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農地の賃借料はどう決まる?3つの基本パターン
これから農業を始めよう、あるいはもっと規模を大きくしようと考えたとき、多くの方が気になるのが「農地の賃借料」ではないでしょうか。「いったい誰が、どのようにして金額を決めているのだろう」と、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
農地の賃借料の決まり方には、主に3つのパターンがあります。まずは全体像を掴んでみましょう。
- 貸す人と借りる人の話し合いで決める
最も基本となるのが、農地の所有者(貸主)と、これから借りる人(借主)が直接話し合って賃借料を決める方法です。お互いが納得できる金額であれば、それが契約の基本となります。 - 地域の情報を参考にする
「話し合いと言われても、いくらが妥当なのか分からない」という場合がほとんどでしょう。その際に大きな助けとなるのが、市町村の農業委員会が公表している「賃借料情報」です。これは、その地域で実際に契約された賃借料の平均額などを示したデータで、話し合いを進める上での大切な目安になります。 - 農地バンクを介して決める
「公的な貸し借りの窓口」という公的な機関を通じて農地を貸し借りする方法もあります。農地バンクが貸主と借主の間に入り、賃借料の調整などを行ってくれるため、個人間で直接やり取りするのが不安な場合に活用されます。
このように、基本は当事者間の合意ですが、客観的なデータや公的な機関を参考にしながら、適正な賃借料を決めていくのが一般的です。農地を借りる手続きでは、通作経路の計画なども含め、様々な準備が必要になります。

賃借料の相場を知るには?公的情報の調べ方と見方
当事者間で話し合うにしても、基準となる相場を知らなければ、提示された金額が高いのか安いのか判断できません。そこで重要になるのが、農業委員会が公表している客観的なデータです。ここでは、その情報の探し方と見方を2つのステップで解説します。
ステップ1:市区町村のウェブサイトで「賃借料情報」を探す
まずは、あなたが農地を借りたいと考えている市区町村のウェブサイトにアクセスしてみましょう。多くの場合、以下の方法で見つけることができます。
- 検索エンジンで探す: 「〇〇市 農地 賃借料情報」や「△△町 農業委員会 賃借料」といったキーワードで検索するのが最も手軽です。
- ウェブサイト内を探す: 市区町村の公式サイトのトップページから、「産業・しごと」「農業」といったカテゴリーをたどっていくと、「農業委員会」のページが見つかります。その中に「賃借料情報」や「農地の賃料」といった項目で情報が公開されています。
情報はPDFファイルで公開されていることが多いため、見つけたらダウンロードして内容を確認しましょう。
ステップ2:公表データから自分の条件に近い賃借料を読み解く
公表されているデータには、様々な情報が記載されています。例えば、以下のような項目です。
- 田・畑の区分: 田んぼなのか、畑なのかによって賃借料は異なります。
- 10アールあたりの年額: 賃借料は「10アール(1,000平方メートル)あたり、1年間でいくら」という単位で表示されるのが一般的です。
- 平均額・最高額・最低額: その年に契約された賃借料の平均、最も高かった金額、最も安かった金額が分かります。
- 地域ごとの情報: 同じ市内でも、地区によって金額が異なる場合があります。
これらの情報の中から、あなたが借りたい農地の条件(例:〇〇地区の畑)に最も近いものを見つけ、平均額を参考にします。そうすることで、「このあたりなら、10アールあたり年間〇円くらいが目安だな」と、おおよその相場を把握することができます。
ただし、このデータはあくまで平均的な数値です。実際の賃借料は、日当たりや水の便、土地の形、農道の状況といった個別の条件によって変動します。公表データは有力な参考情報ですが、最終的にはその農地の状態をよく確認し、貸主と話し合って決めることが大切です。また、契約前には農地台帳でその土地の正確な情報を確認しておくことも忘れないようにしましょう。
より広い範囲での統計情報については、農林水産省が公表している調査結果も参考になります。
契約前に必ず確認!賃貸借契約書7つのチェックポイント
賃借料の金額に合意したら、次はいよいよ契約です。ここで交わす「賃貸借契約書」は、後々のトラブルを防ぐための非常に重要な書類です。内容をよく理解しないまま署名・捺印してしまうと、思わぬ不利益を被る可能性があります。ここでは、契約前に最低限確認しておきたい7つのポイントを解説します。

