農地付き空き家にて農地を取得する場合の手続きについて 『農地の要件・各論』

前回は農地付き空き家『農地の要件・総論』に関する記事を投稿いたしました。今回は『農地の要件・各論』を掲載いたします。各論の項目は詳細に規定されておりますが、今回は特に重要となる項目につきまして投稿いたします。

①市街化区域内の農地は本制度の対象になりません

市街化区域内にあります空き家を空き家バンクに登録することはもちろん可能になりますが、空き家バンクに登録された市街化区域内の空き家に付属した農地を農地のまま取得することはできません。

市街化区域内の農地は市街化調整区域や都市計画区域外に存在する農地とは異なり、許可申請ではなく届出書を提出することにより転用可能であるため、本制度の対象外となります。

届出書を提出することにより農地台帳から外れるため固定資産税は宅地並み課税がなされますが、そのまま農地として利用し耕作を行うことも可能になります。

農地台帳から外さず農地のまま取得したい場合には、新規就農による農地法第3条許可を受ける必要がございます。そのため取得下限面積が原則50アール以上(一部地域は30アール以上)に加えまして、所定の農作業経験又は修学歴を満たさなければなりません。

②賃借権、地上権などが設定された農地は本制度の対象になりません

空き家に付属した農地を取得するには空き家取得者が耕作をするのが望ましいと判断されたときのみに許可要件を満たしますので、賃借権や地上権、使用貸借権、永小作権など第三者が利用する権利を有している農地は対象になりません。

第三者が耕作のための権利を設定している場合、農業委員会事務局にあらかじめ合意解約に関する通知書と解約書を提出する必要がございます。

賃借権、地上権などの権利も相続の対象になりますので権利の設定を受けて借り受けた者がすでに亡くなっており遺言書にて権利を相続するものの指定がなされていない場合、相続人代表者のみの同意だけでは足りず相続人全員の同意が必要になるため注意が必要になります。

空き家に付属した農地取得後所定の期間(5年間)は空き家取得者が自ら耕作を行う旨の誓約書を提出する必要がございますので、権利の設定を受けていた者が再度権利を設定し耕作を続けることはできませんので、解約手続きを行う際に十分説明をする必要もございます。

③非農地証明・非農地認定が可能及び相当な農地は本制度の対象になりません

農地を農地のまま取得するには農作業経験や修学歴、下限面積を満たす必要がございますが、農地以外の地目におきましては特段制限無く取得することが可能になります。

市街化調整区域や都市計画区域外に存在する農地の転用許可を受けられる土地であれば農作業経験を問われることなく取得することができますが、大半の土地は許可要件を満たさないため転用できない農地となり、譲り受ける者が現れず、不耕作地が増え続けております。

空き家に付属する農地が耕作されていないだけでなく、空き家敷地と一体となって宅地利用されている場合には一定の要件を満たしているときに限り、非農地証明願を受けることにより地目変更登記を行うことが可能になります。

宅地として一定期間(20年以上)利用されている農地を農地に復元せず、このまま使用を続けていく方が妥当であるとの判断がなされた場合には非農地証明願を受けられることの教示がなされます。

非農地証明願は行政上のサービス行為としての取り扱いになりますので、取り扱いの無い市町村もございますので注意が必要です。

また一定期間宅地として利用されていた場合でも、その農地が賃借権などの権利が設定されている農地であった場合は非農地証明願の対象にはなりません。無断で転用されている部分を農地に復元するか、転用許可を受ける必要がございます。

空き家に付属する農地が空き家とともに譲渡可能な農地か否か判断は大変難しいものがございます。判断に悩まれましたら弊事務所にお気軽にお問い合わせください。

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