。より具体的な手順については、農地法3条の3に基づく相続届出の手順をご覧ください。

知っておきたい、あっせん制度の流れと注意点
あっせんを希望した後は、どのような流れになるのでしょうか。良い点だけでなく、知っておくべき注意点も合わせてお伝えします。納得した上で制度を利用するために、ぜひ参考にしてください。
メリット:税金の優遇措置が受けられることも
この制度を利用する大きなメリットの一つに、税金の優遇措置があります。あっせん制度を通じて農用地区域内の農地を売却した場合、その売却で得た利益(譲渡所得)から、最大で800万円を差し引くことができる特別控除を受けられる可能性があります。
適用される場合は、税負担を抑えられる可能性があります。ただし、条件によっては適用されない場合もありますので、詳しくは税務署などで確認することをおすすめします。
注意点:相手を選べず、時間がかかる場合もあります
一方で、注意しておきたい点もいくつかあります。
まず、あっせんの相手(買い手や借り手)は、農業委員会が地域の農業の将来を考えて選びます。そのため、自分で相手を選ぶことはできません。また、地域で農地を探している人がすぐに見つかるとは限らず、マッチングまでに時間がかかってしまうケースもあります。
価格の交渉なども、当事者同士で直接行うのではなく、農業委員会が間に入って調整するのが一般的です。こうした現実的な側面も理解した上で、制度を利用することが大切です。相手方となる農地所有適格法人などの担い手が見つかるまでには、時間がかかることもあります。
もしあっせんで相手が見つからなかったら?他の方法も知っておこう
「もし、あっせんをお願いしても買い手が見つからなかったら、どうなるの?」
そんな不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。あっせん制度は万能ではありませんが、もしうまくいかなかったとしても、まだ他の選択肢があります。他の選択肢も確認しておくと、状況に応じて対応しやすくなります。

選択肢1:農地バンク(農地中間管理機構)に預ける
農業委員会のあっせんの他に、「農地バンク」という仕組みもあります。これは都道府県ごとにある公的な機関で、農業委員会よりも広いエリアで農地の担い手を探してくれます。農地を「預ける」という形で、担い手に貸し出すのが主な役割です。農業委員会のあっせんと並行して相談することもできますので、有力な選択肢の一つとして覚えておくと良いでしょう。こちらも公的な機関なので、安心して相談できます。近年、農地取得の要件が緩和されたこともあり、担い手が見つかる可能性も広がっています。中には農地付きの空き家を探している人もいます。
選択肢2:相続土地国庫帰属制度を利用する
どうしても引き取り手が見つからない場合の最終手段として、2023年から始まった「相続土地国庫帰属制度」というものがあります。これは、一定の条件を満たせば、お金を国に納めることで土地の所有権を国に移すことができる制度です。
ただし、農地の場合は管理費用として納めるお金が高額になることがあったり、隣の土地との境界がはっきりしていないと利用できなかったりと、条件はかなり厳しいのが現状です。他の方法で対応できない場合に検討する選択肢として位置付けるのが現実的です。
まとめ:一人で悩まず、まずは農業委員会へ相談の一歩を
相続した農用地区域の農地をどうするか。その悩みは、決してあなた一人だけのものではありません。そして、解決のための道筋は、ちゃんと用意されています。
この記事でお伝えしたかった最も大切なことは、その第一歩が「農業委員会への相続の届出と、あっせん希望の意思表示」であるということです。
一人で抱え込まず、まずは公的な相談窓口である農業委員会に、あなたの気持ちを伝えてみてください。相談することで、利用できる制度や必要な手続きを確認できます。農業委員会への相談を検討する際の参考にしてください。
もし、届出の手続きや書類の書き方に不安を感じたり、誰かにサポートしてほしいと感じたりした時は、いつでも私たちにご相談ください。手続きの確認や書類作成についてサポートいたします。
(参考)

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