1. 契約期間:何年借りられるのか
まず確認したいのが契約期間です。作物を育てるには時間がかかりますし、設備に投資することもあるでしょう。契約期間が短すぎると、ようやく軌道に乗ってきた頃に土地を返さなければならない、ということにもなりかねません。安心して農業を続けるためにも、ご自身の計画に合った期間が設定されているか、また、契約を更新する場合のルールはどうなっているのかをしっかり確認しましょう。
2. 賃借料の額と支払方法:いつ、どうやって支払うのか
賃借料の金額はもちろんですが、「いつまでに(支払時期)」「どのようにして(支払方法)」支払うのかを明確にしておくことが重要です。例えば、「毎年〇月末日までに、指定の銀行口座へ振り込む」といった具体的な記載があるかを確認します。支払いが遅れた場合の取り決めなども含め、お金に関する内容は曖昧な点を残さないようにしましょう。
3. 修繕費用の負担:誰がどこまで直すのか
農地を使っていると、水路が壊れたり、農道が傷んだりすることがあります。台風などの自然災害で被害を受けることもあるかもしれません。そういった場合に、修繕にかかる費用を貸主と借主のどちらが負担するのか、契約書で定めておく必要があります。予期せぬ出費で困ることのないよう、責任の範囲をはっきりさせておきましょう。
4. 解約に関する条件:途中でやめることはできるのか
やむを得ない事情で、契約期間の途中で農業を続けられなくなる可能性もゼロではありません。そのような場合に、契約を解約するための条件を確認しておくことも大切です。例えば、「解約を申し出る場合は、〇ヶ月前までに相手方に通知する」といったルールや、違約金の有無などを事前に把握しておくことで、万が一の事態にも落ち着いて対応できます。
5. 契約終了時の原状回復義務:どこまで元に戻すのか
契約期間が満了し、農地を貸主に返すとき、どのような状態にして返すべきかというルールです。これを「元に戻して返す約束」と考えると分かりやすいです。例えば、自分で建てたビニールハウスや倉庫などを撤去する必要があるのか、その費用は誰が持つのか、といった点を契約書で確認しておきましょう。返却時のトラブルを避けるための重要なポイントです。
6. 土地の利用目的:何を作ってもよいのか
借りた農地で、どのような作物を栽培するのか、あるいはどのような利用が認められているのかを確認します。契約によっては、特定の作物の栽培が制限されていたり、農業用施設以外の建物を建てることが禁じられていたりする場合があります。ご自身の営農計画と契約内容が合っているか、事前にしっかりチェックしましょう。
7. 又貸し(転貸)の禁止:他の人に貸してはいけない
借りた農地を、許可なく別の人に貸すこと(又貸しや転貸といいます)は、原則として禁止されています。契約書にもその旨が明記されているのが一般的です。これは、責任の所在が曖昧になるのを防ぐための大切なルールです。契約した人自身が責任をもって農地を管理・耕作する必要があります。安易な又貸しは契約違反となり、大きな問題に発展する可能性があるため注意が必要です。農地の権利関係は、農地転用などのルールとも密接に関わっています。
知っておきたい農地賃借の基礎知識
最後に、農地の貸し借りに関連して、知っておくと役立つ基礎知識をQ&A形式でご紹介します。
Q. 令和7年からの法改正で何が変わるの?
A. 農地の貸し借りのルールが大きく変わる予定です。
これまで、農地の貸し借りは当事者間の話し合いによる契約(貸す人と借りる人が直接決めるやり方)が多く行われてきました。しかし、2025年(令和7年)4月からは、これまで多く使われてきた仕組み(市町村が関わる形での直接の貸し借り)が原則として使えなくなり、農地の貸し借りは「公的な貸し借りの窓口を通す方法」または「農業委員会の許可を受けて進める方法」が中心になります。これは、意欲のある担い手に農地を効率的に集めて、日本の農業をより強くするための変更です。今後は、農地バンクの仕組みを理解しておくことが、農地の貸し借りの基本となります。この法改正により、新規就農のハードルとなっていた下限面積要件の廃止など、他の制度にも影響が出ています。
Q. 支払った賃借料は経費になる?確定申告のポイント
A. はい、農業経営の経費として計上できます。
農地を借りて農業を営む場合、支払った賃借料は「地代」として経費にすることができます。経費としてきちんと計上することで、年間の利益(所得)がその分少なくなり、結果として所得税の負担を軽くすることにつながります。年に一度の確定申告の際には、忘れずに計上しましょう。一方で、農地を貸している側は、受け取った賃借料が「不動産所得」となり、こちらも申告が必要になります。農業を法人として行う農地所有適格法人の場合も、会計処理は重要です。
まとめ
農地の賃借料は、基本的には貸す人と借りる人の話し合いによって決まります。その際、地域の農業委員会が公表している「賃借料情報」が、お互いが納得できる金額を探るための重要な手がかりとなります。
そして何より大切なのは、合意した内容をきちんと「賃貸借契約書」という形で書面に残し、その内容を隅々まで確認することです。契約期間や修繕費用の負担、解約の条件など、事前に確認しておくべき点は多岐にわたります。少し面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が、後々の「言った、言わない」といったトラブルを防ぎ、安心して農業に打ち込むための土台となります。
この記事でお伝えしたポイントが、あなたが納得のいく形で農地を借り、夢を実現するための一助となれば幸いです。もし手続きで分からないことや、契約内容に不安な点があれば、一人で抱え込まず、信頼できる窓口に相談することも検討してみてください。

栃木県佐野市で生まれ育ち、海事代理士・行政書士として活動しています。船舶、農地、墓じまいなどの手続きでお困りの際は、お気軽にご相談ください。地域の皆様と共に最善の解決策を考え、誠実に対応いたします。どんな小さなことでも親身に寄り添いますので、どうぞお気軽にご相談ください。
