新規就農の農地法3条許可申請|流れ・計画書・注意点を解説

新規就農の夢へ!農地取得の第一歩「農地法第3条許可申請」とは?

「いつかは自分の手で野菜や果物を育ててみたい」「自然豊かな場所で農業を始めたい」そんな素敵な夢を抱いて、このページをご覧になっているのではないでしょうか。しかし、いざ新規就農に向けて準備を始めようとすると、「農地ってどうやって手に入れるの?」「法律の手続きがなんだか難しそう…」といった不安や疑問が次々と湧いてきて、一歩を踏み出すのをためらってしまう方も少なくないと思います。

大丈夫ですよ。どんなに大きな夢も、最初の一歩から始まります。複雑に思える手続きも、一つひとつ順番に理解していけば、必ず道は開けます。

まず、大前提として知っておいていただきたい大切なルールがあります。それは、田んぼや畑といった「農地」を、お金を払って買ったり借りたりする際には、農地の所在する市町村の農業委員会から許可を受ける必要がある、ということです。これが「農地法第3条の許可」と呼ばれるものです。なぜこのような許可が必要かというと、大切な食料を生み出す農地が、農業以外の目的で使われたり、きちんと管理されずに荒れてしまったりするのを防ぐためなのです。

この記事では、新規就農を目指すあなたが農地を手に入れるために避けては通れない「農地法第3条許可申請」について、その流れや重要なポイント、そしてつまずきやすい注意点を、できるだけ分かりやすく解説していきます。この記事を最後まで読めば、手続きの全体像がしっかりと掴め、安心して次の一歩を踏み出せるはずです。一緒に夢への扉を開きましょう。

新規就農における農地法3条許可申請の全体像と流れ

では早速、農地法3条許可申請がどのような流れで進んでいくのか、全体像を見ていきましょう。大きく分けると、以下の4つのステップになります。この流れを頭に入れておくだけで、今自分がどの段階にいるのかが分かり、落ち着いて準備を進めることができます。

  1. ステップ1:農地探しと所有者との話し合い
  2. ステップ2:市町村の農業委員会へ事前相談
  3. ステップ3:必要書類の準備と申請書の提出

一つずつ、具体的に見ていきましょう。

ステップ1:農地探しと所有者との話し合い

何よりもまず、農業を始めるための土地を見つけなければなりません。農地を探す方法はいくつかあります。

  • 全国農地ナビ(農地バンク)を利用する
  • 市町村の農業委員会や農政担当課に相談する
  • 地域のJA(農協)に相談する
  • 地域の不動産業者に問い合わせる

希望に合う農地が見つかったら、次は土地の所有者の方との話し合いです。売買なのか賃貸借なのか、価格や賃料はいくらにするのか、いつから利用するのかなど、大切な条件をしっかりと話し合って合意を形成することが重要です。この段階での丁寧なコミュニケーションが、後のトラブルを防ぐ第一歩となります。

ステップ2:市町村の農業委員会へ事前相談

土地の所有者の方と大筋で合意ができたら、申請書を提出する前に、必ず市町村の農業委員会へ「事前相談」に行きましょう。これは手続きをスムーズに進める上で、非常に重要なステップです。

事前相談では、以下のようなメリットがあります。

  • 申請に必要な書類を具体的に教えてもらえる
  • その地域ならではのルールや注意点を確認できる
  • 作成する「農業経営計画書」についてアドバイスがもらえる
  • 新規就農者としての顔と名前を覚えてもらい、熱意を伝えられる

「こんな計画で農業を始めたいのですが、手続きはどう進めたらいいですか?」と、前向きな姿勢で相談することが大切です。希望する農地の情報や、おおまかな営農計画をメモにまとめて持参すると、話がスムーズに進みます。

ステップ3:必要書類の準備と申請書の提出

事前相談で確認した内容に基づき、いよいよ必要書類を準備します。一般的に必要となるのは、以下のような書類です。

  • 農地法第3条許可申請書
  • 農業経営計画書(営農計画書)
  • 土地の登記事項証明書(法務局で取得)
  • 場所がわかる地図(公図や住宅地図など)
  • 住民票
  • その他、農業委員会が求める書類

特に、新規就農者にとって最も重要になるのが「農業経営計画書(営農計画書)」です。この書類の出来栄えが、許可を左右すると言っても過言ではありません。詳しい作成のポイントは、次の章でじっくり解説します。

書類がすべて揃ったら、農業委員会の窓口に提出します。農業委員会には毎月の申請締切日が設けられていますので、事前に確認し、余裕を持って提出するように心がけましょう。

許可の鍵を握る!農業経営計画書の作成ポイント

新規就農者の申請において、審査の核となるのが「農業経営計画書」です。この書類の作成に、一番時間と労力をかけるべきだと言えるでしょう。ここでは、なぜこの書類が重要なのか、そして、説得力のある計画書を作成するためのポイントを解説します。

木製の机の上で農業経営計画書を丁寧に作成している様子。電卓とペンが置かれ、計画の具体性を示している。

なぜ農業経営計画書が重要なのか?

農業委員会が知りたいのは、「この人に農地を任せて、本当に農業で生計を立て、土地をきちんと管理していけるのだろうか?」という点です。農業経営計画書は、その疑問に答えるための、いわば「あなたの夢と覚悟を伝えるプレゼンテーション資料」です。

単に「頑張ります!」という気持ちだけでは、許可は得られません。あなたの農業に対する本気度、計画の具体性、そして事業としての継続性を、客観的な言葉と数字で示す必要があります。審査員である農業委員の方々に「この人なら、地域の大切な農地を安心して任せられる」と信頼してもらうための、最も大切な書類なのです。

計画書作成で押さえるべき3つのポイント

では、どうすれば説得力のある計画書が作れるのでしょうか。以下の3つのポイントを意識してみてください。

  1. 具体的で現実的な数字を示すこと
    「何を」「どれくらいの面積で」作り、「どのくらいの収穫量」が見込め、「どこへ」「いくらで」販売するのか。そして、そのために必要な種苗代や肥料代、農機具などの「経費はいくらかかる」のか。どんぶり勘定ではなく、地域のJAや農業指導センターなどで情報を集め、できるだけ現実的な数字を積み上げて収支計画を作成しましょう。
  2. 栽培技術や経験をアピールすること
    農業経験が全くない場合、具体的な営農計画や研修計画の提示がないと許可が難しくなることがあります。「農業大学校で2年間学んだ」「先進農家のもとで1年間研修を受けた」といった経験があれば、それは大きなアピールポイントになります。もし経験が浅い場合でも、今後どのように技術を習得していくのか(研修への参加計画など)を具体的に示すことで、熱意を伝えることができます。
  3. 将来のビジョンを明確にすること
    ただ作物を作って売るだけでなく、将来的には「6次産業化に取り組みたい」「地域の子供たちに農業体験の場を提供したい」といった、将来の夢や地域貢献への想いを描くことも大切です。あなたの農業が、地域にとってプラスになる存在であることを伝えましょう。

【失敗事例から学ぶ】新規就農で許可が下りない3つのケースと注意点

ここでは、残念ながら許可が下りなかったケースを基に、新規就農を目指す方が陥りがちな失敗と、その対策について学びましょう。他の方の失敗から学ぶことで、あなたの申請がより確実なものになります。

雑草が伸びた手入れされていない農地と曇り空。新規就農の失敗や困難を暗示するイメージ。

ケース1:「農業経営計画書」の内容が具体的でなかった

「多品目の野菜を少しずつ作って、直売所で販売したい」という計画を提出したAさん。一見すると良さそうですが、それぞれの野菜の作付面積や予想収量、販売価格の見込みが曖昧で、年間の収支計画も大雑把なものでした。農業委員会からは「その計画では、本当に生活していけるのですか?」と計画の実現性を疑問視され、結果として不許可になってしまいました。

【対策】
「なんとなく」ではなく、数字の裏付けを取りましょう。地域の気候や土壌に合った作物は何か、その作物の平均的な収量や市場価格はどのくらいか、事前にしっかりとリサーチすることが不可欠です。地域の農業指導センターやJAは、そうした情報の宝庫です。専門家のアドバイスを受けながら、地に足の着いた計画を立てることが成功への近道です。

ケース2:農地を適切に管理できると思われなかった

広い農地を借りて大規模な農業を始めようとしたBさん。しかし、所有しているのは家庭菜園で使うような小型の耕運機のみで、労働力も自分一人だけでした。農業委員会からは「その面積を、その機械と労働力で本当に管理しきれるのですか?」と指摘され、農地を効率的に利用できないと判断され不許可に。

【対策】
身の丈に合った計画を立てることが重要です。取得したい農地の面積に対して、自分の労働力や所有している(または導入予定の)農業機械が見合っているか、客観的に判断しましょう。もし労働力が不足しているなら、家族の協力体制を具体的に示したり、地域のシルバー人材センターの活用を検討したりするなど、具体的な対策を計画書に盛り込む必要があります。

ケース3:地域とのコミュニケーションを軽視していた

都市部から移住し、念願の農地を見つけたCさん。しかし、手続きを急ぐあまり、地域の慣習やルールをよく確認していませんでした。特に、農業用水の管理や農道の草刈りといった、地域の共同作業についての理解が不足していたため、周囲の農家さんから「あの人に任せて大丈夫だろうか」という不安の声が上がってしまいました。結果、地域からの同意が得られず、申請は通りませんでした。

【対策】
農業は、一人だけで完結する仕事ではありません。水路や農道など、地域で共同管理しているものがたくさんあります。事前相談の段階から、農業委員の方はもちろん、可能であれば近隣の農家さんにも挨拶をし、「この地域の一員として、皆さんと協力しながら農業をやっていきたい」という姿勢を積極的に示すことが非常に大切です。地域の会合などに顔を出すのも良いでしょう。

よくある質問(FAQ)

最後に、新規就農を目指す方からよく寄せられる質問にお答えします。

Q1. 農業経験が全くなくても農地は取得できますか?

A. 可能性はゼロではありませんが、非常に難しいのが現実です。農業は天候に左右されるなど、知識と経験が求められる仕事だからです。全くの未経験者の場合は、まず農業大学校や先進的な農家さんのもとで研修を受けるなどして、基本的な栽培技術や経営ノウハウを学ぶ計画を立て、その計画を「農業経営計画書」で具体的に示すことが許可の前提条件になるとお考えください。

Q2. 農地取得の下限面積要件がなくなったと聞きましたが…?

A. はい、その通りです。2023年4月1日に農地法が改正され、これまで新規就農の大きな壁となっていた下限面積要件(例えば「50アール(5反)以上の農地がないと許可しない」といったルール)が廃止されました。これにより、小規模な面積からでも農業を始めやすくなったのは大きなメリットです。ただし、面積要件がなくなったからといって、誰でも簡単に許可が下りるわけではありません。たとえ小さな農地であっても、その土地を最大限に活用し、継続的に農業を営むためのしっかりとした計画が求められることに変わりはありません。

参考:地域計画(地域農業経営基盤強化促進計画)

Q3. 申請してから許可が下りるまで、どのくらいの期間がかかりますか?

A. 自治体により異なりますが、通常は申請後1か月〜数か月かかることがあります。各市町村の農業委員会の審査スケジュールを事前に確認してください。これは書類に不備がなく、スムーズに審査が進んだ場合の目安です。計画の内容について追加で質問されたり、現地調査が必要になったりすると、さらに時間がかかることもあります。就農したい時期から逆算して、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。

新規就農の手続きに不安なら専門家への相談も一つの方法です

ここまで、新規就農のための農地法第3条許可申請について解説してきましたが、「やっぱり自分一人で全部やるのは大変そう…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。特に、農業経営計画書の作成は、多くの方が頭を悩ませるポイントです。

当事務所のサポート事例

新規就農を目指すご相談者様の多くは、熱意や夢はお持ちですが、それを「計画書」という形にする段階でつまずいてしまいます。「何を書けばいいのか」「どんな数字を入れればいいのか」という漠然とした不安を抱えていらっしゃいました。

当事務所では、まずご相談者様の「どんな農業をしたいのか」という想いをじっくりとお伺いすることから始めます。そして、その夢を実現可能な計画に落とし込むため、一緒に考え、具体的な数字を組み立てていきます。申請書や農業経営計画書の作成支援、提出書類の確認や当該手続きに関する助言を行います。必要に応じて審査会への同席を相談のうえ対応します。ただし許可の可否を保証するものではありません。

煩雑な手続きは専門家に任せ、ご自身は栽培技術の習得や農地での準備に集中したいという方も、ぜひ一度ご相談ください。

手続き面での支援を行います。まずはご相談ください。どんな些細なことでも構いません。もし手続きに不安を感じたら、一人で抱え込まずに、どうぞお気軽にお声がけください。

ご相談はお問い合わせはこちらからお待ちしております。

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